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すっぴん聖女はイケメン王子に溺愛される ~私以外の女が化粧で劣化した事件~  作者: ネペタ


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発見

 魔の森の最深部……そこには、漆黒の闇から切り離された、ぽっかりと開けた円形の空間。


 その中央に鎮座していたのは、周囲の禍々しい景色から完全に浮き上がった、真っ白な四角い建造物だった。


「……おいおい、嘘だろ。家か、あれ?」


 ヤンバラが大剣を握る手に力を込めながら、信じられないものを見るように呟いた。


 窓も扉も見当たらない、ただの巨大な白い箱のようなその造形物は、間違いなく人工物だった。


 魔力濃度を凝縮したような暗闇を拒絶するように、その建物の周囲だけが不自然なほど澄み切っている。


「こんな死の森のど真ん中に……。あれが魔女の隠れ家で間違いないな」


「ええ……それにしても、とてつもなく強固な結界です。あの白い壁そのものが、極限まで高められた防御障壁になっている」


 シルアレク殿下とティエリーが、鋭い視線で分析する。


 だが、私の目はその白い箱が放つ『光』の性質に釘付けになっていた。


 淡く、優しく、そして周囲の淀んだ魔力をチリチリと焼き焦がすように弾き返している、その清浄な光。


 ……それを、見間違えるはずがない。

 私が毎日、呼吸をするように扱っている力と全く同じものなのだから。


「……これは」


「ラフィナ? どうしたんだい」


「あの白い光……ただの魔力じゃありません。『聖魔力』です」


 私の言葉に、シルアレク殿下とティエリーが弾かれたように顔を上げた。


「聖魔力……!? 馬鹿な!? それじゃ、あの結界は……」


「はい……あれは魔法使いの結界じゃありません。『聖女』が作った結界です」


 私の断言に、その場にいた全員が息を呑んだ。


 世界を狂わせた『見えない魔女』の隠れ家。

 それを守っていたのは、皮肉にも穢れを弾き、人々を救うはずの『聖女の結界』だったのだ。


「一体どういうことだ……。なぜ魔女の拠点に、聖女の結界が張られている!?」


 ヴィノンが混乱したように声を上げた、まさにその時だった。


 ――波紋が広がるように、真っ白な結界の壁の一部が揺らいだ。


「……! 来るぞ、構えろッ!」


 シルアレク殿下の鋭い号令と共に、一斉に武器を構え、ティエリーが魔法陣を展開する。


 私も右手をかざして、結界から出てくる『化け物』の姿を真っ直ぐに睨みつけた。


 光の壁をすり抜けて、ゆっくりと姿を現した人影。


 それを見た瞬間、私の心臓がドクンと大きく跳ね、思考が完全に停止した。



 現れたのは、悍ましい魔物でも、醜く老いた魔女でもなかった。


 身に纏っているのは、神殿の高位聖女が着る純白の法衣。

 透き通るような白い肌に、月光を編み込んだような美しい銀糸の髪。


 それは、どう見ても15歳前後にしか見えない、うら若き少女だった。


 しかし、その顔立ちには見覚えがあった。


(……嘘、でしょ)


 私の心臓が、早鐘のように激しく打ち鳴らされた。


 それは――かつて孤児院で出会い、地獄のような日々から救い出してくれた大聖女。

 あの時の彼女は、20代半ばの落ち着いた大人の女性だった。


 だが、目の前にいる少女は、それよりもずっとずっと若い。


 私がはっきりと彼女を認識できたのは、神殿でカルネア様が大切に飾っていた『一枚の古い写真』を思い出したからだ。


 若き日のカルネア様と肩を並べて笑っていた、聖女になったばかりの日の彼女。

 その写真に写っていた姿と、一寸の狂いもなく完全に一致していたのだ。


 まるで、時を遡ったかのような――若く、見惚れるほど美しく、完成された少女の姿をした『大聖女ユリアリス』が、そこに立っていた。


 なぜ……なぜ、10年以上も前に引退したはずの彼女が、写真の中の15歳の少女の姿のままで、ここにいるのか。


「ユリアリス……様……?」


「……やはり、貴女か。聖女ラフィナ……」


 少女の姿をした大聖女――いや、世界を絶望に突き落とした『美の魔女・ネマ』は、一切の感情を感じさせない、冷たく無表情な目で私を見据え、静かにそう呟いた。


 かつて私を救った恩人であり、世界を狂わせた元凶。


 魔の森の深部で、大聖女ユリアリスであり、魔女ネマである彼女との対峙が幕を開けた。

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