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十九話


 トーヤの言い方があまりにあっけらかんとしていたせいか、縁はしばし意味を理解出来なかった。


「……ぇ、えぇと、死体って……」

「妹の死体。昔、この島で妹死んだんだわ」

「――ごめん」


 一瞬でも、動画のためなどと考えた自分を縁は恥じた。


「いや、そんな深刻な顔で謝らんでもいいって! もう、ずいぶん前のことだし……正直、オレは全部忘れて自由に生きていこうと思った時期もあったんだけどさ~……。なんか、そうもいかない感じになっちゃって」

「もしかして、妹さん……見つかったのか? だったら、俺に合わせる必要なんかない、そっちを優先してくれ」

「いや、金ないでしょ、どーすんの」

「……それは後で必ず返すって言っても、信用ないか。だったら……あ、住所……住所教えるから、お前の連絡先も頼む」


 縁が必死に考えて提案したというのに、トーヤは肩をふるわせ笑いを堪えていた。


「……すまん。今、別に面白いことを言ったつもりはないんだが……、なにか変だったか?」

「ひひっ! くそ真面目だなぁって!」

「金を借りるんだから、真面目にもなるだろ」

「あー、おっけー理解した~。縁は、そういうタイプなのね。めっちゃいい奴じゃーん」

「笑いごとじゃない。……俺は連絡もらって父親の遺骨を引き取りに来たけど、実際はだいぶ前の話で、もう全部終わったって言われたんだよ。……お前はそうじゃないんなら、妹さんを優先したほうがいい」


 そうでなければ、区切りのつけどころが分からなくなる――自分の感情を重ねて思わず力説してしまった縁は、じーっと見つめてくるトーヤの視線に気がつき慌てて咳払いした。


「……まぁ、第三者からの、余計な世話かも知れないけど……」

「いやいや。縁の事情もなんとなーく察したわ。……でもさ、縁も見たっしょ? あの異様な連中。……石を持ってなかった連中も、それが当たり前みたいに気にしてなかったじゃん。集団心理だか知らんけど、気持ち悪い」

「あれは……たしかに……様子がおかしかったな」

「だいたいさぁ、オレは縁を廃屋から連れ出してるから、バッチリ関わってるじゃん。怖いから島から出る一択だし」


 そう言われてしまえば、縁は謝るしかない。

 自分のせいで彼の予定が狂った――妹の遺骨を引き取ることが出来なくなったのだと思うと心苦しい。


「……申し訳ない」

「いや、謝らないで。ほんと、気にしてない。……苗さんも言ってたけど、ヤバそうな雰囲気の連中がいるところにいたくないだけ――とにかくさ、明日本土に行って、警察に相談しよう。縁は絶対そうしたほうがいいからさ」


 そして話はお開きになった。

 ひとまず体を休めようと、ベッドに横になり目を閉じる。

 暗くなった部屋で、ふと思いついたようにトーヤが縁に話しかける。


「そういえばさぁ……、縁……さっきなんであの危ない集団に近づこうとしたん?」

「…………それは……――」


 一瞬返事に詰まって……ゆるゆると息を吐いた縁は小さな声で呟いた。


「聞き覚えがある気がしたんだよ」

「……ふーん……それって…………――……」

「……おい?」


 話の途中で言葉が途切れた。声をかけても返事がない。どうやらトーヤは寝落ちしたようだ。

 なんだ、と縁は苦笑して自分も目を閉じる。

 だが、頭の中では考えていた。


 あれは――赤い石を持った連中が口にしてたあの言葉を、自分は一体どこで聞いたのだったか、と。

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