表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すっぴん聖女はイケメン王子に溺愛される ~私以外の女が化粧で劣化した事件~  作者: ネペタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/42

手がかりと活路

 進むにつれて命の危険が増す、魔の森の深部。


 一歩足を踏み出すごとに、魔力濃度が具現化したような深い暗闇が、私たちの結界を蝕んでくるようだった。


 そんな息の詰まる行軍の中、私は結界を展開しながらも、神経を集中させてネマの潜伏先を探索し続けた。


 そんな時――。

 ふと足を止め、右側――正規の獣道から外れた名もなき暗がりの方角へと顔を向けた。


「……ん?」

「どうしたんだい、ラフィナ。何か見えたのか?」


 私がピタリと立ち止まったことで、殿下もすぐに足を止め、警戒するように剣の柄に手をかけた。



 ヴィノンとヤンバラもすかさず周囲に鋭い視線を巡らせる。


 私は小さく首を振り、鼻先で空気を嗅ぐようにクンクンと息を吸い込んだ。


「いえ、見えたわけじゃありません。匂いです」


「匂い?」


「はい。奥へ進むほどに、むせ返る魔力の匂いが濃くなっているはずなんですけど……だからこそ、はっきりと分かるんです」


 私は暗闇の一点を、指先で真っ直ぐに指し示した。


「あっちの方向だけ、不自然に『匂いが薄い』場所があるんです」


 私の言葉に、皆が顔を見合わせた。


「匂いが薄い……? いや、俺にはどこを向いても、同じ腐った酒の匂いしか感じねえぞ?」


「私もです。どの方角も、等しく致死量の魔力が渦巻いているようにしか感知できません」


「本当かい、ラフィナ?」


 ヤンバラが首を振り、ヴィノンが不思議そうに目を細める。

 シルアレク殿下も私の感覚を疑ってはいないものの、自分たちには全く感知できないため、首を傾げていた。


 だが、最後尾で魔力探知を行っていたティエリーは、ハッとしたように顔を上げ、私が指し示した方角を眼鏡の奥の鋭い瞳で凝視した。


「……この深部で、魔力濃度の薄い場所……」


「ティエリー、何か分かるのか?」


「いえ、私にも魔力の『薄さ』そのものは感知できません。ですが……論理的に考えて、この異常な高濃度の魔力空間において、局所的に魔力が薄まる自然現象などあり得ないのです」


 ティエリーは一歩前へ出て、探求者としての熱を帯びた声を発した。


「もし本当に、そこだけ魔力が薄いのだとすれば、理由は一つしかありません。……何者かが、意図的にこの狂った魔力濃度を『上書き』して、別の力でそこだけ環境を隔離しているということです」


 その言葉の意味を理解し、その場にいた全員の間に、ピンと張り詰めた緊張感が走った。


「この深部で、わざわざ空間を隔離して魔力濃度を薄めている場所……まさか」


「ええ……『奴の隠れ家』かもしれません」


 ティエリーの推測に、私は静かに頷いた。


 世界中に呪いの化粧品をばら撒き、この異常な森の奥深くに潜伏している見えない魔女。


 こんな致死量の魔力の中で、いくら魔女とはいえ四六時中生活できるはずがない。

 必ず、安全に息ができる『拠点』を作って身を潜めているはずなのだ。


「……行きましょう。私の嗅覚が、そっちだと言っています」


「分かった。ラフィナの感覚を信じよう」


 殿下が力強く頷き、ヴィノンとヤンバラも無言で武器を構え直して私の前に出た。


 私は自身の『浄化の本能』だけをコンパス代わりとし、獣道すらない禍々しい木々の隙間を縫って、慎重に歩みを進めていった。


 一歩、また一歩と進むごとに、確かに周囲の押し潰すような魔力濃度が、ほんの僅かずつだが和らいでいくのを感じる。


 そして、黒く捻じ曲がった木々のトンネルを抜け、視界がふっと開けた――その瞬間だった。


「なっ……」

「これは……」


 私たちは全員、言葉を失ってその場に立ち尽くした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ