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神域回廊  作者: 亜空間モドキ
第1章 プロローグ
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第4話 怪しい商店

夕焼けに田んぼの稲が反射している。のどかな山の麓に3人の学生がいた。


「早く引っ張り出せ。」

「日が落ちる前に終わらせるぞ。」


そんな声が飛び交っている。


「マナブ。もたもたすんな。置いてくぞ。」

ハジメが急かす。


「ああ、悪い。」

マナブが自転車に跨りながら答える。


「最低でも、店まで30分はかかる。ちょっと急ぎ目でいこう。」

俺もそう捲し立てた。


自転車で目的の店までは結構な距離があった。

だが俺たちが乗っている自転車は完全電動である。

体力の消耗はほとんどない。


昔は人力でペダルを漕いで走っていたというのだから、先人たちはさぞかし苦労したのだろう。


抜け道や近道を駆使して30分ちょっとで目的の店がある商店街までやってきた。

指定されている駐輪場に自転車を停めて、足早に移動する。


急いだ理由は2つ。


1つ目は俺たちが違法に所持している魔石類だ。

もし捕まれば洒落にならないことになる。

無駄な接触を避けて、速やかに任務を完遂する必要があった。


2つ目はアリバイだ。

俺たちは部活という名目と完璧な協力者の証言によって行動が約束されている。

補導されようものなら根底から証言が崩れてしまうのだ。


そんな理由で俺たちは急いでいた。


「そういえば、今から行く店は、はじめてだったよな。」

俺は確認を込めてマナブに聞いた。


マナブが短く返事する。


「あそこの婆さん。意地悪だから黙っといた方がいいぜ。」

ハジメが付け加えた。


「俺が交渉するから、下手に話さない方がいい。」


「ああ、タケシに任せておけば大丈夫だ。」

ハジメがフォローしてくれた。


そんな会話をしていると早速、目的の場所についた。


商店街のメインストリートから2つ通りを抜けたところにある怪しいお店。

店の前には外国から仕入れたような、見たこともない雑貨が置いている。


知らない人から見たら、ちょっと怪しげな雑貨店っていうのが妥当なところだろう。

俺も最初はそう思った。


意を決して店に入る。


カラン。と小さな鐘の音色が店内に響き渡る。

幸いにも客は俺たち以外にはいないようだ。


店内は雑多としていた。扉のすぐ横には銅像のような置物がある。

あえて外から見えずらいように配置された棚の奥にカウンターがある。

そこからひょこっと婆さんが首を出してきた。


「あら、今日は3人で来たのかい?」

しわがれた、それでもはっきりと聞こえる声で婆さんが聞いてきた。

この店の主だ。


「ええ、今日もお願いします。」

俺が答える。


「元気なことはいいさね。」

「奥へおいで。」

店主が確かめるように言った。


俺たちは互いに顔を見合ってから店の奥に移動する。


すると、どこからともなく置物の影から手が伸びてきて、店の営業看板を裏返す。


「ひっ!」

マナブが小さく悲鳴を上げた。


ハジメがケタケタと笑っている。


俺たちも最初はそうだった。

この店は必要なことをしているだけだった。邪魔が入らないように。


店の奥に着くとテーブルがある。

そこに4人で座った。


「で、何を持ってきたんだい?」

店主が目を細めながら聞いてくる。


「いつもの魔石と少し大きめのやつ。」

「あと、これも。」

俺はそう言って鞄から魔石類を取り出した。


魔石に関してはいつもと同じ反応だった。

あのチョークのようなものを見せたときに、店主の反応が明らかに変わった。

ほんとに一瞬、時間が止まったかのようなそぶりを見せた。


「いつもの魔石はさておいて。」

確かめる様に店主が手に取る。


「とんでもないものを持ってくるとはねぇ~」

店主の声が若干うわずっているのが見てわかる。


横目に見て、ハジメの目が輝いているように見えた。


「これは、とんでもないものなんですか?」

俺は素直に聞いてみた。


「そうさねぇ。めったに出てくる代物ではないことは確かだ。」

店主は含みのある言い方で話す。


「お前さんらこれをどこで・・・。 いや、必要以上の詮索は不要さね。」

言いかけた言葉を飲み込んで店主は続けた。


「これを譲ってくれるのなら、これだけ出そう。」

そう言ってテーブルの上には高校生では稼ぎ得ないお金を積み上げる。


「え?」

ハジメとマナブが動揺しているのが傍目にも分かる。

俺も同じだった。


闇取引というだけで相場よりはかなり低い買い取り金額なはず。

それでもこの金額をみて、その異常さが分かるのであった。


「売ります。」

俺が言うよりも先にハジメが喰い気味に答えた。


「ひひひ。正直なのは良いことさね。」

店主がほくそ笑んだのがはっきり見えた。


もう少し引っ張ってみたい考えもあったが、ハジメがお手付きしてしまったのでは

もう後戻りは出来なかった。


「ひとつだけ知りたいです。」


「これは何なのでしょうか?」

俺は一拍おいて、店主に聞いた。


店主はやや片眉を上げながら答えた。


「今回は、サービスで教えてあげる。」

「これは封印術式で使う魔道具さね。」

「特定の魔物の素材を使って作られている。」

「もちろん、ちょっとやそっとで手に入る代物じゃないさね。」


「やっぱり。」

マナブが小さく呟くのが聞こえた。


「まあ、あんたらが持ってても使うことすら敵わない宝物さ。」

「手放して、正解だとあたしゃ、思うよ。」

不敵な笑みを含んだ顔で言われる。


確かに今の説明で腑に落ちた。

あそこで何かが起こってしまったのが。


俺たちが持っていてもどうすることもできない。

あそこに戻って、同じ形に戻しても、だぶん手遅れだろう。

そんな予感が俺の中で駆け巡っていた。


「分かりました。ありがとうございます。」


そう言って俺たちは代金を受け取り、店を出ようとした。


「また、おいで。」

店主の機嫌が良いことはすぐに分かった。


俺たちは小さく頷き、店を後にした。



帰り道の誰にも見られないところで、俺たちは報酬を分けた。


「すっげー!俺たち金持ちじゃん。」

ハジメが能天気に喜んでいる。


「俺は貰えないよ。ほとんど何もしてないし。」

そう言って報酬を返そうとするマナブ。


「いや、これはただの報酬じゃない。口止め料も入ってる。」

俺は厳しい顔をしながらマナブを諭した。


この出来事は俺たちしか知らない。


報酬を受け取るなり俯くマナブ。


その言葉にハジメが反応する。

「やっぱり、あそこにあった宝物は封印だったのかねぇ。」


「その可能性は高い。今現在、封印されてたであろう何かがあの神域回廊にいるかもしれない。」

俺は淡々と自分の予想を話した。


「なら、そいつを倒せばもっといい魔石も手に入るんじゃない?」

ハジメが目を輝かせながらそう話す。


ダメだこりゃ。金に目が眩んでる。


俺はため息交じりにハジメに諭した。

「俺たちじゃ到底手に負えないと思う。」と


そんな俺たちのやり取りを聞いて、マナブが言った。

「とりあえず無事に戻ってこれたんだし、ヤバいと思ったんなら近づかなければ良いんじゃない?」


ほぉ。なかなかの正論である。


マナブにしてはなかなかに効く言葉のボディブローを放ってくる。


そんな俺を見てハジメはケタケタと笑っていた。


「いい加減、ラーメン食べようぜ。もう我慢できん。」

ハジメが痺れを切らした。


俺たち3人は考えることを一旦辞めて、商店街に歩みを進めるのであった。













最後までご覧いただきありがとうございます。

連日投稿を目標として頑張ります。

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