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お師匠様はお留守です!  作者: 瀬名 杏子
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デッセ商会 VS バザール商会

デッセ商会の王都の新店舗の開店は、バザール商会のラーグル二号店の開店と重なった為、開店前から話題を集めていた。


大方の予想では、機動力があるバザール商会がかなり値引きして客を集め、ラーグル一のデッセ商会でも苦戦を強いられると考えられていた。


「あ~、もうチョコチップ入りクッキーが無くなってしまった~。」


「あっと言う間に無くなったわね。」


「レイア、どうしたらいい?二日めに配る予定のクッキーを配る?それとも、キャンディでもラッピングして配る?」


「初日に話題になった方がいいから、二日めの分を配ったら、どうかしら?」


「そうだね!そうするよ。」


僕は、レイアの横に置いた椅子の上から、残念そうにロベールを見上げる。


恋占い担当のレイアの背後に衝立を置いて、目立たないように護衛のエヴァンが控えている。


ジェニーが、僕の為にクッションを持って来てくれた。


ジェニーは、なかなか気遣いも出来るし、会計にもあかるいから、ロベールの補佐役にはもってこいの人材だと思う。


ロベールは、もっとしっかりしたデッセ商会の後継者に見えたけど、大丈夫かなぁ?


「次のお客様よろしいですか?」


「はい、お願いします。」


丸顔の可愛らしい女の子が、こちらに向かって歩いて来る。


「まあ、可愛い猫。触ってもいいですか?」


「ニャア~。」


猫好きのお客さんには愛想を振る。


僕は、サービス担当なのである。






「恋する乙女フェア」を開催中のカフェで恋占いも宣伝したせいか、しばらくすると行列が出来た。


レイアは、整理券を出すと配布を従業員に頼む。


整理券作ってたんだ~!そんなにお客さんが来る自信があったんだね。


「備えあれば憂いなしよ、ライアンの日頃の教えを忠実に守ったの。」


非常時に備えて食料や薬草を備蓄してるけどね…。


「整理券があれば、店内を見て回って時間を潰せるからいいじゃないか?」


エヴァンは、窓から外の様子を伺っている。


うん、商品をお買い上げして貰えたら一石二鳥だね。


僕もエヴァンも、実は新店がそんなに忙しくなると思っていなかった。


お客さんが増えて忙しくなったので、ジェニーもエプロンをつけて店に出て、接客を始めた。


店内は活気に溢れている。





「ロベールさん、大変です。」


「どうした?」


「子供連れのお客様が『クッキーはもうないのか?』と店先で騒いでいます。」


「ちゃんと説明したのか?」


「ええ、説明しましたが、少し酔ってらっしゃるようで?」


「子供連れで昼間から酒か?まさか、バザール商会の嫌がらせじゃないだろうな?」


エヴァンがロベールより、先に小走りで出て行く。


ちょうど、レイアは小休憩を取っていたので、僕とレイアも外に出る。


エヴァンが、男児連れの厳つい男に近づいて行く。


エヴァンより、身長も高いし傭兵みたいな体格をしている。


「なんだ、お前は?」


帯剣しているエヴァンを見て、表情を変えている。


エヴァンは、男児の前で屈むと目線の高さを合わせてから、クッキーを差し出した。


「俺が貰った分だけど、どうぞ。」


「いいの?」


目をまん丸にして、差し出されたクッキーを見ている。


「ああ。」


「ありがとう。」


男児がにっこり笑う。


「ちゃんとご飯も食べるんだぞ。」


「うん!」


「すまないな、気を使わせちまって。」


「いや、この子に食べて貰った方が作り手も喜ぶだろ。」


「良かったな。」


男児の頭を手荒に撫でている。


「騒いで悪かった。こいつが楽しみにしてたもんで、つい?」


毒気を抜かれたのか、従業員に謝っている。


朝、エヴァンがロベールからクッキーを貰っていたことを思い出した。


僕の分もあったはずだ。


エヴァンは、レイアとジェニーに一方的に押されて流されているロベールにいたく同情しているらしい?


そして、ロベールも多くを語らなくても心情を理解してくれるエヴァンに気を許している。


平和に解決して良かったけど…?


「クッキーが欲しかったのか、それともお父さんとお出かけしたかったのか?」


「どっちかしらね?」


レイアとジェニーは、冷静に分析していた。







ランチはロベールとジェニーに時間を合わせて、2時過ぎになった。


お腹空いたよ~。


「店が忙しくなった時の為に、近くの食堂に軽食を頼んでおいて良かったわね、ジェニー。」


「本当にレイアの助言のおかげで助かりました。」


「危うく食いっぱぐれるところだった。レイア、ありがとう。」


ロベールが、短期間で一回り小さくなっているような…?


卵やハムのサンドイッチ、ホットドッグやポテトサラダが用意してある。


エヴァン、ホットドッグにマスタードつけ過ぎだよ。


「いつもより、食事がおいしく感じるな。」


ロベールは、朝から走り回ってたからだね。


「ロベール、バザール商会の様子を見に行かなくていいの?」


「父の部下から報告はあったよ。」


「実際に自分の目で見た方がいいんじゃない?対策も立てやすいし、ロベールは一従業員ではなくて経営陣の一人なんだから?」


レイア、やけに力入ってるね。


「私もその方がいいと思う。」


ジェニーも同意する。


「俺のマントは貸せないけど、変装した方がいいぞ。」


「メガネと帽子と前髪は少し崩して…ジェニーも一緒に行ったら?」


「そうだな、新婚夫婦を装って買い物して来い。」


目的はそっち?


デート、デートなの?


「いや、ただでさえ忙しいのに二人も抜けるのはまずい。俺一人で行って、なるべく早く帰って来るよ!」


レイア、手に持ったサンドイッチが変形してるよ。


レイアのおデート作戦は、残念ながら空振りしてしまった。


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