継ぎ接ぎ男
「はぁ……やっぱり楽しいなぁ、人殺しは」
継ぎ接ぎの男は、転がる死体を見下ろしながら呟いた。
「神代恒一……有名だねぇ」
袖をめくる。焼け焦げた皮膚。縫合跡。
「君のおかげで傷だらけだよ。覚醒したてで助かった。出力も甘い。……死にかけたけどね」
喉の奥で笑う。
「でもいい。魔法の核心が、少し見えた」
背後で足音。
「何してるんだ?……殺人現場かよ」
振り返る。
そこに立っていた男は、雷鳴のような静けさを纏っていた。
「君は?」
「僕はフリーデンの一人。黒崎雷堂だ」
わずかに空気が震える。
「……あぁ。神代恒一と同じ匂いがする」
その瞬間。
雷が落ちた。
轟音。地面が砕ける。
だが継ぎ接ぎ男は横に跳んでいた。
落雷には、ほんの僅かな“溜め”がある。
「へぇ……」
「試しただけだ」
雷堂は一歩踏み出す。
継ぎ接ぎ男が距離を詰める。
ナイフが閃いた。
雷堂は腕で受け、反撃に移ろうとする――
嫌な予感。
咄嗟に踏み込みを止め、身を捻る。
「正解。僕のナイフ、出血を増幅する術式を刻んでる。かすり傷でも危ないよ?それにしても反応から回避が早い何かしらで身体強化してるね」
「察しがいいね」
間合いが詰まる。
だが次の瞬間、継ぎ接ぎ男は後退した。
雷堂の視線が鋭くなる。
(落雷を恐れるなら近接を維持するはずだ)
右手に雷光が集まりかけ――止める。
舌打ち。
「気づいた?」
継ぎ接ぎ男の腕には、怯える女性が抱えられていた。
「流石に一般人を巻き込むわけにはいかないでしょ?」
雷は消える。
次の瞬間、男は人混みに女性を投げ捨て、煙のように姿を消した。
静寂。
雷堂は、焦げた地面を見つめたまま動かない。




