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21話5日目土砂降り2

 魅化神社(みげじんじゃ)美毛森(みけもり)駅から徒歩20分程度の位置にある。

 

 美毛森は駅から離れて行くにつれて公園や緑の割合が増えていき、お店の数が減っていく。今、楽人(らくと)たちが歩いている大通り沿いの歩道も周囲にお店はなく、両サイド緑一色である。車道と歩道の間には植え込みがあり、もう片側は、公園の植え込みが続いている。


「ねぇねぇ、いつからつきあっているの? ……ニャン?」

「えっと~、小学生から」

「わぁお!?」


 早馬駿(はやましゅん)とは小学生からのつきあい。楽人の答えはある意味あっている。


「そんなはずないでしょ! ……ですよ。間に受けてはいけません」


 もちろん、『秋晴(あきは)』兼『駿』は否定するが、いまいち「設定」が固まり切れていないためか、受け答えがぎこちない。


「にゃははっ、仲いいですニャン♪」


 未海(みみ)は両手を後ろに組み、前かがみ気味に楽人を見つめた。上目遣いっぽい目になるため、楽人でなくてもドキっとしてしまうだろう。


「先輩ってば、3次元に興味ないって思ってたんですけどなかなかやりますニャン」


 「3次元に興味ないって思ってた」という言葉は人によってはとても気にする言葉だろうか? 故意か天然かわからないが、未海は時々ズバズバものを言う場合がある。もっとも楽人は気にしないが。というよりも今、楽人は別のことに興味を持っている。


「待って!」

「ニャン?」


 楽人はスマホを取り出した。


「ニャン♪」


 ピコン♪


 この間わずか1秒である。楽人がスマホを取り出した意図を瞬時に理解して、未海は教科書に載ってもおかしくない程の正しい上目遣いのポーズをしてみせた。尚、なんの教科書であるかは定かではない。


「3次元にも興味あるよ。ね?」


 そういって、楽人は今撮った写真を見せた。


「写真だから2次元ですニャン♪」

「なる……ほど」


 猫の爪のように鋭い指摘である。続けて未海は小悪魔のような笑みを浮かべ駿に話しかけた。


「お姉さまも大変でしょう。毎日写真撮られて」

「あ、えっと、え?」


 突然写真の話題を振られて駿はとまどった。楽人がこともあろうに彼女という設定を付け加えてしまったおかげで、写真がないと不自然な状況になってしまっているためだ。


「先輩の彼女さんなら、おはようの前からおやすみの後まで写真撮られてそうニャン♪」

「それ、盗撮も混ざってない!?」


 などと駿はツッコミを入れてみたが写真がないことに対しての有効打を打ててないのは事実である。そこで楽人はフォローに入った。


「早馬……じゃなくて秋晴ちゃんとは文通でつきあっていたんだ」

「文……通!?」


 手紙でやりとりしているならば、仮に写真を送ってもらっていても電子データとして保存していない可能性があるし、メッセージのやりとりも電子データに残らない。それだけでなく、もう一つの問題も解決する。


「そっか……駿のお家に遊びに行っても、お姉さまに会わないのはそのためだったかニャン」


 そう、未海は駿の家に何度も遊びに行っている。それなのに姉に会わない、姉の話が出てこない、姉の気配を感じないというのはヘンな話であった。だが、姉が遠くにいるというのなら解決す――


「でもでも、駿ってば、ひとりっ子って言ってたニャン!」


 否、解決しなかった。慌てて駿は弁明する。


「えっと、あの時は――」

「あの時?」

「わわわっ」


 未海は口を閉じ、笑みを浮かべ、固まっている。「ん?」という心の声でも聞こえてきそうな表情である。


「あぁっ! 雨だ」


 楽人がわざと大きな声で雨が降って来たのを告げる。雨と言っても、地面が濡れるくらい降ってきたわけではなく、ぽつりと肩に雫が一粒当たった程度であった。


「え? 降ってる? ニャン?」


 なので、当然気づかない人もいる。そんな程度の、雨と呼んでいいのか迷う雨であった。


「走ろう!」

「うん」

「えぇ!」


 未海だけは叫び声をあげた。


「飴♪ アメ♪ 雨~♪ 私のまわりはいつも雨♪ イェイ♪ 神社まで走って雨宿りしよっ」

「待ってニャン。傘出すニャン」


 未海の提案を聞かず、楽人は駿の手を握りもうダッシュで走りだす。


「ちょ、ちょ、ちょっと、あたしハイヒールゥーー!」


 曇り空の下、一人空しく美見未海(みいみみみ)だけが取り残されたのであった。


「はぁ……」


 軽くため息をついた未海はおもむろにスマホの画面を開いた。


 3日前、駅前で撮った駿との写真。写真を見つめる未海の不安げな表情がスマホの液晶画面に薄っすらと映り込んだ。

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