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アーマード・オウガ  作者: ハル
参:エターナル
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二十三

「そういえば、よう。気になってはいたが、嬢ちゃんの符術(ふじゅつ)は一体どういう理屈で成立してたんだ? 俺の知ってるものとはえらく雰囲気が違ってたが」

 0課の所有する指揮車両で移動中、ふと京一郎(きょういちろう)が口にする。

 視線の先にはショートパンツにパーカーというラフな格好に、サイドテールがツインテールとなった佐藤瑞希(みずき)、若き退魔士の姿。

「そういえば、説明がまだだったよね。俺も気になってた」

 と、鳴海(なるみ)もその意見に追従(ついじゅう)する。

「瑞希さん、説明を」

 更に、彼ら三人が座るシートの前の席より、小華(こはな)の声も加わる。

「あぁ、でも秘伝とかそう言うのだったら言わなくてもいいぜ。普通の符術とは成立の仕方が全然違ったもんな」

「ううん。そういうのじゃないよ。要は考え方次第だよ」

 そう言って瑞希が取り出したのは彼女が使っていた杖である。

「まさかそれが霊装(れいそう)ってオチ?」

 と口を挟む鳴海に彼女はフルフルと首を振る。振るたび左右に座る京一郎と鳴海にツインテールがべちべちと当たるが、気にしない。

「これはあくまでタダの飾りなの。ここの所、見て」

 彼女が指差すのは先端の星の飾り、その根元の所、杖と星を繋ぐ部分である。そこには妙に機械的な、凹凸のある金属の筒のようなものがある。

「それって、回転式拳銃(リボルバー)弾倉(だんそう)?」

 銃器に対して関心を持つ鳴海は彼女の意味する所にすぐに気付く。そう、彼女が指差した円筒形の部分は正に回転式拳銃の弾倉、つまり銃弾を込めるパーツであった。

 しかし、それが何だというのか。

 拳銃とはつまり、銃弾を発射する装置である。弾倉に込めた銃弾を撃鉄が叩くことによって火薬が炸裂し、そのエネルギーを銃弾を飛ばす推力とする、その為だけの装置である。故に弾倉一つ用意したところで無意味のはずだが。

「あ、これって弾倉って言うんだ」

「え? 知らずにソレを?」

「まぁ、これがピストルの部品って位は知ってるけどね。私が欲しかったのはピストルの部品じゃなくて……」

 そこで彼女は弾倉を(いじ)りだす。と、弾倉が振り出されるように横にスライドする。スイングアウトと呼ばれる、回転式拳銃ではメジャーな銃弾の装填機構である。飛び出した弾倉に指を突っ込み、取り出したものは正に銃弾のようなもの。

 一瞬、ギョッとする鳴海達だったが、すぐに気付く。

「コイツは……」

「ただの金属の筒?」

 訝しげな視線を受け、彼女は得意満面(とくいまんめん)といった表情をする。

「そんな訳ないでしょ? ま~ったくぅ。しょうがないなぁ!」

「「……」」

 半眼となった二人の視線をものともせず、彼女が更に金属の筒を弄る。“キュリキュリ”と音を立て(ねじ)り込むこと数回、筒が二つに離れた。そして、そこからこぼれる筒状に丸められた紙。

 開いてみればそれは正に符そのものである。

「つまりね、符を丸めて杖に仕込んでおいた、という訳なの。要は私が魂の力を込められるのなら符の形状はどうでもいいの」

 それから、と彼女は続ける。

「あの服の方は霊装に近いものかな。霊装の材料ってそれ自体が凄い力を持ってるでしょ? それで神話とかの武器を作れば強力な武器になるけど、普通に服とか靴とか作ってみたら、先生たちの使ってるものほど強力じゃないけど、とっても便利なアイテムになったって訳なの」



 霊装の作成に必要なものは、人々からの思念や想いと言った概念、そして神代(かみよ)の武具をレプリカとして再現するのに必要な『素材』である。著名なところでは“ヒヒイロカネ”などがそうである。

 霊装を生み出す際に概念を固定する儀式等を行うが、素材の段階でも同じ事を行う。要は二度手間が必要なのである。適切なものを創る為には適切な道具を用いねばならないものである。

 そうして作り出された、素材には相応の力が宿っている。無論それそのものが妖に対する武器として使えるわけではないが、例えば『天女の羽衣』を織るのに必要な『絹糸』を以って服を作れば、どんな絹にも負けない(つや)やかな服が仕上がると言うわけだ。

 これを利用して創った彼女の魔法少女服は普通のコスプレ用の服とは訳が違う。



「鳴海が学校を出てから、随分遅れて出た割には現場に着くのが早いと思ったが、あの服が持ってる力だったって訳か。推測するに、重力の軽減とかそんな所か」

「しかし、霊装の素材でそんなものを創るとはね……」

 フフン、と再び得意げな顔をする瑞希。そこへ小華が再び口を開く。

「凝り固まった老いぼれの頭では思いつかないことです。こうして力や想いは世代を超えて受け継がれ、より強い力へと(つむ)がれてゆくのですね。これこそが人が持つ本当の力、本当の強さ」

「おばーちゃん……」

 瑞希は照れた様に笑い、くすぐったそうに(うつむ)いた。

「んむ。こうして若い世代が育っておると、ワシらも安心して老いてゆけるモノじゃ。何やら感慨(かんがい)深いのう」

 と、しみじみとしたことを語りだした最年長組二人。それはさて置き、今度は鳴海からの質問だ。

「それじゃ、最初に出会った時に“コハナ”を名乗った理由ってなんだったの? 佐藤さん、名前は瑞希っていったよね」

「あ、私のことは瑞希でいーよ。えっとね、単に正体を隠したかっただけなの。前口上(まえこうじょう)は考えてたんだけど、変身ヒロインとしての名前を考えてなくって。それで咄嗟(とっさ)におばーちゃんの名前を使っただけ」

「つーことは、あれか。マジカルコハナちゃんとかって言ってたけど、実はアレはばーさんの名前だったってぇ訳か(全国のコハナさんごめんなさい)」

「まぁそうなるわね!」

「ドヤ顔で言うことじゃないんじゃ……」

「ほれ、お主ら! 楽しいおしゃべりはそれまでじゃ!」

 唐突に安倍が会話を(さえぎ)った。その顔には先程までの(なご)やかな表情は無い。仕事の、即ち、妖と相対する0課の長としての顔だ。

「到着じゃ」

 指揮車両が停車したのは立派な門構えの豪邸の近く。

 この邸宅は先の、妖だった少年が関わっていたヤクザの組長宅。


 彼らはこれからこの邸宅へ殴りこみをかけるのだ。


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