スキュラとアンフィトリテ
71話目になりますわ。姫路城に織り立つったリン達…そこには、スキュラに呪いをかけた、アンフィトリテがいた。激怒するスキュラ!戦いからは…逃れられない状況になりました。
遠い昔…忌まわしい事件…
月は低く、海は鏡のように静まり返っていた。
深き蒼の宮殿――海の女王 アンフィトリテ は、珊瑚の玉座に腰掛けながら、遠くの水流のざわめきを感じ取っていた。
その気配は、ただの潮ではない。
誰かの“想い”が、海を乱している。
それは――
美しき海のニンフ、スキュラ。
かつては、月光に照らされる白き岩辺で、静かに歌う乙女だった。
だが今、その姿はもうない。
海底の神殿に、一人の使者がひざまずく。
「女王よ……あの者は、もはや元の姿には戻れませぬ」
アンフィトリテの瞳が、ゆっくりと閉じられる。
それは怒りか、それとも――後悔か。
彼女は知っていた。
海神 ポセイドン が、あのニンフに心を寄せていたことを。
そして同時に――
自らの胸に、静かに芽生えた“嫉妬”の存在を。
その日、スキュラはただ、海辺で水に足を浸していただけだった。
透明な水は、彼女の白い足首を優しく包み、
小魚たちは、戯れるように彼女の影を追っていた。
だが、その水は――変わった。
ぬるり、と。
違和感に気づいた時には遅かった。
水面が泡立ち、黒く濁り、
彼女の足元から“何か”が生まれる。
それは、牙を持つ異形の頭。
一つ、二つ、三つ――
次々に現れ、彼女の身体に絡みつく。
「……いや……いやぁ……!」
叫びは、波に飲まれた。
白かった肌は裂け、
優雅だった肢体は歪み、
美しい声は、獣の咆哮へと変わる。
それは呪い。
そして――
女王の、ほんの一瞬の心の揺らぎが生んだ“報い”。
深海の宮殿で、アンフィトリテは静かに立ち上がる。
「……私は、海を守る者」
その声は冷たい。
だが、その奥には確かに揺れるものがあった。
「だが……あの子は……」
言葉は、最後まで紡がれなかった。
海は全てを包み、
そして全てを沈める。
後悔も、愛も、嫉妬も――
やがて、海峡に怪物が現れるようになる。
六つの頭を持ち、
無数の牙で船乗りを喰らう存在。
それが、かつて“スキュラ”と呼ばれた少女だと、
知る者はもういない。
ただ一人を除いて。
深海の奥で、女王は時折、遠くを見つめる。
その瞳に映るのは、
静かな海ではなく――
二度と戻らぬ、ひとりの少女の姿。
「嫉妬のあまり…呪いを…あの怪物が…彼女がスキュラ?…」
カリテイモがキルケー=アンフィトリテを見つめる。
「あの時の私は、どうかしていたのです。アターナー様…お許し下さい。スキュラ…本当に申し訳ありませんでした。本当にごめんなさい…」キルケー、アンフィトリテは泣きじゃくっている。
「…嫉妬…嫉妬か…キルケー…」カリテイモが呟く。
「リン殿、女の嫉妬と聞いて…確かに醜い物ですね…でも…我慢すれば…女だけが、我慢??冗談でしょ。その矛先がスキュラさんに向いた事は、私からも謝罪します。あさはかですね。スキュラさんの気持ちも考えて許される事ではありません。でも、でもですね…私は釈然としません!納得出来ません!もし、リン殿がポセイドンを殺していたのなら…私も納得します?どうなんですか??リン殿?」カリテイモがリンに詰め寄る。
「あっあっ…それは…」リンは、後ずさる。
「何故?女の中で完結するのですか?キルケーが、やってしまった行為は許されません…キルケーは罰せられるはずです。でも、元凶は?リン殿、キルケーが嫉妬する元凶は、女だけが罪だと?答えて下さい。女だけが咎人ですか?」
「黙れ…女!私の失われた時間を、貴女は、戻せるのか…?怪物と忌み嫌われ…蔑まれ…疎まれた時間をお前が返せるのか!アンフィトリテに戻せるのか?アターナー様達がいなかったら…私は、どうなっていたか…女よ!私の気持ちが解るか?女としてだ!」スキュラがカリテイモを睨んだ。
「それを…慮る事は、出来ません。ただ、あなたは、怪物に変えられた。でも、リン殿達のお陰で、心は怪物にならずに済んだ。キルケーは、姿は人間でも、心は怪物のままだった。グライアイの追跡に怯えて、かつての女王の地位も失い、犯され、凌辱され、慰み者になり、路頭に迷っていた。ここは、スキュラさん、貴女とは逆ね…」カリテイモが言った。
「私の話しをしましょうか?私は、高台院寧々…普段はカリテイモと呼ばれているわ…私も貴女と同じ、怪物よ…鬼子母神として、多くの人間…いえ、子供を食べたわ…自分にも子供がいたのにね…ある日、自分の子供がさらわれ、子を失う母の気持ちを諭された。私は変わった。子を守る存在になった。知っての通り、私は子供を作れない…なので、家臣の子供を預かり…大切に育てた。アハハハ…これは?呪い?因果?でも私は、幸せだったわ………半分ね」
「そこからは、知っての通り…スキュラさん?私は毎日…嫉妬している。巴様を愛しているわ…でも、豊臣秀吉は……今は、お市様に夢中よ、顔まで作って…」カリテイモは、ため息をついた。
「そして、キルケー…彼女は、孝蔵主は、生涯独身よ…アハハハこれも呪いかしら…彼女は、生涯、私に尽くしてくれた。」カリテイモが一気に語る。
「アハハハ…人生相談か?そんな理屈で、納得するとでも?貴女の人生を押し付けるな…貴女は貴女…私は私だ。私は私の人生の話しをしてるのだ…」スキュラが凄む…
「アハハハ…違うわ…私達は似たもの同士って言いたい訳…嫉妬と、妬み、哀れみ、悔恨、憎しみ、怨み…そして愛…嫉妬の対象になって外道に堕ちたけど…救われて…今…そんな可愛い女の娘に生まれ変わったスキュラ。 私は、愛ゆえに外道を彷徨って、救救われててはいるけど…今でも、嫉妬と、欲望に囚われ続ける私。妬みが身を滅ぼし、底辺を歩き続けた女、アンフィトリテ…!」
「笑止!算盤ずくで感情は測れぬぞ、」
スキュラは、笑っている。
「もう結構です。カリテイモ様…スキュラさん、貴女の納得するように、貴女が戦いを望むなら…………相手をします。」キルケー、アンフィトリテは声を上げた。
「アターナー姉様、キルケー?アンフィトリテってどっちが本当の名前なんですか?って言うか?キルケーってなんですか?」アシュラが耳打ちした。
「キャンディを怪物に変えたのは、アンフィトリテよ…でも、こんな話があるの…キルケーは、嫉妬の魔女…ある物語では、海神グラウコスは、スキュラに恋をしたのよ、でも、スキュラは拒否したの、困ったグラウコスは、魔法使いキルケーに恋の魔法をかけるように命令する。でも、キルケーは、グラウコスに恋をしてしまうの、嫉妬に狂ったキルケーは、水浴びをしているスキュラに、呪いの水を混ぜる…その水でスキュラは、怪物になってしまう…」リンは、淡々と語った。
「キルケー は、 恋の嫉妬で壊す“魔女の狂気。アンフィトリテ は、王妃としての嫉妬と制裁」アイリスが後から呟いた。
「アンフィトリテは、自分の罪を全身で受ける為に、あえて…キルケーと名乗ったのかもね…自責?悔恨?業?あえて背負うのか…悲しい女ね…強い女かな?」ヴァネッサが言った。
「さて…スキュラさん!!殺りましょうか?」キルケーは、構えた。
「はてさて、私が、カリテイモ殿の話しを聞いて、手加減するとでも?アンフィトリテ?キルケーならまだしも…貴女が…私に?おこがましい!」キャンディは、拳を差し出した。
「水陣!術式展開…!!!」アンフィトリテが詠唱をした。
回りの空気が変わる。大気は、流れ…その厚みを増していく…
「??水??海流?」リンが目を見張る!
「住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ」アンフィトリテは、呟いた。
「アハハハ!切ない恋か…」キャンディがアンフィトリテを見つめる。
「残念だか…お前のせいで、私は、恋を知らぬ…私が海だ!海を統べる海獣スキュラだ!大いなる力を受けよ!」キャンディは、咆哮する。
「わたつみの 豊旗雲に 入日さし 今夜の月夜 さやけかりこそ」…キャンディは呟く…
咆哮と共に、キャンディの拳がアンフィトリテを襲った。
バシュゥゥーー!固まった水陣を貫き…巨大な拳がアンフィトリテを捕らえた。
「うげぇぇぇぇぇ!」アンフィトリテは、血を吐き、もんどり打って壁に叩きつけられた。「うっうっ…」!!
「まだまだぁ!楽に死ねると思うなぁ!」キャンディは、連続で拳を繰り出す!
「あがぁぁぁ~…」アンフィトリテは血を吐いた。顔は潰れ…胸からは、あばら骨が飛び出る。
「こっこっれで…私は、救われる…本当にごめんなさい…スキュラ…カリテイモ様…お先に行きます。ありがとう御座いました。」血の涙を流しながら…アンフィトリテは、両手を広げた。
「とどめだ!アンフィトリテ!喰らえ!」
巨大な犬?竜?怪物が三匹…アンフィトリテを捕らえた………!かに見えてた。
「ん?何故だ…届かない?何故?アンフィトリテェ何をしたぁ!」
「えっ!何故?スキュラ?何故止めるの?」
「キャンディ…もう無理よ!この世界では、自殺は出来ないの…アンフィトリテは、自ら命を差し出した。自決をのぞんだ…有り得ない胆力…その覚悟…見事ね…もう死を受け入れた彼女に攻撃は届かない…」
「アンフィトリテ?自殺は無理よ…でも…けじめは頂戴…」
リンが目を伏せた。
「如何様にでも…アターナー様………」
リンが手を振り下ろす…
「ウギャーーーァァ!」
アンフィトリテの左腕が床に堕ちた。
「アターナー様…ありがとう御座います。」
「アンフィトリテ…自決とは…その覚悟…いや、良い…良いわ…なんとも…筆舌に尽くしがたい!」
「アリエス、ヴァネッサ…止血…治療…」リンが言った。
「アターナー殿…私が…」カリテイモがアンフィトリテに近づく。
「カリテイモ殿は、治癒が出来るのか?」リンがカリテイモの腕から出る光を見つめていた。
「えぇ…って言うか、分離遠隔移動と、治癒だけです。」カリテイモが、笑った。
「……分離遠隔移動…ですか?」リンがカリテイモを見る…
「アンフィトリテ?貴様…グライアイになる気はあるか?…さらに、カリテイモ殿、サカラ殿…各々、徳川と誼を結ぶつもりはないか?」リンがキルケー達を見つめた。
「……………天下布武の為に?」サカラが聞いた。
「厭離穢土 欣求浄土の為よ……サカラ…人生は重き荷を背負うて…遠き道を行くが如し……私もそう思っている。あなたもそう思うでしょアンフィトリテ?私もそうだから」リンは微笑んでいる。
「アターナー姉様…グライアイの名前を頂ければ…いえ…下賜して頂きたくおもいます。」キルケーは、平伏した。
「キルケー…あなたに新たな名前を与えます。カリテイモの為に生き、徳川の為につくしなさい。アンフィトリテ ネーレウス…これが、あなたの新しい名前です。新たな海の女王よ!新たな力を!!」
「ははぁ…」アンフィトリテは、平伏した。
……「アターナー姉様…こっこれは、傷が…そして腕が…」アンフィトリテは驚愕した。
「腕とは?何…キルケー…いえ…アンフィトリテ?私には片腕にしか見えないけど…」
カリテイモが言う。
「アハハハ…腕が生えた訳ではないわよ…気なの…あなたの新たな生気が…腕の様な物を作り上げている。なかなか便利でしょ…寝ちゃうと消えるけどね…アハハ…グライアイの仲間には見える…気で練り上げられた左腕が…」
「アターナー様…私にも名を頂けません…か?」サカラが声を上げた。
「私は、天下の為にこの命を捧げたい。そして、カリテイモ様の刀として生きて行きたいです。」サカラはリンを見つめた。
「高虎…あなたの願い…聞きどどけましょう…」
「藤堂高虎…貴方に新たな名を与えます。
サカラ クリューサーオールです。その名前は、黄金の剣を持つ者!カリテイモの刃として…天下の為にその命を使いなさい。」リンは、サカラを見つめた。
「こっこれは…この世界は…見える…なんだこの視界は…」サカラが驚く。
「多分…貴方には、貴方の周り全てが見える目を与えました。距離を正確に測れるはずです。」リンが言った。
…サカラの目は、360度を見渡せる天網眼となっていた。
「さて…カリテイモ殿?どうされますか?」
「負けました。アターナー姉様…グライアイに忠誠を誓います。」カリテイモは平伏した。
「カリテイモ…貴方に新たな名前を与えます。貴女は、カリテイモ アエローです。グライアイに忠誠を誓い…天下の為にその、身を捧げなさい。その名前の通り…嵐の足を持つ者、分離遠隔移動に攻撃を加えました。範囲は決まっていますが…遠くの敵に雷撃を与えられます…雷撃眼よ」
「我ら、グライアイに永遠の誓いをさ捧げます。」三人はリンに平伏した。
「クリューサーオールお兄ちゃん?」
少女に戻ったキャンディは、サカラを見つめた。
「アハハ…そうだね…お兄ちゃんだ!アハハアハハ!ネーレウス聞いたか?!アハハ…」
「さて…カリテイモ…エキドナだが…シトクと言う奴に捕らえられて…有岡城に幽閉されている。エナ軍がエキドナ奪還に動いているわ。武田には、アヴァロー殿が向かっている。我々は、蘇ったカリュブディスの足取りを追っているの、多分、武田と合流するはすよ!それを見極めて、プシケに一端帰還するわ…この事、巴殿にも伝えて…後顧の憂いを取り除いたら…メビロス島に侵攻すると思う。」
「リン殿…私達もカリュブディス探索を手伝います。」カリテイモがリンを見つめる。
「了解したわ…」リンが頷く。
「エキドナは、もうすで捕らえられて…いたかのか!」サカラは、地団駄を踏む。
「カリテイモ様。いえネーレウス様…今日は、皆で飲みましょう…明日からのカリュブディス捜索に備えて、」アンフィトリテは、全員をみた。
「おいおい!酒か?良いのか?良いのか?クリューサーオール兄様!」ジャンヌがサカラに尋ねる。
「ヘスペリデス?アハハ…ヘスペリデス??何故…言える?不思議だ?ラドーン?アターナー姉様…エニューオー姉様、ミネルヴァ姉様…ペムプレイドー姉ぇ?兄ぃ??ん??姉様??アハハ……今は、…兄様か?……うわぁ〜なんだ?この犬??魔獣か?スキュラ?この犬は、スキュラのペットか何かか?」サカラが犬を見つめた?
「犬??なにこれ?犬?狼?妖怪?スキュラ!スキュラァァァ…何何?」アンフィトリテが後ずさる。
「おいおい…てめぇら!言ってくれるじゃないか?あん!!」エキドナ犬は、スキュラに、じゃれついてる。
「ぎゃぁ!しゃべってる??の??」カリテイモが腰を抜かした。
「ギャハハハ…これは、アイリスのバター犬!エッキー君です。ギャハハハ!」ヴァネッサが、笑い転げている。
「誰がバター犬だ!アターナー姉ぇ!説明してくださいよ!」エキドナ犬は、キャンディに尻尾を振っているを
「声と犬の動作がチグハグすぎるけど…アハハ………エキドナよ!エキドナの精神の片割れ…本体は、有岡城に幽閉中ぅ!アハハ」アターナーも笑い出した。
「解ったか!クリューサーオール!私は、エキドナだぁ!話せば長い!!」
「エキドナ?犬のエッキー君?エニューオー姉様のバター犬?」カリテイモが犬を抱き上げた。
「おい!アエロー…バター犬な訳ないだろがぁ~!で?酒?ここの酒は、私の物!だぁ、ろうぅ!がぁぁ!!」アイリスが口を尖らす。
「アハハ………まぁ良いわ!今日は、飲みましょう!新たな仲間が出来て私は嬉しいの!!」リンが叫ぶ。
「Notre lien transcende le temps et l'espace.(私たちの絆は、時間と空間を超越する。)」
「グライアイよ!永遠たれ!」
「グライアイ最高ぉ!グライアイ!バンザイ!ギャハハハ!」
「我々はアターナー様に永遠の忠節を誓います。」全員が、リンの前に傅いた。
不定期でアップします。満里奈達の活躍に、ご期待下さい。感想など、頂ければ幸いです。




