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獣医禁書  作者: 深口侯人
50/50

あとがき ~獣医師を目指す学生さんへ~

以上で、”汚物”院長が猛威を振るう地獄の動物病院に就職した獣医師の半生の(反省の?)レビューは終わりです。

後日談のあたりは蛇足になってしまってすいませんでした。

『獣医師になると、どの道へ行っても悲惨だよ。』っていう(極めて個人的で自業自得な(笑))意見がどうしても主張したくって。

まぁ、正直なところ、公務員の辺りはネットなどで得た知識が多くて信憑性に欠けるんですが、友達の話を聞く限りはそんなに間違ってもいないはずです。

獣医師になるつもりなら、幸せな人生は諦めましょう(笑)。


本書を読んだ一部の方には「お前、仕事舐め過ぎ。」とお叱りを受けるかもしれません。

確かに僕は、愚痴っぽいし、根性が無いし、夢見がちだし、学生気分が抜けきっていない面があると思います。

本書のエピソードのうち、冷静になって考えれば”汚物”が正しい事を言っているのに対して文句を言っている場面もありますし、怒鳴っている内容を真面目に受け止め過ぎていたかもしれないし、もっと軽く流せていたら良かったのかもしれません。

また、仕事をしていれば辛い事や上手くいかない事があるのは僕も分かっています。

しかし、自分にとって快適な職場で働きたいと思う事は、そんなに悪い事ではないはずです。

僕の一度きりの人生ですし、なるべく周りに迷惑もかけないように気をつけますので、何も言わずに僕の気が済むまで安住の職場探しをさせてください。

そして、あなたの周りで僕と同じように人生に迷っている人を見かけても、あなたの意見を押し付けたりせずに温かい目で見守ってあげてください。

どうかよろしくお願いします。


それはともかく、”汚物”には実体験の院長に色々と足したはずですが、読み返してみると8割方本人そのままですな(笑)。

よくこんな奴の下で仕事できたもんです。

《自分で自分を誉めてあげたい。》(古ッ!)

しかし、臨床獣医師を目指す人にとっては悪い知らせなのですが、この“汚物”が特別酷い院長かといえば、そうではありません。

”汚物”ほどではないにしろ、動物病院の院長は癖のある人が多いようなのです。

診療が適当でいつ訴えられてもおかしくない「適当院長」、病院には常駐せず、連絡もつかない「放蕩院長」、オーナーも従業員も全ての人間を見下している「王様院長」、従業員不信で病院内に盗聴器や隠しカメラを仕掛けている「疑心院長」、説明不要の「セクハラ院長」…。

皆、各自の“治外法権領”にてやりたい放題やっています。

ただし、彼らは、人として欠陥のある人物たちなのは確かですが、様々なリスクを乗り越えて開業し、病院を運営しているという事実は称賛に値する事柄であり、リスクを冒してもいない人間がとやかく文句を言える筋合はないのです。

従業員や赤の他人が非難する資格はないのです。

とはいえ、決して優秀な上司とは言えませんし、「できればこんな変人たちの下では働きたくない。」、「もっと普通の院長の下で働きたい。」と思ってしまうのは人として当然の事でしょう。

しかし、僕のリサーチによると、その「普通の院長」率は50%程度…、しかも、見学時はほとんどの院長が優しく穏やかなので、「普通」と「変人」の見分けがつきません。

ほとんどのケースは、就職後に態度が豹変した時点で初めて“やってしまった”事に気付くのです。

あなたは、どんな院長の下なら文句も言わずに一緒に仕事できそうですか?


また、臨床獣医師コースは更なる問題を孕んでいます。

最近はマシになってきているそうですが、勤務獣医師は給料が安いため、一般的な臨床獣医師は将来的に自分の病院を開業しないとやっていけないケースも多いでしょう。

しかし、動物病院の設立には設備投資だけで数千万円~、土地や建物も含めると億を軽く超える金額が必要になってくる場合もしばしばあるそうです。

普通に何年か研修や勤務をした程度ではそんな大金が貯まるわけもないので、まず間違いなく大借金を抱えての病院運営スタートとなります。

ところが、そこまでのリスクを負って開業しても、病院が上手くいくとは限らないのです。

最近の動物病院過剰のため、オーナーの取り合い競争に勝たなければやっていけません。

夜間や休日にも容赦なくやってくる急患の対応もしなければなりません。

長期の休暇も取り難いので旅行もできません。

常に最新の知識を取り入れていないと医療ミスにつながるので、毎日の勉強も欠かせず、趣味を楽しむ時間も無いでしょう。

情報の氾濫によるオーナーの誤解および訴訟リスクに頭を悩ませる日々も続くでしょう。

これらの事項を適当に取り扱うと、あっという間に悪い噂が広まって廃業に追い込まれるので、気の休まる暇もないでしょう。

そんな自分の人生を犠牲にするかのような生活を余儀なく強いられるのです。

あなたはこんな生活に一生耐えていく自信はありますか?


ともかく、ほとんどの獣医師の職場環境は世間で思われている程に恵まれてはいません。

「動物が好きだから」で気楽に務まる仕事ではないのです。

僕の周りでも、「動物が好きだから」、「動物を助けたいから」と言って臨床を目指した友達の半分ぐらいは悪徳院長や暗い将来に心を折られて他の道を選んだりしています。

しかし、散々獣医師の事を悪く言っておいてなんですが、これを読んでいる獣医師志望の学生さんに誤解してほしくないのは、僕は「獣医師を目指すな。」と言っているわけではないのです。

あなたの気持ちを確かめたかったのです。

僕が書いたような獣医師の暗黒面を目の当たりにして、それでもなお「獣医師になりたい」と思えるならば、あなたはきっと良い獣医師になれるでしょう。

あなたの夢を応援します。

僕の分まで頑張って下さい。

最後にこれだけは言いたかったのです。


それでは、言いたい事も言えたことだし、そろそろ筆を置こうと思います。

ここまで読んでいただいた皆さん…。

最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。


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[一言] 怒汚物陰弔、フィクションじゃないのよーくわかります
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