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初彼女持ち新卒SE、入社2日目で理想の美人同期と寝て、恋愛管理系クズになる  作者: Pyayume
第一章「プロトタイプ」

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第6話「【赤】と帰り道」

数分後、真子から短いメッセージが返ってきた。


<もうすぐ駅>


その一言だけで、場所も、誰といるかも書かれていない。


なのに俺は、自然と自身の帰路の改札側へ向いていた。


改札に着くと、改札内の人混みの中に、見覚えのある茶髪が見える。


俺は小走りで改札を通り抜け、「よう。」と端的に声をかけた。


真子振り向いて俺の顔を見ると、「あ。」とだけ声を漏らした。


その時の真子は特に嬉しそうでもなく、かといって迷惑そうでもなく、いつもの温度で笑った。


「ちょうど真子の姿見えたからな……路線一緒だし、帰ろうぜ。」


「いいよー。いい感じに酔って話相手欲しかったとこー。」


真子はそう言いながら、ふらりと一歩こちらへ寄った。


飲み会帰りの熱がまだ残っているのか、白い頬がほんのり赤い。


ゆるく乱れた茶髪からは甘いシャンプーの匂いと、微かにアルコールの香りが混ざって漂ってくる。


普段より少しだけ重たそうな瞼が、どこか潤んで見える。


「んー……なんか今日、人多。めんど。」


眠たそうに呟きながら、真子は人混みを避けるように俺の腕へ軽く肩を寄せる。


その無防備な距離感に、一瞬だけ鼓動が強くなった。


ブラウスの襟元が少しずれていて、浮き出た鎖骨の白さがやけに目につく。


鎖骨の窪みが俺の目を捕えて離さない。


ゲームを真剣にしているよりも、今みたいに気が抜けている方が、妙に色っぽく見えた。


真子本人には、その自覚すら無いのだろう。


「……飲みすぎじゃね?」


「んー。でも楽しかったし。二次会行くほどじゃないけど。」


そう言って真子は小さく笑い、俺の横へ自然に並んだ。


「直樹ん家いく?」


まるで、コンビニ寄るくらいの軽さだった。


そして俺には断る理由が、思いつかない。


「……おっけー。」


電車の中で、真子は眠そうに吊革へ寄りかかり、肩が何度か触れる。


そのたびに、さっきまで久美子と居た時間が、少しずつ別のものに上書きされていく感覚があった。


「ねむ。」


「飲みすぎだろ。」


「直樹も来ればよかったのに。」


「いや、約束あったし。」


「あー、久美子?」


その軽い口調は、責める響きは一切ない。


「……まぁ。」


「ふーん。」


そこで会話は終わる。


興味がないのか、踏み込まないだけなのか分からない。


ただ、その距離感が妙に心地いい。


部屋に着くなり、真子は「つかれたー。」と言って、そのままベッドへ倒れ込んだ。


「スーツ脱げよ。シワになるぞ。」


滑り込んだ時に真子のタイトなスカートの裾が捲れ、中身がちらちらと見える。


真子はそんなことは気にせず、仰向けでスマホをいじり始める。


「ドクペほしー。」


「ほらよ。」


なんと無く買っておいたドクペを冷蔵庫から取り出して渡すと、真子は「さんきゅ。」とだけ言って一口飲んだ。


その無防備さに、視線が引っ張られる。


真子は気づいているのかいないのか、特に隠そうともしない。


「……直樹。」


「ん?」


「見たいなら、なんか言えば?」


笑いながらそう言う真子に、俺は一瞬だけ返答に詰まった。


揶揄われているのだが、不快には感じない。


むしろ、その軽さが楽で、また理性を鈍らせていく。


真子がベッドの上で少しだけ身体をずらす。


「隣くる?」


その言い方には、当たり前かのような軽さが有り、逆に俺の理性を鈍らせる。


久美子の時のように、空気を壊さないようにとか、不安にさせないようにとか、そういう緊張は一切感じない。


真子は何も聞かず、隣に居ることを拒まない。


俺がベッドへ腰を下ろすと、真子は「ん。」とだけ言って身体を寄せてくる。


服越しに伝わる体温と、酒混じりの甘い匂い、それにその無防備さに引っ張られる。


そのまま、俺は右手を真子の後ろに回し、左手でそっと撫で、顔を近づけた。


---


「……あっつ、汗かいた。」


裸の真子は気怠そうにそう呟くと、ベッドの上でスマホを探し始めた。


その姿は、拍子抜けするほど普段通りだった。


恥ずかしがるわけでも、空気を変えるわけでもなく、ゲームを一区切り終えた後みたいな雰囲気でいる。


「シャワー借りるねー。」


そう言って真子は体も隠さぬまま、乱れた髪を手でまとめながら立ち上がった。


俺はベッドに寝転んだまま、ぼんやりと天井を見ると、不思議なくらい気持ちが軽くなっていることに気付いた。


「……久美子とは、ほんと違う。」


失敗したらどうしようという焦りも、期待に応えなきゃという圧迫感もない。


快楽の海に使ったその感覚だけが、妙にはっきり残っていた。


結局、こういう気楽さが大事なんじゃないだろうか。


そんな考えが、頭の中に静かに根を張り始めていた時、テーブルの上でスマホが震えた。


画面には、久美子からの通知。


<今日はありがとう。桜、楽しみだね!>


そのメッセージを見た瞬間、さっきまで一緒にいた久美子の表情が脳裏を過ぎる。


俺は数秒だけ画面を見つめ、そのままスマホを伏せる。


罪悪感が強まったり弱まったり、まして消えたわけじゃない。


ただ、必要な時だけ別の情報へ切り替える感覚に、少しずつ慣れ始めていた。


「返信しないのー?」


ちょうどその時、シャワーを終えた真子が、タオルで雑に髪を拭きながら戻ってきた。


ドライヤーすら面倒なのか、濡れた髪先から小さく水滴が落ちている。


その姿には、色気を出そうとしているわけじゃないのに目を奪われるような、妙な生活感があった。


肩を動かすたびに浮かぶ鎖骨、細い腰にうっすら浮き出る腰骨、呼吸に合わせて薄く動く肋骨に、床へ座った拍子に視界へ入る白いくるぶし。


人によっては痩せすぎなくらいに見えるその肢体に、視線が離れなかった。


真子はそんな俺の視線に気づいているのかいないのか、ベッドへ腰掛けながらスマホを確認している。


再度舐め回すように見ていると、ふと顔を上げた真子と目が合う。


「……なに見てんの。」


「別に。」


「ふーん。」


真子はそう言うだけで、深くは追及してこない。


久美子ならここで何か聞いてきた気がするが、真子のそれ以上触れないという適当さが、妙に心地いい。


その瞬間、スマホの通知欄に残った久美子の名前が一瞬だけ遠く感じ、俺は無意識に画面を閉じる。


真子はそんなこと気にも留めず、「ねむ。」と呟きながら、そのまま俺の肩へ体重を預けてきた。


俺の肩に軽く感じる真子が、少しだけ危険なものに思えた。

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