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神域回廊  作者: 亜空間モドキ
第1章 プロローグ
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第7話 再挑戦

あくる日の午後。

ヒグラシの鳴き声が儚げに山にこだまする。


その山々のとある一角にあるぽつりとある、裏山の麓に5人の学生がいる。


「話には聞いてたけど、こんな人気のない所に連れてきて、変なことしたら許さないからね。」

少し怖気づいた声でハルカが言葉をこぼす。


「大丈夫だって!。いつもは藪漕ぎすんだけど、今日は簡単な道にするからよ。」

いつになく上機嫌な様子のハジメ。


「藪漕ぎって、何よ。聞いたこともないわ。」

食い気味でハルカが質問する。


やれやれ、という顔をしているマナブとミサキ。


貧弱な装備をしている俺たちとは逆に、まとまった装備をしている彼女達。


そう。彼女らはギルダーであり、その装備は俺たちとは比べ物にもならない。

変な形のゴーグルを着けている他に体を防護するプロテクター。

その腰元には女性でも扱えそうな細い剣が携えられている。

何より腕に付けている機器が最先端テクノロジーであった。


腕時計のような機器が本体となっていて、特殊コンタクトレンズやゴーグルとリンクしているのだ。

耳にはイヤホン型の通信機器までついている。

なんでも脳波を使って、装備のオン・オフも切り替えられるというのだから

科学というものはすごいものだ。


ハルカはハジメに答えを聞く前に「藪漕ぎ」について理解したようだった。


恐らくハルカが着けている特殊コンタクトレンズから情報を汲み取ったのだろう。


なんという装備の差。

俺たちに比べて、見てくれも良い。なんならオシャレだ。



俺は悔しさ交じりに、お手製の槍を握りしめるしか、なかったのであった。


普段は使わない表参道の方へ5人は足を進める。


ハジメが苦戦しながらも参道を遮る草木を薙ぎ払っている。

好きな人に自分のいいところを見せようとする。 うん。いいぞハジメ。


俺もすかさず手伝った。


神域回廊(パンドラ)があるのは、この先ね。」

普段めったに話さないミサキが、透き通る声でぽつりと呟いた。


ん?「パンドラ」?。なんだその、古代ギリシャ神話に出てきそうな言葉は。


俺はミサキに向かって振り返る。


「パンドラっていうのは、もしかして神域回廊のことかい?」

すかさずマナブが質問してくれた。


頷くミサキ。


「あたし達ギルドの中では、そう呼んでるわ。」

ハルカが補足してくれた。


でもなんで、屋上で話した時はそう呼ばなかったんだろう。


純粋な疑問が頭に浮かぶ。


そんな俺の考えを読んでかミサキが言った。

「あなたたちが必死そうだったから、合わせていただけよ。」

澄ました声で説明する。


うーん。クールビューティー!。


俺の心臓はその言葉に躍動していた。


「道は出来たぞ。早く終わらせようぜ。」

ハジメが先を促す。


崩れた階段に気を付けながら登り、赤い羅列文字をした転移陣の前まで移動する。


その転移陣を見て彼女達が小さく驚いた。


「いつもの転移陣とは違うわね。」

そう言いながら、口元に手を当てて考えるハルカ。


「もっと薄い赤なら見たことがある。それにほとんどの転移陣は青い。」

解析するようにミサキが言う。


俺はマナブとハジメに解説を求めたが、2人とも首を傾げている。


「俺たちはこの転移陣しか知らない。」

「しかも、この神域回廊(パンドラ)が他と違うっていうのはなんとなく分かってた。」

俺は彼女達にそう説明した。


「なら、とにかく行ってみましょう。」

ハルカが促す。


俺はいつも通り目印を置いて、4人に合流する。


この転移陣は5人が同時に入るにはすこし狭かった。


これが噂に聞く、ラッキースケベとでも言うのだろうか。

彼女達のいい香りが俺の鼻腔を刺激する。


そうして俺たち5人は神域回廊(パンドラ)に入った。


転移する時にいつもの不快感が俺の至福を邪魔する。


「話には聞いてたけど、怖いな。これ。」

マナブが怯えた顔でそう言った。


彼女達は・・・平気な顔をしていた。


「あたしは、何も感じなかったけど。」

確かめるようにハルカが言う。


同意するミサキ。


首を傾げる野郎3人。


「まあ、何もないならいいんじゃね?。不快感には変わりないし。」

ハジメがそう、まとめる。


俺たち5人は2階層への歩みを進める。


パシャ。パシャ。と音を立てて彼女達がゴーグルでなにかしている。


「何やってるんだ?」

マナブが純粋に言葉をぶつけた。


神域回廊(パンドラ)の証拠よ。後でギルドに報告するのよ。」

ハルカはゴーグルに手をかけたまま答える。


そりゃそうか。初期発見というのがギルドの評価になるんだったな。

俺は屋上での会話を思い出した。


そうこうする内に転移陣がある東屋に着く一行。


2階層への転移陣を見たハルカが口を開く。

「改めて見ると、ワクワクするわね。」

「階層がある神域回廊(パンドラ)なんて初めてだもの。」


後頭部に手を廻してハジメはどこか誇らしげな顔をしている。

なんだお前・・・。


「妖怪がいたのは3階層だけど、2階層からは魔物も出る。」

「十分に注意してくれ。」

俺は全員に向けて言った。


そうして俺たちは2階層へ転移した。


状況は1階層とあまり変わらなかった。

少し魔物が多い位か。


この程度の魔物なら俺たちの邪魔にはならない。


その時。


「右前方!吸血バッタがいる!タケシは前衛を!。」

「マナブは俺たちのカバーに入れ。」

ハジメが似合わない言葉を並べながら指示してくる。

あの野郎、覚えとけよ。


そう思っていた束の間。


吸血バッタが真っ二つに切り裂かれたのである。


その傍らには凛とした立ち姿のミサキが立っていた。


「すげぇ。」

マナブが驚愕していた。


俺も見えなかった。

ハジメのことを見ていたと言い訳しておこう。


「この程度の魔物なら、私達2人で十分。」

ミサキが剣を収めながら言う。


無茶苦茶かっこよかった。

ぜひ嫁に来て欲しい。


頭が半分ピンク色に染まりながらも俺は平然とした態度を保っていた。

むっつりスケベの完成である。


「問題は3階層だよな。タケシ、案内を頼む。」

マナブが先を促してくれた。


ハジメは少し肩を落としていた。


無理もない。空振り三振なのだ。


そうして俺たち5人は3階層への転移陣がある鳥居の前まで来た。

前回、外し忘れていたバンダナが括り付けられている。


「妖怪が出るとすれば、恐らく拝殿の中だ。」

「気を付けていこう。」

俺はそう言葉を締めくくり、5人で転移陣に入った。


3階層に転移して、すぐに状況を確認する。

ここも変わりがないようだ。


なら、本命は拝殿か。


俺は心の中でつぶやいた。


5人は周囲に目を凝らしながら拝殿に近づいていく。


「あれ?おかしいな。」

ハジメがそう言いながら目配せをしてきた。


拝殿を見ると、扉が閉まっていた。


「確かに。 前の時は扉を開けたまま、俺たちは逃げた。」

「扉を閉める余裕なんて無かったんだよ。」

俺はそう言葉を紡いだ。


「妖怪が、いるのね。」

ハルカが小さく言葉を吐く。


その手はすでに剣の柄を握っていた。


静かに、そして慎重に俺たちは拝殿に近づく。

じゃり。と普段なら気にもしない音に苛立ちが募る。


拝殿の扉に手を掛けて、ハジメが同意を促してくる。


頷く4人。


そして勢いよくハジメが扉を開けた。






































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