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アーマード・オウガ  作者: ハル
参:エターナル
47/65

十三

 昼休みに入り、京一郎(きょういちろう)と落ち合うべく体育館裏に来た鳴海(なるみ)は、ニヤニヤ顔の彼に出迎えられた。

「何? 京兄、その顔は」

「いやいや、何ってこたねーだろ。モッテモテじゃねーか」

 京一郎の横に腰を下ろした(建物のふちが一段あるため、地面に直接座ることはない)鳴海は弁当の包みを解きながら、「あぁ」と短く返事した。

「こっちは言ってしまえばチートを使ってるんだ。ずるをして賞賛(しょうさん)を集めてもそれには何の価値もないよ」

 その言葉に「ほう」と感心したような相槌(あいづち)を打った京一郎だったが、すぐに手にしたパンを口に運んだ。

「じゃあ、お前は何がしたくて目立ってるんだ? この間は蛇の道は、とか言ってたが」

「今に分かるよ。今日辺り、来る頃だと思う」

「?」

「唯一つ残念なのは、安倍さんのお弁当をゆっくり味わえないことかな」

「??」

 そういえば、いつもよりがっついてるか? そんな疑問を浮かべつつ、今日辺り来るという何かをのんびりと待つことにした京一郎であった。



「お出ましだよ」

「3人……か? 妙に殺気立ってやがるな」

 弁当を平らげ、包み直していると、この体育館裏へと近付いてくる気配を感じた。

「俺のお客さんだよ。京兄は隠れてて。一応教師だからね」

「?」

 と、疑問符を浮かべつつも京一郎は素直に近くの草陰に身を(ひそ)めた。たったそれだけのことなのに鳴海には気配の一つも感じられなくなってしまった。鎧鬼(よろいおに)という強力な武器を有してはいるものの、それ以外は色々と京一郎の方がずば抜けているらしい。

 そんなことをのん気に考えていると、気配の主が姿を現した。

「よう、転校生」

「こんなひっそりした所でお弁当か? ひょっとしてお友達がいないのかな~?」

「それともあれか? 自分みたいに優秀な人間は下等な連中とは飯が食えねぇってか?」

「そんな(さび)しいこと言うんじゃねぇよ~。仲良くしようぜぇ?」

 見るからに頭の悪そうな3人組が、頭のことを悪そうなことを言いながら近付いてきた。

 鳴海は取り合えず、右から順にトン、チン、カンと命名した。相手の名前を知らないのだから仕方ない。

「もう転校して(しばら)く経つんだ。転校生は止めてくれ」

 立ち上がりながらそう言った。

「それより、何の用だ? 用がないのなら、帰ってくれないか? 俺はのんびりしたいんだけど」

 更なる鳴海の一言で、トンチンカントリオは更に殺気だった。

「あんだクソコラァッ!」

「チョーシこいてんじゃねぇぞシャバ(ぞう)がオア゛ア゛ァァッ!?」

 と、怒鳴るチン、カンを押えるようにトンが一歩出てきた。

「目立ちすぎだっつってんだよ……。平和に過ごしたきゃチョーシくれんなよ?」

 まだ警告だと告げるような口振りでそう言った。どうやらこの三人の中でトンが一番のリーダー格であるようだ。

 (すご)みを()かせる顔で、額を(こす)るような距離で(にら)むトンに、鳴海は(ひる)むことなく不敵な笑みを浮かべる。そんな顔をされても、もっと化け物そのものの顔を見てきた鳴海にとっては怖いどころか微笑(ほほえ)ましいと感じてしまう。不敵な笑みと言うのも半分は素でにやけてるだけだ。

「……運動ができて、頭もよくて、女の子にもモテる」

 唐突に語りだした鳴海に三人は一瞬、キョトンとした顔をした。

 (もっと)も、

「そんな俺を。ひがんでんじゃあねーよ、猿共が」

 次の言葉で怒髪天(どはつてん)を突いた訳だが。

「「「ッロスゾッラアァァァァァァッ!!!」」」

 トンチンカンはよく分からない言葉で綺麗(きれい)なハモリを響かせ、鳴海に飛び掛った。


 嗚呼。


 彼らは気付くべきであった。


 その黄金の瞳に。



(圧倒的だな)

 草陰から鳴海の暴れっぷりを見ながら、京一郎は他人事(ひとごと)のようにそう思った。

 鳴海が京一郎を隠した理由はこのためである。

 仮にも教師である身で喧嘩をほったらかしには出来ないし、教師と一緒にいると不良どももわざわざ近寄ってきたりはしないからだ。

(まぁ、何で喧嘩してんのかは知らねーが。あ、いいのが入った)

 京一郎は格闘技の試合を観戦するような心持になりつつあった。

 正直な話、武術に関しては達人とも呼べる技量を(よう)する彼にとって、特殊能力を持っているとは言っても格闘技術については素人の鳴海の戦い方は、言いたいことが沢山あった。

 しかし、格闘技の試合のように完全に他人事としてみることで、例えばプロレスのように、観戦する楽しみを覚える京一郎であった。

(あっ。ナイフが出た。光物(ひかりもの)はいかんだろ……って二秒で()されてやんの)

 最後の一人を仕留めた鳴海は取り落とされたナイフを拾うと、京一郎を手招きした。

 ガサガサと茂みを鳴らし、鳴海に近付いた京一郎は、で? という眼で鳴海を見た。

「学校のヤンキーが三人。俺の手には刃物。んで、俺たちが探してるのは同じくヤンキー、それも多分この学校で一番のワル。となると、ね?」

「……成る程。おめぇさんもワルよのぅ」

 クックックッと笑った京一郎はクルリと背を向けた。

「ごゆっくり。新任教師はなーんも見てねぇ、聞いてねぇ」

 歩きながら背中越しに鳴海に向かってひらひら手を振った。

 鳴海は京一郎の姿が完全に見えなくなるまで待って、トンチンカンを起こしにかかった。


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