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パープル・グラスシーリング  作者: 綾沢 深乃
「第3章 変化していく世界」

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「第3章 変化していく世界」(2-2)

(2-2)


 翌日、日曜日の朝。


「んっ――、」


 直人は重たい瞼をゆっくりと開けた。


 ベッドの上で掛け布団も掛けず、直人は大の字になって眠っていた。久しぶりの深酒が体に堪えたようで、頭がズキズキと痛い。


 腕を伸ばしてiPhoneを探す。酔った状態でもiPhoneだけでは手放さずにベッドまで持ってきていた。ただ充電ケーブルは挿されておらず、枕元に置いてあるだけだった。画面をタップすると、バッテリーは30%程度残っていて、午前十一時を過ぎていた。


 どうやら午前中を全部、睡眠に充ててしまったらしい。


 デスクには缶ビールとサラミの空になった袋が置かれていた。ゆっくりと体を起こすと頭の痛みがより顕著に感じたが、構わずベッドから起き上がり、カーテンを開けてベランダの窓も開ける。


 夏の空気が部屋に入ってきて澱んだ部屋の空気と入れ換わっていく


 デスクに放置されていた缶ビールとサラミを流し台まで持ってき、中を洗ってから分別しているゴミ箱へそれぞれ捨てる。それから汚れてしまったデスクとキーボードを消毒用アルコールを含ませたティッシュで綺麗に拭いた。


「よし、」


 綺麗になった事で満足感を得た直人は、洗面所で歯ブラシを済ませて、冷蔵庫からペットボトルの水と昨夜コンビニで購入したあんパンを取り出した。他に何かないかと冷蔵庫を探すと、一個区切りになっているりんごのヨーグルトを発見したので、それも一緒に取り出した。おそらく晴香が購入していた物だろう。期限はまだ大丈夫だった。あとでLINEをしておこう。


 直人はペットボトルの水を開けて口を付ける。深酒のせいで体が水分を欲していた。冷たい水が全身から染み渡って、体が生き返るような感覚だった。


 水を飲んでからあんパンの袋を開けて齧る。しっとりとしたあんこが疲れた体に優しく染みる。台所で立ったまま、あんパンを食べ終えた直人は、袋をゴミ箱に捨ててから、ペットボトルとりんごのヨーグルトを持ってリビングへ。


 テレビを点けてそのままやっている番組を観ながら、ヨーグルトを食べる。

 しばらくは無心で観ていたが、途中から大声で話す芸人の叫び声が煩わしくなって、直人はチャンネルを変えた。


 適当にサッピングしているとニュース番組がやっていたので、そっちを観る事にした。天気予報を観て、今日も夏らしく暑そうだと思っていると、ベッドに置いていたiPhoneが振動した。


「んっ?」


 晴香からのLINEだった。


【おはよう〜、直人君〜。起きてる?】


 おはようと書かれた猫のスタンプに癒されつつ、直人は返事を書いた。


【さっき起きた。久しぶりにガッツリ寝たよ】


【そうだったんだ。昨日は仕事だったもんね。今日はやっぱりそっち行かない方がいい? 疲れてるなら掃除と洗濯だけでも私がやろうか?】


【有り難いけど、今日は疲れてるから難しいかな。家事は自分でやるよ。いつもありがとう】


 正直、晴香がやってくれるのはとても助かる。

 だが直人はまだ忘望病のWikiを全部読み終わっていないので、そっちに時間を使いたかった。


 一応、疲れているのも事実なのでLINEではそっちを書いた。


【分かった。じゃあ、今日はゆっくり休んで下さい】


【ありがとう』


 晴香にLINEを送ってから、ヨーグルトの件をLINEするのを忘れた事を思い出す。すぐに送ろうと思ったが、まぁいつでもいいかとiPhoneを手放して、ベッド横にある充電ケーブルに挿した。


 ヨーグルトを食べ終えて、残った水のペットボトルを持ちデスクへと向かう。


 スリープ状態だったMacBookを起動して、ログインパスワードを入力すると、ページはwikiのページで止まっていた。


 書かれていたwikiの内容を読んで、確かに昨日はこの辺りまで読んだ気がすると昨夜の記憶が戻っていく。

 結局、酒のせいでコクリコクリと舟を漕ぐようになり、ベッドに倒れ込むようにして眠ったのだ。


 今日は時間があるし、全部読んでしまおう。

 仕事にも似た意気込みをしつつ、直人はトラックパッドに手を添える。


「あっ、そうだ。洗濯」


 いざ、動かそうとしたところで洗濯の存在を思い出した。入りかけたスイッチが何かに邪魔されるのは、非常に面倒で一瞬、今日は洗濯機を回すを止めようかとも考えたが、晴香にLINEを送った手前、やらないわけにはいかない。


「はぁ……、」


 直人は息を吐いてゆっくりと立ち上がると、洗濯機に向かったのだった。


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