新崎と志条
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美術室前での一件から、本庄柾幸という生徒とよく目が合うようになった。
いや、度々睨まれるようになった。
その意味は察しがつく。
しかし行動を移さない所を見ると、本庄自身よく解っていないのかも知れない。
「新崎、っ先生」
吐息混じりに、志条が俺の名前を呼んだ。
行き場の無い彼の指先が俺の髪をくしゃりと掴む。
思考が逸れていた事が伝わってしまったのだろう。申し訳ない。
「孝之」
名前を呼んで、手を動かした。
太ももの付け根に口付けて柔らかく食むと、彼は恥ずかしそうに口端を緩く上げた。
皺もなく綺麗に敷かれていたベッドのシーツには、いくつもの波が広がっている。
気を付けなければならない。
関係が知られてしまったら、俺は、この彫刻のように美しい肢体を手放さなければならなくなる。
この縋るような黒い瞳をもう見られなくなる。
大事に、大事にしているのだ。
「孝之」
「っ、」
彼は一瞬胸を波打たせて息を止めた。
荒い呼吸を押し殺して身を捩る。
「可愛い」
汗で引っ付いた前髪を左右に掻き分けた。
綺麗な額に口唇を寄せてそう呟くと、志条は眉を寄せる。
「可愛くない」
「なんでそこで意地を張るんだよ」
「張ってない」
鼻を摘まんで左右に揺らして笑うと、志条はガバリと上体を起こして口唇を尖らせた。
「今度は俺がする」
「いいよ、しなくて」
腕を伸ばした彼から、後ずさって逃げる。
動きにくいから、早くトイレに行きたかった。
「シャワー浴びておいで」
不満そうな顔をした志条は、渋々重い腰を上げた。
線引きをしているつもりは無い、また、それが意味の無い事だというのも解っている。
手を出してはいけないのだ。
合意の上であろうと、なかろうと。
手を出してはいけなかった。
後悔しているのか。
俺は、後悔しているのだろうか。




