突然の因縁の終了
「今日も順調だねぇ…人殺しは」
継ぎ接ぎ男が、地面に転がる死体を見下ろしながら呟く。
「それは困るね」
背後から冷たい声。
「誰?」
振り返ると、そこに立っていたのは神谷禅。
白い影のように静かで、しかし空気が重い。
――雰囲気だけで、強いと直感する。
「フリーデン?」
「元ね、今は違うよ。君さぁ、信者を殺しすぎだ。流石に私が出るしかない」
継ぎ接ぎ男の唇が吊り上がる。楽しげな笑み。
「戦うのね。逃げるけど」
足先で地面に触れる。
コンクリートが蠢き、二人の周囲を壁で囲う。
冷たい、鉄の匂いが混じった空気。
「……やられたね。殺すしか無いか」
継ぎ接ぎ男はナイフを構える。
刃に刻まれた術式が光り、刺さるだけで出血が増幅される。
投げたナイフは禅の変形魔法によって空中で軌道を変えられた。
壁が動き、床が盛り上がり、刃はぎりぎりのところで逸れる。
「へぇ…変形魔法、便利だね」
継ぎ接ぎ男が笑う。
「試しただけだ」
禅の冷静な声。
床に触れた瞬間、コンクリートが蠢き、ナイフを受け止めつつ継ぎ接ぎ男の動きを制限する。
間合いを詰める継ぎ接ぎ男に、禅は壁を変形させ、攻撃の軌道を操る。
避けた先には空いた地面。
サブのナイフを構える手に痛みが走る。
「……ふん、やるな」
一撃でも入れれば勝ちだ――リスクはあるが。
接近する。壁から針が飛び出す――選択は一つ。
避けない。
横腹を刺され重傷を負うが、継ぎ接ぎ男は反撃に転じ、胸を切り裂き多量出血を引き起こす。
「へぇ…やるねぇ」
神谷禅は出血でよろめきながら、自分に触れて変形で傷を癒す。
しかしその隙に、継ぎ接ぎ男は疲れながら壁をよじ登り、逃走に成功する。
瀕死だが、まだ生きている――強敵からの逃走ゆえの当然の油断。
その隙を突き、偶然か必然か、人殺しの現場を読み配置された九条玲奈が現れ、肩に手を置く。
「まさか、瀕死の所に会うなんて貴方、災難ね」
神代恒一が付けた手傷を再現するように、過去に切り刻まれた傷が甦る。
「…終わりだね」
出血が止まらず、継ぎ接ぎ男は膝をつき、煙のように地面に沈む。
戦場には、ただ戦いの余韻と血の匂いだけが漂っていた。




