二十一話
目を開けたはずなのに、暗い――何度か瞬きをして、縁は頭に袋をかぶせられたことをお思い出す。
転がされた場所からはひんやりと冷たい感覚が伝わってきたが、それだけで自分がどこにいるか特定するのは難しく、雨風があたっていない様子から、ここは屋内であるということくらいしか分からない。
身じろぎしようとした縁だったが、手足の自由が利かないことに気付いた。
どうやら後ろ手に縛られており、両足も縛られている。身動きがとれないため、自力で袋を外すことも難しいことが、視界をふさがれる現状でも把握できた。
自分の置かれた状況は理解出来たが……。
(ここはどこだ? また、あの廃屋か?)
昨日は運良く助けられた――だが、今度はそんな幸運を期待できる状況ではないだろう。
ホテルの客室に堂々踏み込んできた連中の言葉を信じれば……苗木は昨夜ホテルのエントランスで別れてから夜明けまでのうちに亡くなっているし、トーヤはともに殺人の嫌疑をかけられ、つかまったはず。
ならば、同じように転がされているのではないか。
同じ場所に閉じ込められているのかどうか、目を覚ましているのかどうか……確認しようにも身動きが取れない縁ができることは、限られていた。
「……トーヤ?」
恐る恐る、呼びかける。
ごく小さな声で呼んだつもりだったが、静かな空間ではやけに響いて聞こえた。
だが……反応はない。
ここにはいないのか。あるいは――声も出せない状態か。
(まさか……!)
後者を想像して、縁は青ざめた。
ありえないことではない、と考えてしまったのだ。
間家で聞いた言い方を真似れば、お外のかた……島の外から来た者は、ふたりも死んでいる。次はトーヤではないと、なぜ言い切れるのか。そして、その考えはそのまま縁自身にも当てはめられる。
どちらがいつ殺されてもおかしくない状況なのだ。
改めて置かれた状況を把握した縁は、床に袋を押しつけて、なんとか外そうとずりずり体を動かす。このまま黙っていて、状況が好転するとは思わなかった。
「――くそっ……!」
焦れば焦るほど、うまくいかない。悪態をつきながらも、再度挑戦していると少し離れたところで重く鈍い音が聞こえ――さぁぁっと、それまで感じなかった風が吹き込んでくる。
(誰か、来た!)
島民か、警察官か――それとも、間の家の誰かか。
ドクドクと心臓の音がはやく、激しくなる。
かたっと小さな音がする。
中に、入ってきた。
間の人間、特に数馬が来たのなら自分は終わりだ。
漠然と、縁はそう予感していた。
「あの~……誰かいるんですか?」
呼びかけてくる声は女のもの。高く澄んだ、女の声だった。




