表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄は全国同時生配信でした~公開処刑のはずが、処刑されたのは王子の名声でした~  作者: カルラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/19

第十二章 決定的証拠

神官への聴取を控えたある夜、アルフレッド様が、思いがけないものを届けてくれた。

小さな魔石だった。

音を記録できる魔道具だと、彼は静かに説明する。

 

「宰相邸に出入りしていた神官の部屋を調べる過程で、これを見つけました」

 

「アリア様と、その神官とのやり取りが、記録されているようです」

 

私は、その魔石を手に取り、静かに見つめる。

小さな石の中に、どれほどの真実が眠っているのだろうか。

確かめる前から、胸の奥がざわめいている。

国王陛下への報告と、正式な証拠としての手続きに、その夜はほとんど眠る間もなかった。

それでも、ここまで来た以上、後戻りするつもりはない。

翌日の開廷、謁見の間には、これまでで最も多くの人々が詰めかけている。

国王陛下が、静かに開廷を告げる。

 

「本日は、新たな証拠についての報告を受ける」

 

私は、静かに一歩前へ出る。

 

「この裁判の背景を明らかにする、決定的な証拠を入手いたしました」

 

会場に、緊張が走る。

私は、懐から小さな魔石を取り出し、掲げる。

 

「これは、音を記録する魔道具でございます」

 

「ここに、アリア様ご自身の声が残されております」

 

アリア様の顔から、みるみる血の気が引いていく。

 

「そ、それは……!」

 

国王陛下が、静かに命じる。

 

「再生せよ」

 

ノア様が、魔石をそっと台座に置く。

淡い光が灯り、やがて、声が流れ始める。

少し歪んだ、けれど確かに聞き覚えのある声だった。

 

「王子なんて簡単よ」

 

会場が、一斉に凍りつく。

 

「少し泣けば男は信じるもの」

 

続けて響いたその一言に、謁見の間は完全な沈黙に包まれる。

誰も、身動き一つできずにいる。

私自身も、その声の軽さに、思わず言葉を失いそうになる。

これまで涙ながらに訴えてきた姿と、今聞こえてきた声との落差が、あまりに大きい。

同じ人物の声とは、にわかには信じがたいほどだった。

声は、さらに続く。

 

「レオン様は、本当に単純だから」

 

「ちょっと困った顔をすれば、すぐに味方をしてくれるの」

 

くすくすと笑う声さえ、その録音には含まれていた。

会場中の視線が、一斉にレオン様へと向けられる。

レオン様は、その場に立ち尽くしたまま、放心したように録音を聞いている。

顔から表情そのものが、抜け落ちてしまったかのようだった。

全国の視聴者たちも、この録音を聞いているはずだ。

けれど、コメント欄にすら、言葉が浮かばないのではないかと思う。

それほどまでに、重い静寂が、この瞬間を支配していた。

国王陛下が、しばらくの沈黙の後、ようやく重い口を開く。

 

「アリア・フェルミナ」

 

「この声は、そなた自身のものに相違ないか」

 

アリア様は、何も答えられずにいる。

ただ、両手で顔を覆い、その場に崩れ落ちるだけだった。

もはや、涙すら意味を持たない。

誰も、その涙を信じようとはしないだろう。

王妃マリア様は、静かに目を閉じている。

レオン様は、ゆっくりと膝から崩れ落ちる。

 

「そんな……私は、本当に……」

 

言葉にならない呟きが、虚しく響く。

宰相グレゴール様だけが、依然として無表情のまま、その光景を見つめている。

私は、静かにその横顔を見つめる。

この録音が明らかになったことで、彼が動揺する様子は、今のところ見られない。

けれど、これは、まだ終わりではない。

この録音の存在を知られたことで、彼が次にどう動くのか。

そこにこそ、本当の答えが隠されている気がしてならない。

国王陛下が、静かに、けれど重々しく告げる。

 

「本日はここまでとする」

 

会場を後にしながら、私は静かに息をつく。

決定的な証拠は、確かに手に入った。

けれど、勝利の実感よりも、これから起こることへの緊張感の方が大きい。

窓の外には、いつの間にか星が瞬き始めている。

控えの間で、アルフレッド様が静かに待っていてくれた。

 

「セリーヌ様、宰相邸の動きに、変化が見られます」

 

短いその報告に、私は静かに頷く。

 

「詳しく教えてください」

 

アルフレッド様は、声を落として続ける。

 

「今夜、宰相邸から複数の荷馬車が、密かに動いております」

 

「証拠を隠滅しようとしているのかもしれません」

 

その言葉に、背筋がひやりとする。

のんびりしている時間は、もうないのかもしれない。

真実が明らかになるほどに、闇もまた、その姿を現し始めていた。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ