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婚約破棄は全国同時生配信でした~公開処刑のはずが、処刑されたのは王子の名声でした~  作者: カルラ


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第十四章 神殿の判断

神殿からの発表は、三日後に行われることになった。

場所は、王城ではなく、大聖堂の前庭。

王家の鏡も、その日は大聖堂へと移され、全国へ生中継されることになっている。

当日、大聖堂の前には、これまでにないほどの人々が詰めかけていた。

抗議の声を上げていた者たちも、噂を聞きつけた野次馬たちも、皆一様に、固唾を呑んでその時を待っている。

朝から降り続いていた小雨が、ちょうど発表の直前になって止んでいた。

雲間から差し込む光が、大聖堂の白い壁を静かに照らしている。

私も、国王陛下や王妃マリア様と共に、招かれる形でその場に立ち会うことになった。

アリア様の姿も、衛兵に付き添われる形で、前庭の中央に用意されている。

顔色は、蒼白を通り越して、ほとんど生気を失っているようにさえ見える。

かつて、あれほど多くの人々を魅了した微笑みは、もうどこにも見当たらない。

やがて、大聖堂の扉が、重々しく開かれる。

白と金の法衣をまとった大神官が、ゆっくりと姿を現す。

その荘厳な佇まいに、前庭は自然と静まり返っていく。

大神官は、王家の鏡に向き直り、静かに口を開く。

 

「本日、神殿として、正式な決定をお伝えいたします」

 

声は、決して大きくはない。

けれど、その一言一言が、不思議なほど遠くまで届く。

 

「アリア・フェルミナの聖女認定を取り消します」

 

その一言に、前庭全体が、大きくどよめく。

アリア様は、ただ俯いたまま、身動き一つしない。

大神官は、さらに続ける。

 

「彼女の証言が虚偽であったこと、また、その虚偽が神殿の威信を貶めたことを、重く受け止めております」

 

「聖女としての資格は、本日をもって、正式に剥奪といたします」

 

私は、静かにその光景を見守っている。

けれど、大神官の言葉は、これで終わりではなかった。

 

「さらに、昨夜、神殿にて神託が下されました」

 

その一言に、前庭の空気が、これまでとは違う緊張を帯びる。

神託という言葉を、私はこれまで生きてきた中で、一度も耳にしたことがなかった。

それほどまでに、稀なことなのだという。

大神官は、静かに、けれど重々しく告げる。

 

「神は、この者の加護をお取り消しなされた」

 

会場に、息を呑む音が広がる。

大神官は、アリア様の方へ視線を向ける。

 

「アリア・フェルミナ、そなたに残された力があるならば、ここで示すがよい」

 

アリア様は、震える手を前に掲げる。

かつて、彼女が聖属性の魔法を発動させる時、その手のひらには、いつも柔らかな光が宿っていた。

国民の誰もが、その光を見て、安らぎを覚えていたはずだ。

けれど、今。

何も、起こらない。

彼女の手のひらには、ただの沈黙だけが広がっている。

何度も、何度も、彼女は手を掲げ直す。

震える指先が、必死に何かを掴もうとするように動いている。

それでも、光は、二度と灯ることはなかった。

前庭を包んでいたどよめきが、やがて、完全な静寂へと変わっていく。

誰もが、目の前で起きていることの意味を、噛みしめているようだった。

これは、もはや人の裁きではない。

神そのものが、彼女を見放したのだという事実が、圧倒的な重みを持って、その場を支配している。

全国の視聴者たちも、この瞬間を目にしているはずだ。

コメント欄には、驚きと畏怖の入り混じった言葉が溢れているに違いない。

かつて聖女として崇められた少女が、神の前でただの人として、力を失っていく光景。

それは、これまでのどの証拠よりも、雄弁に真実を物語っていた。

アリア様は、その場に崩れ落ちる。

もう、涙すら出てこないようだった。

私は、その姿を、複雑な思いで見つめる。

彼女がしたことは、決して許されることではない。

それでも、これほどまでに徹底的な断罪を目の当たりにすると、胸の奥に、小さな痛みが走る。

大神官は、静かに前庭を見渡し、最後にこう告げる。

 

「神殿は、二度とこのような事態を招かぬよう、聖女選定の制度そのものを見直します」

 

その言葉と共に、大神官は静かに一礼し、大聖堂の中へと戻っていく。

前庭に残された沈黙は、しばらくの間、誰にも破られることはなかった。

国王陛下が、静かに私の隣に歩み寄る。

 

「セリーヌ、これで一つの区切りがついた」

 

私は、静かに頷く。

 

「はい。けれど、まだ終わってはおりません」

 

国王陛下は、少し驚いたように私を見る。

 

「宰相グレゴール様の関与を、まだ明らかにしなければなりません」

 

その言葉に、国王陛下の表情が、わずかに引き締まる。

 

「分かっている。次は、そこに踏み込むことになるだろう」

 

真実の輪は、着実に、核心へと迫りつつあった。

前庭を後にする間際、私はもう一度だけ、アリア様の方を振り返る。

衛兵に支えられ、力なく連れて行かれるその後ろ姿には、かつての輝きは、何一つ残っていなかった。

同情でも、憐れみでもない、名付けようのない感情が、静かに胸を過ぎっていく。















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