表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄は全国同時生配信でした~公開処刑のはずが、処刑されたのは王子の名声でした~  作者: カルラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/19

第十五章 王子失脚

神殿での一件から数日後、王城にはまだ、重い空気が漂っていた。

アリア様は、神殿裁判に送致されるまでの間、王城の一室に留め置かれることになっている。

レオン様は、その間も、何度も面会を申し出ていたのだと、後になって知った。

王妃マリア様は、これ以上息子を傷つけてほしくないと、その面会に反対していたとも聞く。

それでも、レオン様の意志は固かったのだという。

そして、ついにその面会が許された日。

国王陛下の許可の下、王家の鏡が見守る中、二人の対面の場が設けられることになった。

私も、証人の一人として、その場に立ち会うことになる。

質素な一室に、レオン様とアリア様が向かい合って座っている。

華やかな舞踏会の日から、まだ数か月しか経っていないというのに、二人を取り巻く空気は、まるで別世界のようだった。

レオン様は、これまでのどの瞬間よりも、憔悴した顔をしていた。

それでも、まっすぐにアリア様を見つめ、口を開く。

 

「アリア、聞いてくれ」

 

「お前一人の罪だとは、私は思っていない」

 

その言葉に、国王陛下も、私も、静かに耳を傾ける。

 

「私が、もっと早く違和感に気づいていれば……こんなことには」

 

「アリアは、悪くない!」

 

悲痛な叫びが、静かな部屋に響き渡る。

これまでのすべてを失いながらも、なお彼女を庇おうとする姿は、ある意味で一途とさえ言えるのかもしれない。

けれど、アリア様の反応は、私たちの予想とは、まったく違うものだった。

彼女は、ゆっくりと顔を上げる。

その目には、もう涙の欠片も見当たらない。

ただ、冷たく凪いだ光だけがあった。

 

「……悪くない、ですって?」

 

低い声で、そう呟く。

 

「全部、レオン様が言ったことです」

 

会場の空気が、凍りつく。

 

「婚約者を疑わせたのも、証言の筋書きを考えたのも」

 

「最初にすべてを言い出したのは、レオン様ではありませんか」

 

レオン様は、言葉を失ったように、その場に固まる。

 

「そ、それは……お前が、そう望んだから……」

 

「望んだ?」

 

アリア様は、乾いた笑いを漏らす。

 

「望んだのは、私を利用しやすいと思ったレオン様の方でしょう」

 

「私は、ただ、言われるがまま演じていただけです」

 

その言葉が、真実なのか、それとも最後の悪あがきなのか、私には判断がつかない。

けれど、レオン様が受けた衝撃は、本物だった。

彼の顔から、みるみる血の気が引いていく。

 

「そんな……私は、お前を守ろうと……」

 

声が、力なく震えている。

アリア様は、その様子を見ても、もう表情一つ動かさない。

 

「守る? 今さら、何を仰るのですか」

 

「私はもう、すべてを失いました。守られる価値など、どこにもございません」

 

その突き放すような言葉に、レオン様は、まるで殴られたかのように、体を大きく揺らす。

これまで彼が信じてきたものが、音を立てて崩れていく瞬間だった。

国王陛下が、静かに、けれど重い声で告げる。

 

「レオン、もう十分だろう」

 

レオン様は、何かを言おうとするが、言葉が出てこない。

ただ、力なく項垂れるだけだった。

私は、その光景を、静かに見つめている。

かつて共に国を支えようと誓った相手が、今、目の前で完全に崩れ落ちていく。

勝者としての高揚感は、そこにはなかった。

ただ、人が人を利用し、利用され、そして共に堕ちていく様を見せつけられているだけだった。

全国の視聴者たちも、この光景を見ているはずだ。

かつて国民的人気を誇った王太子の姿が、これほどまでに痛ましく映る日が来るとは、誰も予想していなかっただろう。

部屋を出る間際、私はレオン様に一度だけ視線を向ける。

その目には、もう何も映っていないように見えた。

かつて剣術に優れ、人々の憧れであった青年の面影は、そこにはもうなかった。

控えの間へ戻る廊下で、リズが静かに寄り添ってくれる。

 

「セリーヌ様、お辛かったでしょう」

 

その優しい問いに、私はしばらく答えられずにいた。

 

「辛い、というより……」

 

「人が壊れていく様を見るのは、何度経験しても、慣れることはないのね」

 

リズは、静かに頷くだけだった。

真実は、時に、これほど残酷な形で人を裁くものなのかもしれない。
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ