好奇心には勝てなくて!
短いです!
「さあ、買い出しに行きましょうか?」
「買い出し?今日はサーモンの蒸し焼きじゃなかったの?」
さっき、ガギの葉洗ってたよね?
サーモンとキノコや野菜を、塩こしょうして、白ワインを振ってレモンを絞って、ガギの葉に包んで蒸し焼きにする。
ガギの葉には殺菌作用もあるし、ガギの葉の香りが移って、簡単な料理にしてはおいしいのだ。
「他に買いたい物があるの。エヴァン、トートバッグを取って!」
アリシア特製のトートバッグには、可愛いクマの顔のアップリケが左右に3個ずつ付いている。
僕は、レイアが外出する時は、このトートバッグに入って、アップリケをずらして、中から外を見ている。
普通にトートバッグから顔を出してもいいけど、子供達が寄って来たり、僕は悪さをしたりしないけど、猫連れは食料品店やレストランでは敬遠されるのだ。
レイアに促されるままにトートバッグの中に入る。
「レイア、エヴァンが一緒でも厳重に結界を張らないと駄目だよ。」
「美白薬を作るのに魔力の調整が難しくって、集中していたら、いつの間にか結界に綻びが出来てたわ。」
「美白薬は高価だが、効果が個人差があるから、あんまり売りたくない。」
「アリシアもレイアも美白薬は必要ないよね?」
「さ来月は花盛月だから、結婚するカップルが多いのよ。綺麗になりたい花嫁に美白薬を売りつけたいと思って!」
ラーグル国では花盛月に結婚するカップルは幸せになれると古代から言い伝えがある。
「とりあえず、カミーユ姉様に試験者になって貰う予定なの。」
黒薔薇の魔女アリシアと天空の魔女カミーユは仲が良い。
青みがかった黒髪のカミーユは、南国生まれだ。
「あの健康的な小麦色の肌は、カミーユの魅力の1つだと思うよ!」
「カミーユはあの厳ついゴンドスの将軍とはどうなったんだ?」
「半年もったら、結婚するらしい?」
「半年もつのか?」
「さあ?」
「カミーユは、移り気だから~。」
僕にも、フォローが出来ない案件だ。
「寂しがり屋の移り気な美女って、罪深いな!」
ゴンドスの鬼神と呼ばれる将軍が、まさかカミーユに骨抜きにされるとは思わなかった。
レイアは、寄り道せずにデッセ商会に向かった。
商品を手に取りながら、キョロキョロしている。
「レイア、怪しいよ。」
レイアは、如何にも怪しげな黒のマントではなく、刺繍入りのお尻が隠れるくらいの丈の茶色のマントを着ている。
合わせる服で少年でも少女でも通用する。
人相は悪いけど可愛いモノが大好きなアリシアが、選んだ服だ。
「デッセ商会の息子さんがいないかと思って?」
「支払いのカウンターのところにいるかも?」
「そうね!」
カウンターの方に歩いて行くと、ハニーブラウンの短髪の好青年が目に入った。
身なりもいいし、人当たりも良さそうだ。
「アレがジェニーの幼馴染ね!モテそうだわ。」
「アレって酷い!」
「デッセ商会の一人息子は優良物件だから、きっとモテモテだよ。でも、エヴァンには負けるかな?」
「エヴァンみたいな超絶美形より、中のやや上の方が話しかけやすいから、幅広くモテそう?」
「中のやや上って、言いたい放題だな。」
鳶色の髪に意思の強そうな琥珀色の瞳、エヴァンの端整な顔立ちは女性の気を引き寄せて止まない。
但し本人は、その価値を正しく理解していない。
エヴァン、君も十分罪深いよ。
「買い物済ませて早く帰ろう。」
「ねえ、あのショール、お師匠様に似合うと思わない?」
レイアは銀色のショールを指差した。
「そういえば、レイアはジェニーの前では、アリシアのことをお師匠様と一度も呼ばなかったね。」
「たいした魔力もないし、ひよっこの魔女見習いなんて、恥ずかしくて言えないわ。」
アリシアやカミーユと比較するのは、間違いだよ。
レイアは、赤ん坊の頃に朽ち果てた教会の前に置き去りにされていた。
教会は別の場所に移転して、取り壊しが決まって無人だった。
あの日のことは、忘れない。
初雪の降った早朝、どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえて、アリシアも僕も目が覚めた。
アリシアより先に僕が外に出て、赤ん坊を見つけた時には、ホッとした。
話しかけるとニコニコ笑う可愛い赤ん坊。
子育てに悪戦苦闘したけど、こんなに大きくなって、可愛くなって感無量。
「この銀色と乳白色、どちらがいいかしら?」
僕が感慨にふけっている間も買い物は続いていたらしい?
「銀色がアリシアで、乳白色がレイアだね。色違いで買えば?」
「そうね~、そうしようかな?」
「無駄遣いしていいのか?」
「今月は食費を節約したから、大丈夫!」
品数減らしたのは、手抜きじゃなくて節約だったのか?
「レイア、まだ成長期なんだから食費の節約は止めよう!」
「香水の売り上げ、早めに渡そうか?」
エヴァンは細いけど、結構食べる。
食事を減らされたら、辛いだろう?
「困った時はお願いします。」
そんなに切り詰めさせているわけではないが、浪費をさせてもいけないと思って厳しく管理している。
こんなに面倒見のいい使い魔は珍しいと自分でも思う。
銀色と乳白色のショールと果物とチーズを買ってその日は帰った。




