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異世界でなんでも斬れる剣を拾った  作者: チラシの裏の汚い妖精さん
一章 駆け出し冒険者編
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第12話 店主は有能ってはっきりわかんだね!

 

 

「あらぁ、それは大変だったわねェ」


 裏路地を抜けてすぐの服屋に、さっきの騒ぎの目撃者に絡まれることもなく無事入れた俺は(別に絡まれてサインとかねだられる事を期待したわけじゃないんだからねっ!)服屋の店主と話をしていた。


 ここで注意しておきたいのが、文章だと恐らく口調のせいで勘違いされるだろうが、店主はれっきとしたカール髭のおっさんである。

 むしろ腕とかムキムキの野太い声のおっさんであり、男性ホルモンに満ち溢れている。


 見た目は普通の紳士なので、彼が口を開いた途端に俺の頭がおかしくなったのかと思ったが、話してみると普通に良い店主である。


「若いのに苦労してるのねェ」


 今も俺がこの服装をするに至った、聞くも涙語るも涙のでっち上げを聞いてもらったところである。

 オネェ系の人って何か聞き上手なイメージがあるよね。


「そういうことなら私も力入れて選ぶワァン。

 そうね、これなんてドーカシラ?」


 独特なイントネーションで言いながら店主が引っ張り出してきたのは、渋いカーキ系の軍服を思わせるジャケットだった。


「冒険者やりたいンなら是非ともコレよ♡

 すごく丈夫な素材で少々ゴブリンに引っ掻かれたり、狭い道で引っ掛けたぐらいならそう簡単には破れないと思うワ。

 ポケットも一杯あってナイフとかロックピックも入れておけばサッと取り出せるワヨ。

 その分お値段は少し高いけど……まぁこれ一着で長く着回せることを考えたら充分元は取れる一着だと思うワネ。

 店長のオ・ス・ス・メ」


 くねくねする店主の動きはとても気持ち悪いが、確かに剣を提げた連中の中にはこういう服を羽織った奴が何人か居たな。


「じゃあこれもらおうかな。

 いくらぐらいですか?」


「支払いはルカだった?

 そうそう、叔父さんが貸してくれたんだったワネ。

 なら600ルカってところね。

 他に必要なものある?」


「下に着るシャツとかズボンも。

 あ、あと外套とかも欲しいです。

 防具とかは置いてないですよね」


「残念だけどウチで取り扱ってるのは作業服までネェ。

 アーマーの類いはやっぱり専門店へ行かないと。

 命を預けるものだし適当に買うと後悔するワヨ。

 代わりというわけじゃナイけど、冒険者でも使える鉄板入りの作業靴はお安くしておくワ」


「あ、じゃあそれもお願いします」


「ハイハイ。中々の大荷物ネェ」


「あーそうだ、鞄置いてますか?

 旅用の食糧品とかも入れられるような大きいやつ」


「そうネ、街中で使うものと旅用の2種類あって良いとおもうワ」


「確かに街中で旅用の大きい鞄は邪魔になるもんなぁ。

 2つともお願いします」


「ハーイ。

 この大きい鞄で入りきらない準備が必要な場所まで遠出するなら荷馬の出番になるだろうから、その場合はその時一緒に装備を買う方が良いでショ」


「ほうほうなるほど、タメになるわぁ」


「冒険者もけっこうウチの店使うから、新米冒険者以上に詳しくなっちゃったのヨネェ」


「あーそういうもんですよねぇ。

 やっぱ亀の甲より年の功っていうし。

 って……伝わらんかそうか。

 あ、あと一つ相談なんですけどこのぐらいの小さい……………………」






 ……………………………。




「毎度ありがとネェ!

 また何かあったらいつでも相談してチョウダイ♡」


「いやこちらこそ色々どーもどーも。

 ……………しかし……買ったな……」


 店主の軽快な語りに乗せられてつい服以外にも色々買ってしまい、結局2000ルカ近く使ってしまった。

 まだ金銭感覚にはかなり不安が残るが、それでも軽い金額じゃないのはなんとなくわかる。


 旅行用鞄がいっぱいになるぐらいの荷物を背負って、俺は服屋を後にする。

 既に日が傾き、通りには夕方の気配が漂い始めていた。

 一日が随分早く過ぎたように感じるが、買い物以外にも路地をさまよったり助太刀したりもしてたからな。

 通りから生鮮品の行商などが引き上げ始めているからか、昼間よりも人の流れがまばらになったように感じる。


 ちなみに俺の服装は試着室で着替えさせてもらい、既に人目についても怪訝な顔をされないだろう格好に変身している。

 もうマダムの視線を怖がる必要などない!


『まったく、黙って見ておれば馬鹿の一つ覚えみたいに次から次へと散財しおって。

 宿も決まらぬ内にその大荷物、どうするつもりだ?』


「いやー耳が痛いわ。

 今回ばかりは言われてもしゃーねーな」


 俺と店主がマシンガンの如く喋り続けていたため退屈していたのか、買い物が終わるとすかさずエルが話し掛けてきた。


「そもそもお前からも助言を貰えば良かったんだが……とりあえず今のお前から見てどう?

 いらない物まで買わされてる?」


『いや、そこはあの妙ちくりんな店主が優秀だ。

 私はあくまで剣ゆえ冒険者の事を知り尽くしているわけでもないが、買わされたのは私から見ても恐らくいつかは使う日がくるだろう装備ばかりだな。

 それも冒険者をするなら遠からずに、だ』


「それを聞いて安心したぜ。

 上手いのは話だけじゃなかったのなやっぱり」


 見るからに只者じゃなさそうな人だったからな、色んな意味で。


『とはいえ一辺に買いすぎだ愚か者め。

 靴や外套などは落ち着いてからまた見ても良かったろうに』


「確かに……。

 冷静になって思い返すと、あの語りには物を買うのに躊躇させない魔力があった」


 今度からあの店で買い物するときは気を付けよう。

 服飾に経済的余裕のありったけをつぎ込んでしまいかねない。


『やれやれ……それでこの後はどうするつもりだ?

 その大荷物では既に観光どころではあるまい。

 ひとまず荷物を置ける宿を探すのが賢明だと思うが?

 行商の連中でも、街中で今のお前ほどの荷物を抱えた奴はそうおらんぞ』


「ああ。お前の言う通り、俺も宿を探そうと思っていた。

 さすがにこのパンパンの荷物背負って買い食いして回る体力は俺にはない。

 けどその前にちょっと」


 俺はさっきも入った裏路地に入り、戦利品だらけの鞄を下ろす。

 袋小路にでも繋がっているのか、相変わらずこの路地にはまったくといっていいほど人気がない。

 今の俺達には素晴らしく都合が良いわけだ。


『なんだ?店を出たばかりなのにもう休憩か?

 そりゃあれだけの、店をひっくり返すほどの騒ぎを二人でやっていたんだから無理もないがな。

 暗くなる前にさっさと宿を探して、そこで一息ついた方が楽になれると思うぞ』


「いや違うんだよ。

 とりあえずお前ちょっとこっちに出てこい。

 剣じゃなくて人の姿でな」


『またか……だから路地なぞで迂闊に呼び出すなとあれほど……。

 ……ええい、仕方あるまい!』


 いよいよ濃くなり始めた路地の影を一瞬だけ吹き晴らして、エルの小さなシルエットが俺の傍に現れた。


「で?用件はなんだ?

 またゴミでも渡そうものなら、今度こそシルメリアにマスターを変えるよう頼み込むぞ」


「俺もそこまで鬼じゃないっての。

 ほら、よい子にサンタクロースからのプレゼントだ」


「誰が子供だ。

 精神年齢で言えば貴様より余程老成しておるわ。

 というかサンクタ老師とはなんだ?

 ……………む?なんだこれは」


 鞄をひっかきまわしてようやく見付けた目当ての品を、エルに投げて渡す。

 それはふわりと宙を舞ってエルの手に収まった。



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