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アーマード・オウガ  作者: ハル
参:エターナル
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十四

 チンとカンを正座させた鳴海(なるみ)はトンの胸倉を掴み上げ鼻先にナイフを突きつけていた。

「だっ……からナイフを引っ込めろって! 話すからっ!」

「引っ込めろ、だぁ? テメェは俺に指図できる立場にいると思ってんのか……?」

 言いながら突きつけたナイフを更に近づけた。先端がトンの鼻先をチクチクと刺激する。

「っひ……!」

「おっとと、そう震えるんじゃねーよ。うっかり鼻の穴を(つな)いじまうかもしれねーだろ?」

 ガタガタ震えるトンに、鳴海は非常に悪い笑顔で脅迫を続けた。

「別に俺は無理に話せと言ってるんじゃねーぜ? ただお前らどうしても話したければ聞いてやるってんだよ」

「テメェシャバ(ぞう)が調子乗ってんなよッ!」

「いい加減にしろってんだよッおあ゛ぁぁ!?」

 鳴海の振る舞いにいきり立ったチンとカンが怒鳴り、立ち上がろうとする。が。

「誰が立っていいっつったッオラァァ゛!? コイツぶっ殺すってんだろーがッ!!」

 彼の一喝(いっかつ)に腰を落とす。

「おい、テメェの部下の(しつけ)くれぇ出来ねぇんか?」

 涙目になったトンに更に顔を近づけ言った。

「わっ、分かった、分かりました! お前ら、動くんじゃねぇ!」

 チンとカンは悔しそうな、と言うより、怒りをかみ締めるような顔をして膝を付く。

「よし……。で? お前は、ヤツについて何を知ってる?」



 どんな学校にも不良と言うものは存在する。

 それらは学校を支配した気になって、頭一つ抜きん出たヤツやアイサツ(、、、、)が出来ないヤツをシメたりする訳だが、今回、鳴海は前者を演じた訳である。

 ポッと出の転校生が目立ちまくれば、当然面白くない。大抵は(ねた)んだ者が陰険な嫌がらせを行ったりするわけだが、ヤクザ者とつるむような不良がいる学校なら、ある程度各学年を仕切っている者がいて、目立たないようにシメに来るはずであった。

 そのため、鳴海は目立つ転校生を演じてソイツをおびき寄せ、実力を示すことによって逆にシメてやったのだ。

 そして、頭を張る位のヤツならば、更に上の者の居場所も知っているだろう、ということだ。

 だから鳴海は目立ったし、喧嘩もした、そう言う訳である。



「と、言う訳でして。ヤツが良く出没するらしい場所は分かりました。放課後、(しばら)くはそこに通いつめることになるでしょうね」

 トンチンカントリオを解放した鳴海は早速、安倍へと報告を行っていた。因みにこの学校は授業中に使いさえしなければ携帯電話の持ち込みが許可されている。周りの生徒たちが皆揃ってスマートフォンを使っているのを見て、鳴海も買い替えを検討していた。

『ふむ。それは構わんのじゃが……、京一郎(きょういちろう)のヤツはどうするのじゃ?』

 少々心配そうな声で安倍が返す。鳴海には今まで一人で行動して危険な目にあったことが何度もあるため、仕方の無いことか。

「それが……、職員会議やらなんやら、新任教師には色々と仕事があるみたいで……。身分を偽っている以上、無視するわけにもいかないんですよね」

『むう……。隠密(おんみつ)が常のワシらにとって、避けては通れぬ問題じゃな。何か対応策を考えんとのう』

「まぁ、それについては先に京兄(きょうにい)に確認してます。俺が一人で行くことで決定しています」

『……。いつも言ってることじゃが、無理はしてはならんからの。お前さんは前科がある。くれぐれも、じゃよ』

「……はい、肝に銘じておきます……」

 と、電話の向こうから「そろそろ目的地です」という声がした。

「? 安倍さん? 今車にでも乗ってたんですか?」

『うむ、ちょっと例の魔法使いについて心当たり、と言うかの。調べられることはワシ自ら調べておかんとのう。丁度よい。お前さんの意見も聞いておきたいのじゃが』

「何ですか? 俺の知識なんてそう大して役に立つとは思えませんけど……」

 事実、京一郎を含め、彼らの知る知識ならば大よそ彼女知る範囲のものであろう。単に会話を続けたかったのか、それとも若い感性に期待してのことか。

『んむ。(くだん)の少女が使っていた技術についてじゃが、お前さんはどう思う?』

「どう、とは?」

『つまり、アレが技術的に可能かどうか、という話じゃな』

「……正直、まったく予想が付きません。確かにあんな風に炎を起こしたりする術の(たぐい)は存在しています。ですが彼女はそのために必要となる触媒(しょくばい)を使用する様子が見えませんでした。もしくは京兄のように霊装(れいそう)を使ったとも考えられますが……」

『魔法少女のアニメ程度では力を持つほどの概念が集められない、じゃろ?』

「……ええ。だからあの子は一体どうやってあんな火力の攻撃を可能にしたのか……」

『ふむ。やはり、お前さんもその結論に至ったかえ』

「じゃあ、安倍さんも?」

『んむ。そこで符術(ふじゅつ)に秀でておったワシの古い知人を当たってみようと思っての』

「共闘の経験が?」

『懐かしいのぅ。まだ今のように人材が揃っとらん時代での? あ奴とは色んな(あやかし)を退治したモンじゃよ』

「へぇ……。俺も会ってみたいですね。なんて人です?」


『結婚しておって名字こそ伏し名ではないがの、名前は“小華(こはな)”というのじゃ』


「へぇ……。……はい?」

『のう? これは会っておかねばならんじゃろ? ワシもつい先刻思い出してのぅ……。いやはや、歳かのぅ』

 安倍の自虐的な呟きは、しかし鳴海には届かなかった。


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