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初彼女持ち新卒SE、入社2日目で理想の美人同期と寝て、恋愛管理系クズになる  作者: Pyayume
第三章「マルチサイクル」

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第22話「【赤】とドタキャン」

平日昼前の池袋駅前の喫茶店、手元のスマホが放つ冷たい光が、一時間無駄に待機した俺の徒労感を際立たせていた。


<ごめん、寝てた>


真子から届いた、あまりにも短いメッセージは、俺が構築しようとしていた最適化プランを、いとも容易く反故した。


メッセージが来たため、通話ボタンを押すと、5回ほどの呼び出し音で真子が出た。


「……真子?」


『んー……あ、直樹?今起きたんだーよね。まじでごめん。もう帰った?』


電話越しの真子の声には、申し訳なさよりも、深い眠りから引き剥がされたことへの気怠さが混じっている。


「……いや、別に。1時間喫茶店で待ってたから、まだ池袋だけど。」


『そ?今日どうする?今から出るのは、ちょっとダルいかなぁ……昨日先輩達と飲んでて二日酔いっぽいんよね……』


その声を聞きながら、俺はスマホ画面に表示された時刻をぼんやり見つめる。


待機時間は1時間21分、移動時間は往復45分、喫茶店代は720円。


本来なら、この時間には真子とゲームのコラボカフェへ行って昼飯を食べ、そのままカラオケやゲーセンに行ってから、俺の家へと流れる予定だった。


俺の中では既に、今日という一日の処理順序が完成していた。


だが真子は、悪意も無くその予定を崩してくる。


真子の行動原理には、他人の期待値を優先する処理が存在しない気がする。


「……いや、もういい。今から準備して昼食うのも遅いしな。」


『了解ー。じゃ、また今度ね。私はもっかい寝るから、おやすみー。』


ブツッと通信が切れ、今日のためにとった年休が呆気なく幕切れとなった。


喫茶店を出て駅前のベンチに座り直した俺は、人が流れるロータリーを眺める。


不思議と、激しい怒りは湧いてこなかった。


ただ、胸の奥に得体の知れない空白が広がっていくのを感じる。


久美子なら、こんなことは絶対にしないだろうと思う。


俺が予定を入れれば、久美子はそれを最優先事項としてスケジュールに組み込む。


俺が連絡を返せば、その数倍の熱量で安心を返してくる。


久美子は少し気を遣えば管理可能だ。


だが、真子は違う。


誘えば来るし、来たら抱けるし、その中での性的な欲求には抵抗なく応じる。


しかし、来ない時は本当に来ない。


悪意も駆け引きもなく、ただその瞬間の気分という予測不能な変数で動いている。


論理的だと自負していた俺が、制御不能な真子に執着し始めている気がする。


最適化すればするほど、真子から発生するエラーが俺のリソースを食っていく。


「……重症か。」


乾いた笑いが漏れた瞬間、視界の端に如何わしい通りが映り込む。


池袋北口、この辺りに、そういう店が並んでいたことを思い出す。


点在するのは、ピンクと紫が混ざった看板。


普段の俺なら、まず選ばない選択肢だった。


コストが高く、リスクが高く、再現性がなく、関係性も継続しない。


だが今はとにかく、真子で埋められなかった欲望を鎮めたかった。


時間と金を投入すれば、確実に見返りが返ってくる環境。


そのままスマホで、<池袋北口 風俗>と検索する。


情報サイトが並び、煽情的な姿の写真が飛び込んでくる。


「……ふーん……女の子検索……そういうのもあるのか。」


1つの情報サイトに目を付け、そこにあった女の子検索画面から期待する条件を入力する。


<バストサイズ:貧乳(A~Bカップ)、年齢:20代、身長:高め、特徴:明るい、喫煙:無し、出勤状況:即対応可能、最寄駅:池袋>


検索結果には、俺の好みのスレンダーな女性が並ぶ。


その中で、名前も容姿も真子によく似た明るい茶髪の女性が居た。


<

高岡真夏(23)

スレンダー系で可愛さ満点!

ノリのいい明るい雰囲気と、積極性が印象的な女の子!

距離がすぐに縮まって、イチャイチャ甘甘大好き!

>


そのまま予約をしようと思い注意書きを見ると、<初めての方はこちらまでお越しください>との記載を見つけた。


そのままその住所に行くと、怪しげな雑居ビル。


薄暗い階段に、ビルの前には擦れた案内板があり、雑居ビル特有の、埃と煙草が混ざった臭いが鼻を突く。


3階まで上がり、扉横のインターホンを押すと、数秒遅れてロックが外れる。


中は、人一人通れる程度の細くて小さな受付カウンターだけだった。


奥から出てきた無精髭の男が、慣れた口調で言う。


「初めてっすか?」


「……はい。」


「コースどうします?75分か90分が多いですけど。」


料金表を見ると、指名料、入会費、オプションと、細かい追加条件が多く、ソシャゲの課金画面みたいだと思った。


「じゃあ90分で。」


「フリー?指名?」


雑な物言いにざわつきながらも、俺はスマホ画面を見せる。


「この、真夏って子でお願いします。」


「少々お待ちください。」


男が奥へ引っ込み、数十秒後に戻ってくる。


「いけます。ただ、延長できないですけどいいすか?」


「……延長?」


「次予約入ってるんで。人気ある子なんすよ。」


その言葉に、妙な納得感を覚えた。


真子に似た女は、やっぱり需要が高いらしい。


「じゃあ、入会金指名料込み3万円になります。」


俺は言われた通り、財布から札を3枚掴んで男に渡す。


「では、ホテルついたら部屋番号の連絡をお願いします。」


そう言って紙を渡されて店を出ると、昼間だというのに妙に空気が重く感じた。


紙に記載されたホテル名を確認しながら、池袋北口の通りを歩く。


平日の昼間だけあって、スーツ姿のサラリーマン、キャリーケースを引く外国人、制服姿の高校生が多く歩いている。


そんな普通の人混みの中を、自分だけ別のレイヤーに入り込んだみたいな感覚があった。


初めてだから当然緊張するか、と自分に言い聞かせる。


恋愛経験が少ないくせに、風俗だけは平然としている方が不自然だ。


ホテル街へ入ると、人通りが少し減る。


昼間なのに薄暗い路地の雰囲気で、湿度が一気に上がったような感覚に陥る。


どの建物にも、壁面いっぱいに貼られた料金表が並ぶ中、俺はスマホを握りながら指定されたホテルを探した。


途中、カップルらしい男女とすれ違い、無意識に目を逸らしてしまう。


別に違法なことをしているわけじゃないが、妙な後ろめたさだけが消えなかった。


ホテルに入り、休憩利用を告げる。


フロントの店員は慣れた様子で鍵を渡してきた。


エレベーターに乗り、部屋へ入り、ドアを閉めた瞬間、ようやく小さく息を吐く。


その時に、自分が思ったより心拍数が上がっていたことに気づいた。


狭い部屋にベッドが1台、薄暗い照明と壁掛けテレビが目に入る。


初めて来たラブホテルは、どこか埃のような匂いがした。


内装を眺めながら、俺はスマホを取り出し、店に電話をかける。


「先ほど受付した者ですが、502号室に入りました。」


『分かりました。すぐに女の子向かわせます。』


その言葉を聞いた瞬間、急に手持ち無沙汰になった。


何をして待てばいいのか分からない。


テレビを付けるとAVが流れるが、興奮より緊張が勝っている。


落ち着こうとスマホを開き、真子とのトーク画面を、数秒それを見つめ、それから画面を閉じた。


その時、廊下側から小さく足音が聞こえた。


続いて、部屋のドアがドンドンと強めにノックをがされた。


俺が慌ててドアを開くと、明るい女性の声が聞こえた。


「失礼しまーす。待たせちゃったかな?」

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