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アーマード・オウガ  作者: ハル
参:エターナル
39/65

「ふああぁぁぁ……」

 食事の途中、鳴海(なるみ)は大きな欠伸(あくび)をした。

「なんだよ。眠そーだな」

 共に昼食を囲んでいた友人、弘が怪訝(けげん)な顔をする。

「いや、昨日ちょっと遅くまで起きてたもんでな……。で? 何の話だっけ」

「なんだよ、そこから聞いてないのか」

「悪い。講義も1限からあったしで、あんまり寝れなかったんだよ」

 昨日の(あやかし)との追いかけっこ、更に謎の少女の登場は鳴海に思わぬ弊害(へいがい)をもたらした。こういう時に限って、次の日も早かったりするものだ。

 早い段階の講義をサボるという手段もあっただろうが、根が真面目(まじめ)な鳴海は律儀(りちぎ)に講義に出席していたのだ。

「まぁいいや。いやさ、昨日合コンしたんだけどさ」

「……」

 こっちは必死こいて妖退治にいそしんでいたと言うのに。

 自ら選んだ道でありかつ、誇りも持っているが、いざこういう話を聞かされると何だか釈然(しゃくぜん)としないものを感じるのは彼がまだまだ若い所為(せい)だろうか?

「そう怖い顔すんなって! 次はお前も呼んでやるからさ!」

 眠気も相まって(あき)れ顔が若干怖い顔になった鳴海を気にする風もなく、弘は先を続けた。

「実はその合コン相手ってさ、ほら……前に見せたことあったろ? あの都市伝説のサイトのチャットルームで知り合ったんだよ」

「あぁ……。あれか」

 少し前に鳴海が『鬼』と闘った時に見せられたサイトだ。確か地域別に話が出来ると話していた。

「覚えてたか? あのサイトで話してたら盛り上がっちゃってさ、トントン拍子に話が弾んだんよ」

「へぇ……」

 鳴海は心底どうでもよさそうに(うな)った。正直帰って寝たかったのだ。

「で、会ってみたらリアルな都市伝説とかの話聞けちゃってさ」

 気分が乗ってきたのか、立て板に水とばかりに話を続ける弘。

「凄いんだぜ。その子の学校の裏サイトではさ、人が化け物に変身したとかって噂が何度も書き込まれてるらしくって。もうその書き込みが都市伝説だっての」

 その言葉が鳴海の眠気を吹き飛ばした。

「弘」

「うぇ? ちょ、そんな怖い顔すんなって……。次はちゃんと知らせるってば」

「違う、そこじゃなくて。その子、学校何処だ」

「え……と? なんつったっけ? ほら、駅から5分位のとこに私立高校があるじゃん。アソコの生徒だよ」

「サンキュー。俺は用事が出来た、また今度な!」

 早口に()くし立てると鳴海は荷物を手に立ち上がった。未だ食べ終わっていない食事のトレイを返却口に押し込むと、一言調理師のおばさんに侘びを告げ、食堂の外へ飛び出した。

 まだまだ、安穏と眠ることは出来ないようだ。



 午後の講義をサボることにし(最初からサボっておけばよかったとちょっぴり後悔した)、0課に足を向けた鳴海は聞き及んだ話を安倍に報告すると、ソファーを貸してもらい、仮眠を取っていた。

 流石に少しでいいから睡眠を取りたかった。場所が場所だけに駄目かとも思ったが、安倍は快く許可を出してくれた。後に聞き及んだ話だと、普段は京一郎がソファーで寝そべっている為、今更でもあったらしい。

 数時間ほど眠って目を覚ましたところ、タオルケットが掛けられていた。おそらく安倍が掛けてくれたのだろう。

「起きたようじゃの」

 と、向かいのソファーから安倍が声を掛けてきた。

「あ……。おはようございます、かな?」

「ふふっ、先ずは顔を洗って来い。話はそれからじゃ」

 そう言ってタオルを投げてきた。タオルを受け取り、礼を言うと洗面所へ向かう。

 人間は長時間寝すぎると逆に体力を消耗すると言う。適切な睡眠を取った場合、短くても体力は充分に回復する。今の鳴海が丁度その状態であり、頭はすっきりしているし、気だるさもない。顔を洗い流すと、一戦闘こなせそうな気分になった。

「よう、すげぇ熟睡してたな」

 部屋に戻った鳴海を安倍に加えて、京一郎も出迎えた。

「面白ぇ話を持って来たって聞いてよ。ばーさんに呼び出されたのさ」

 聞かれる前に回答を出した京一郎は「で?」と言って安倍を振り返る。

「んむ。鳴海が寝とる間に調べはついとるよ」

「どこまでだ?」

 京一郎が聞いたのは裏サイトに書き込まれた情報がどれ位信用に足る情報だったのか、と言うことだ。

「取りあえず、書き込みの存在は確認した」

「それだけかよ」

「仕方なかろ。インターネットの掲示板なんぞ、匿名性(とくめいせい)がウリじゃろて。おまけに学校のサイトと限定された空間じゃ。用心深くもなろうよ。……まったく、技術の進歩は早いもんじゃの。日進月歩(にっしんげっぽ)とは、言うたもんじゃ」

「安倍さんが言うと何だか重みがありますね」

「へっ、違ぇねぇ」

「……鳴海も言うようになったの」

「うぇっ!? 別にそう言うわけじゃ!」

 思わぬ飛び火に慌てる鳴海に冗談じゃ、と告げた安倍は、「さて」と場の空気を引き締めなおすと今後の方針を決めに掛かる。

「それでの。どう動くか、お前さんたちの意見も聞きたいのじゃが」

「捜査するって方向性は決定なんだな?」

「んむ。妖の捜査はこういった細々したものを調べることから始まるものじゃよ」

「前の時もウェブサイトで噂になってたことがありましたよね」

 と、鳴海は以前の事件のことを思い出す。

「そうだな、学校に潜入捜査でもするか?」

「悪くはないがの。今の段階で上からそこまでの許可が下りるかどうかじゃの」

「例の魔法少女(仮)はどうなりました?」

「そっちも依然捜査中じゃよ。監視カメラは確認に時間がかかるし、堂々と表立って捜査するわけにもいかんのじゃ。中々と難儀しとるよ」

「んじゃ、そっちは保留ってことでいいんだな、ばーさん」

「んむ。妖では無さそうじゃし、人物の特定を急がすのが先決じゃからの」

「う~ん……」

 (しば)し唸った鳴海が意見を提示する。

「じゃあ、書き込みをした人、多分その裏サイトの学校の生徒さんですよね? その人を探してみましょう」

「ふむ、そうじゃの。それが一番妥当(だとう)なとこじゃな。それぐらいなら、上から“待った”もかからんじゃろ。とりあえずサーバを管理しとる会社に切り込みを入れるとしよか。お疲れさん、二人とも。今日はもう帰ってええぞ」

 そう言い残すと、安倍は部屋を後にする。残された二人には共通の疑問が。

「ばーさん、思った以上に詳しいな」

「考えてみたらコンピューターが作り出された当初からその進歩と共にいたんだよね。割と勉強好きみたいだし、おかしくはないかも」

「歳の功は馬鹿にできねぇな……」

 少し、デジタルも勉強しよう。

 二人は密かにそう思っていた。


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