表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/50

二十六話


「…………」

「お、おーい? え? ダメそう?」

 

 灯夜の声がする。

 縁はたった今、目が覚めたような状態で呟く。


「……約束……。約束を、したんだ」

「……あぁ」


 自分は、欠落と言ってもいい度合いで、なにかを忘れている――灯夜の言うことが事実なら。

 断片的に、思い起こされたのは、誰かとの約束。

 その相手は……。


「俺は、お前となにか約束したか?」


 灯夜は、なにかを考えるように目を伏せた。

 だが、すぐに首を横に振る。


「オレとはしてない」

「じゃあ……」

「――覚えてないんじゃなかったっけ?」


 問われて、縁は「覚えてない」と呟く。


「分からないんだ。本当に。だけど、なんか……こう、浮かぶんだよ。変な感じなんだけど……誰かが」


 自分の状態に縁自身も戸惑っていた。説明するにも、なんと言えばいいのか分からない。歯がゆい状態ながらも伝えようとすると、灯夜は「そっか」と頷いた。


「もしかしたら、神様効果的なやつか?」

「なんだ、それ」

「この島には神様がいるってこと。鉤路さんが船で言ってたことは、言い伝えとかじゃない。この島の連中は、今も神様がいるんだって信じてる。……それがより身近に感じるように作り出された存在が、かえり様だ」


 灯夜の言葉に、縁は赤い石を持った人たちの言動を思い出す。そして、間の家で仁一朗が倒れたとき、医者ではなく「かえり様」を呼んだことも。

 

「かえり様が、神様扱いされてるってのは……なんとなく、分かる」

「十四年前の土砂災害からの、唯一の生還者って触れ込みだしなぁ。そこで神の力を貸し与えられたから。まぁ、神の力で守られた島で災害が……それも、大事な儀式の日に起きたんだ。自分たちの神秘性や絶対性が揺らぐと思って慌てた、間のじじいが考えたんだよ。都合のいいシンボルに」

「……けど、間の人たちも、かえり様に傾倒している感じだったぞ」

「そう。じじいの誤算はそこだった。まさか、自分が取って代わられるとは思ってなかっただろうな。……今はもう、間も島も、かえり様中心で成り立ってるんだよ。――縁、オレが島に来た目的、覚えてる?」


 突然問いかけられた縁は、戸惑いながらも「それは……」と口を開いた。


「妹さんの……――」

「オレの妹の名前は、間 朝灯」。


 アサヒと口の中で繰り返し、縁は「えっ」と乾いた声を上げた。


「ちょっと、待ってくれ……。だって、お前の目的は――」

「そっ。オレは妹の死体を探しにこの島に来た。縁も会っただろ? 動いて喋るアレに」


 アレとは、まさか、間家で唯一自分に好意的だった彼女のことだろうかと、縁はアサヒの顔を思い浮かべる。

 そして、ある事に気がついた。

 アサヒは先ほども自分を助けてくれた。だが、その時……灯夜は彼女に姿を見られないように……まるで、隠れるようにしてここまできた。


「どういう、ことだ。あのアサヒさんが……彼女がお前の妹なら、お前の目的は……」

「糸布狭島の伝承、鉤路さんが話してただろ? ……縁が覚えていない原因でもある」

「原因?」

「……オレの双子の妹である朝灯は、十四年前に死んでるんだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ