四十六話 灯夜⑦
子どもを目にした瞬間、いや……正確には子どもと目を合わせた瞬間、灯夜の耳にカチカチという音が聞こえた。
それは、自身が発した音で――歯の根が合わず音が鳴っていたのだ。
寒さからではない。
この子どもを一目見た瞬間に、灯夜は分かってしまったのだ。
これは恐怖だと。
「お前の半身には世話になった。あれの目を通して、色々と見ることができたからな。おかげで、いいものを拾えた。……だが、半身は器が脆弱すぎたな。他のものでも中に入り込めてしまえるようではいけない。あの器は捨ててしまって正解だ」
「…………あんたは――シノサキ様、か?」
担がれていた状態から地に足をつけた灯夜が問いかけると、浅利たちが息を呑む。
対して子どもは鷹揚に笑ってみせた。
「そう呼ばれていたことも、あったかもしれないな」
「――っ……なんで、ここに? 間の血筋は皆殺しにしないと気が済まないってか?」
子どもは灯夜の問いに答えることなく笑顔のまま、続けた。
「忘れ物だ」
そういって片手を上げると、地鳴りが響き――。
「土砂崩れだ!」
安全だと思っていたはずの港めがけて、土砂が押し寄せてきた。
だが、それは港の入り口で止まる。まるで島の中への立ち入りを防ぐように港のまわりを土砂で埋め尽くしてしまったが、それ以上は入ってこない。
その不思議な、そしてギリギリの状況に何人かがホッと息を吐き出す中――灯夜は塞がれた島への入り口の前に、力なく倒れている人影を見つけた。
それは……。
「縁ちゃん!」
叫んで、一直線に駆け寄った。




