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勝ち目の無い戦い
神谷禅の死守。これが戦いを成立させる唯一の手段だった。
フリーデンのメンバーが攻撃を当てられるのは、ヘイトが神谷禅に集中しているためだ。最低でも五メートル以上離れなければ、魔力の放出は避けられない。
綾瀬詩織もそれを理解していた。
超契約は、神谷禅を守るとき以外には使用しない。
凪はメンタル・ブレイクを発動していたが、今のところ大魔王の動きを一瞬止める程度に留まっている。
精神に干渉する魔力は多すぎた。
人類全体の恐怖を束ねた存在に対し、個人の精神操作は焼け石に水に近い。
凪はプランBを実行するしかないと判断した。
しかし、このままでは仕留めきれずに終わる可能性が高かった。
恐怖を守る魔力が厚すぎる。
そして、先ほどから自身も強く警戒されていることを自覚していた。
恐らく神谷禅を仕留めた後、恐怖の大魔王は真っ先に凪を殺しに来るだろう。
神谷禅も何度か致命傷に近い状態まで追い込まれていた。
対して恐怖の大魔王には急所が存在しない。
受けたダメージは魔力によって再構築される。
回復ではない。壊れた部分を、魔力の構成で組み直しているだけだった。
恐怖の大魔王は、攻撃を受けても動きが変わらない。
怒らない。
焦らない。
戦況は、明らかに分が悪い。




