更なる裏切り
「眠そうですね」
「仕事が無いものでな……白峰透花か。どうした」
「綾瀬詩織さんのこと、どう思います?」
「共感はできる。だが魔法が規制されている以上、仕方ない」
「どうして規制されると思います?」
「平和な国で一般人が熊になったり、銃を持つようなものだ。当たり前だろ。なぜそんなことを聞く」
「私たちは使えてますよね? 差別だと思う人もいるんじゃないですか」
「……詩織と同じ意見か? 聞かれていたらどうする」
「彼女とは仲が良かったもので。聞かれても、フリーデンと敵対したいとは思いません」
「強いから有効活用しろ、って理屈か」
「強ければ許される。弱ければ縛られる。理不尽だと思いませんか?」
「何が言いたい」
次の瞬間、視界が歪む。
台風を纏った拳。
紙一重で躱す。
「フリーデンから裏切り者が二人も出るとはな」
「悪いですか?」
「最悪だ。詩織と組まれたら厄介だ。……だからここで潰す」
手首を裂き、血を弾く。
斬撃が空を裂く。
だが風が軌道を逸らす。
厄介だな、精霊使い。
透花の周囲で空気が唸る。
心臓の鼓動に合わせて圧縮された風圧。
台風を内側に飼っている。
踏み込み。
拳に暴風を乗せ、撃ち出す。
受けきれない。
骨が軋む。
だが止まらない。
血の斬撃を連射する。
手数で押し潰す。
「格闘術も斬撃もお見事です。最初で一人潰したかったのですが」
拳と斬撃が交差する。
衝撃。
視界が白くなる。
俺は壁に叩きつけられ、右腕が折れる。
透花は肩を裂かれ、血を流している。
……互角か。
「逃げますね」
「逃がすか」
斬撃を放つ。
だが速い。
窓を破り、三階から飛び降りる。
慌てて覗く。
着地の瞬間、風が衝撃を殺している。
「……逃がしたか」
右腕が痛む。
「報告だな。怒られるのは御免なんだが」




