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アーマード・オウガ  作者: ハル
参:エターナル
62/65

二十八

拙作をご覧になっている皆様、いつもありがとうございます。作者でございます。

この度、投稿済みの文章をチェックしていました所、重要な局面を投稿していないことに気付きました。

今回投稿致しましたこの『二十八』が該当箇所となりますので、どうかお手数ですが、読んでいただけますと幸いでございます。

黒い鬼が、同じ姿の鬼から受けた一撃でその体をゆっくりと傾ぐ。

自分はきっと、地面へと倒れ行く彼の名を何度も叫んだのだろう。

その時の事を後から思い出そうとしても、ハッキリとは思い出せない。

京一郎の怒りはそれ程のものであった。

鳴海の纏う鎧は、黒真珠のような輝きを失い闇色に染まると、彼自身の影へと溶けていった。装着者が意識を失った事で自動的に鎧が解除されたのだ。

「案ずるな。私が鳴海を手にかける事などあり得無い。気を失っただけだ」

倒れ行く鳴海の向こう、伊奈美が静かに言い放つ。

鳴海に駆け寄っていた京一郎だったが、その足は方向を変え彼女へと向かう。

そして業火纏う紅玉の剣を、振り下ろす!

ーーギンッ!

重く響く金属音が辺りに谺する。

自身でも予測した通り、鎧鬼の装甲は神剣と言えども、その刃を簡単には受け入れはしなかった。

それでも、何か一撃でも見舞わねば気が済まなかった。

「案ずるな、じゃねぇんだよッ! テメェはどれだけ鳴海を傷付ける気だッ!!?」

伊奈美は叩きつけられた刃を払うと、飛び退り距離を取る。

と、着地の隙を狙い小華の符術による炎が彼女へとうねる。

「ちッ!」

今度は回避をせず、独特の噴出音を響かせ『断空』で相殺する。

「……全ては鳴海の為。それしか言えない」

立ち上がり、独り言のように呟く。鎧の内から、くぐもったような、しかしやけに響く声が聞こえる。

「それだけ言えれば充分じゃ。貴様はここで終わりじゃからの」

彼女の言を遮るように、安倍が口を開く。普段の彼女からは想像もつか無いほど冷たく、酷薄な声音。

伊奈美が僅かに首巡らす。

「確かに、これだけの面子。正面切って闘えば私は間違いなく破れるだろうな」

だが。と、言葉を切ると突然背中を向け、駆け出す。向かうは既にボロボロになってしまっている、組長宅。

逃走。それが彼女の選択。

そもそも彼女の目的は0課との戦闘ではない。不利と悟れば逃げの一手に徹するのが上策と言えよう。

「逃がすかよッ!」

彼女の意図に気付いた京一郎が真っ先に飛び出した。しかし彼の背にかけられるのは、静止の声。

「いかん! 追うな!」

「なッ!?」

安倍の声に反射的にブレーキを掛ける。

と。


ーーーー!!

ーーーー!!!

ーーーー!!!!


瞬間、頭が真っ白になりそうな程の轟音が屋敷の壁を、柱を、吹き飛ばした。

目に写ったのは四方へ伸びる青紫色の蔓。

(ーーッ!? 雷電か!?)

その凄まじいまでの破壊の力。京一郎には見覚えがあった。

以前鳴海が使った強力な稲妻の技、『雷電』。

しかし、彼が見たものよりも数段、威力が高いように思えた。

一階部分を失った屋敷が土埃を上げ、崩壊する。安倍の静止が無ければ、今頃瓦礫と一緒にぺちゃんこになっていただろう。その未来を想像し、背筋に冷たいものを感じる。

逃げるだけならわざわざ閉鎖空間に向かう理由は無い。自分は鎧があるから平気だとばかりに、追ってきた者を屋敷諸共潰してしまおうとした訳だ。

もしかしたら自分に繋がる証拠の抹消も含んでいるのかもしれない。

彼女は鳴海と違い、鎧鬼の技を多用していた。恐らく『雷電』による行動不能も期待できないだろう。

「京一郎、無事かえ?」

立ち込める土煙が晴れる頃、背後から安倍が近づいて来た。その向こうには鳴海を介抱している瑞樹と小華の姿も見える。

「ばーさん。助かったぜ」

「貸し一、じゃぞ。……しかし」

と、言ったところで瓦礫を見上げる。

「……あぁ」

京一郎の視線も同じ場所を見る。

それ以上は言わずとも分かる。

故に、言葉にはしたく無い、させたく無い。


これは。


0課の敗北だ。

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