肝試し
辺りに人影も灯りもない暗闇に包まれた山中。
この山は、街のすぐそばにあり
若者の肝試しスポットになっていたが
最近、そこへ立ち入ったものが行方不明になる事案が
相次いで起こったことから、立ち入りを禁止されている
しかし、禁止されているものほど
若者の好奇心を唆るものはない。
それが、自分の身を滅ぼす事を知らずに。
「ねぇ、ちゃんと足元照らしてよー
もし転んで死んだらアンタのこと呪うからねー」
「おまえ、こんなとこで呪うとか言うなよ
ほんとに出てきたらどうすんだってのー」
「ばーか、子供かよ。
お化けなんている訳ねぇだろ」
高校の同級生3人が肝試しに来ていた。
「あ、ちょっと待って、写真撮ろ!
SNSに上げたいからさー」
「いいねー!もし、お化けでも写ってたら万バズだな」
真ん中の女が携帯のうちカメラを起動した。
3人は画角に収まる様に身を寄せる。
「いくよー」
3人は自分の写りを気にして画面に釘付けになっている。
シャッターを切る瞬間、右にいた男が画面から消えた。
2人は躓いてしまったのだろうと思い右に目を向ける
しかし、そこに先程までいたはずの男の姿はない
「ってあれ?」
この時、2人はまだ男が自分達を揶揄って
どこかの木の後ろに隠れていると思っていた。
「ねぇー、そうゆうのだるいから」
「おーい、どこだー」
辺りを探すも、そこに姿は見当たらない。
すると、懐中電灯を持っている男が
写真を撮ろうとしていた場所の足元を照らした。
そこには、確かに3人の足跡があり
自分と女の2人は消えた男を探すために移動し
足跡がそこから続いていたが
消えた男の方はその場の足跡で途絶えていた。
つまり、消えた男はその場から動いていなかったのだ。
そのことに気付き
男は血相を変え、女を連れて下山しようとする
「待ってやばい……逃げるぞ」
「えっ?なんかあった?」
「アイツ、マジで死んだかも」
「はっ?どゆこと?
2人でハメようとしてる?」
「いやマジ冗談抜きでやばい……
早く行くぞ」
強引に男は女の手を引っ張り、その場を急いで離れた。
目の前で何が起きたのか理解できず
只、恐怖という感情のみが男の足を
安全圏まで急かしている。
しかし、暗闇の中で足を取られた女は男の手を離れ
地面へと倒れた。
「痛っ、もう最悪。
ねぇ、もっとゆっくり行こうよ」
女は前方に目を向けるが、そこに男の姿はない。
「あれっ?
ねぇ、もうダルいって!」
悪戯だと思った女は周囲に呼びかける様に声を上げたが
返答はなく、静寂だけが広がった。
事態の深刻さを感じた女は泣きそうな思いを堪え
一刻も早くこの山から出てようと急ぐ。
暫くすると、カチカチという音と共に
灯りが付いたり消えたりとしているのを目にする。
やはり、男たちの悪戯だと確信した女は
呆れたようにそこへ向かう。
「あー、もうダル。
ほんとアンタら――」
目の前にいたのは人間とは明らかに違う形状をした
何かであった。
そいつは、懐中電灯を使って女を意図的に
自分のところへと誘導したのだ。
「あ……待って……誰か助け……」
腰が抜けてしまった女は
這いつくばり何とかその場から逃げようともがく。
しかし、無慈悲にもその何かは危害を加える為に
女へと手を伸ばした。
「あ……あっ……」
触れる直前でその間を割って入る様にマスクの男が現れ
その手を切断した。
「あっあっ……切ら……れた」
行方不明が相次いでいたことから
ダイはこの場の調査の為に来ており
偶然、居合わせたのだ。
「やっぱり、【イーバヤ星人】の仕業か」
「お、お前、は、マスクの男……」
「戦う前に一つだけ教えてくれ。
お前の仲間にノノって奴がいるだろ?
そいつの居場所を教えてくれ」
「そ、それは、断る」
そう言い、暗闇の中へと姿が消える。
逃げたと思ったが、辺りからは殺気が滲み出ていた。
「そこの人、俺から離れないで」
辺りを警戒するが、辺りには何も居ない。
山の中は不気味な静寂に包まれ、緊張を誘った。
固唾を飲み込む瞬間――
視界の端の草木が揺らいだのを確認し
防御の姿勢をとった。
案の定、その方角から見えない何かによって攻撃され
木に押し付けられるダイ。
「そうか、コイツ……透明になれるのか……」
現在、ダイが相対している【イーバヤ星人】の能力は
透明化であった。
防御するダイを押し潰そうとする力は木を折る勢いだ。
「お、お前を、このまま、圧死させる」
ダイはこの状況でも冷静だった。
木との僅かな隙間を利用し、足場を作り強く踏み込んだ。
僅かに押し出し、その隙に背後へと移動する。
【イーバヤ星人】は押しつぶす勢いで前傾していた為
木に頭をぶつけて怯んでいる。
頭をぶつけた箇所にヒビが入った事で
大まかな心臓の位置を特定し、背中から心臓へと刀を突き刺した。
「お、俺が、負け、た。何故、だ」
「ふぅ、危なかった。
お前、透明になれるのに相手と接触しすぎなんだよ
それじゃあ、透明になっても意味ねえじゃん」
「うぅ、クソ……」
ダイは勝利を収めたものの
ノノの居場所を聞き出すことができなかった。
「また駄目か……」
そう独り言を呟き
肝試しに来ていた女を助けるのであった。




