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神域回廊  作者: 亜空間モドキ
第1章 プロローグ
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第2話 神域回廊

 3人の学生は淡い赤色の光を発する羅列文字の中央に立っていた。


 俺は周りの状況を確認している。

崩れかけた拝殿、形を成さない狛犬に乗せた帽子が、ない。

雰囲気はあまり変わっていなかった。


慣れた足取りで辺りを確認しながら、ハジメが言う。

「何度やっても、ちょっと緊張するんだよな。」


「転移した?あんまり変わってるように見えない。」

マナブが驚きを隠せないようだ。


「ここが出入口になるから、目印を置いてしっかり覚えるんだぞ。」

俺が現場を知らないマナブに学ばせる。


「この階層はほとんど取りつくしちまったから次だな。」

ハジメが淡々と言う。


俺も頷く


「え?ここで終わりじゃないの?」

素っ頓狂な声でマナブが言った。


知らなくても無理はなかった。

世間一般的に知られている神域回廊は1階層で終わることが多い。故に回廊と呼ばれていたのだ。

しかし原因は不明だが、こうして階層を跨いでしまう神域回廊も存在する。

俺たちがいる神域回廊がまさにそれだった。


こんなレアな神域回廊を知られたくない。

それが本音だった。


「さっさと次いくぞー。」

ハジメはそう言って動き出した。


崩れかけた拝殿を迂回しながら裏側の方へ回り込む。

その先は緩やかな傾斜が続き、その先に東屋があった。

その場所に赤い羅列文字を浮かび上がらせる転移陣がある。


俺は簡易的な盾をマナブに渡しながら言う。

「この先は魔物が出る。ハジメと俺が倒すから、自分の身は自分で守れ。」


貧弱な盾を見ながらマナブはわずかに笑った。


ほとんど段ボールである。こんなもので本当に守れるのかと。


「ここにでかい魔物は出てこない。虫の攻撃くらいそれで充分さ。」

俺はそうマナブに説明する。


俺たちは東屋に向かって歩き出した。

俺とハジメは槍を持っている。とても簡易的な槍である。

木の棒に家から持ってきた果物ナイフを先端に括り付けただけの武器ともいえない代物。


動物系魔物には効果は薄いだろうが、虫系魔物ぐらいは倒せる。

俺たちはこの方法で今までやってきていたのだ。

それにギルドや民間でも出回ってる装備は俺たちでは手も出せなかった。

そういうところには、しっかりと商売の匂いがしていた。


東屋の手前に転移陣がある。

俺は転移陣を踏まないように注意しつつ、東屋の柱に印を書き足す。

準備は出来た。


そんな俺の様子を見ながら、ハジメとマナブは頷いた。


「気をつけていこう」

俺は自分への確認も込めてそう呟いた。


3人は足並みを揃えて転移陣を踏む。


そして消えた。



神域回廊 第2階層


俺は転移してすぐに周囲を確認する。

横目にハジメも警戒しているのが見えた。マナブはやはり一呼吸遅れているようだ。


さっきの階層に比べてやや生き物の気配を感じた。

不気味でいてあまり聞きたくない音が周囲から聞こえた。


「タケシ! あそこに何匹かいる。」

ハジメが興奮交じりに言う。


それを見たとき、マナブが息を呑むのが聞こえた。


ナメクジだ。


驚くのはその大きさだった。


俺たちの日常生活で見かける個体ではせいぜい2~3センチ程度だろう。

だがここにいる個体は手のひらの大きさを超えていた。


「気持ち悪。」

マナブが思わずつぶやいた。


いや、キモイだけではない。1匹ならまだしも群れをなしているのだ。グロイ。

それが正しい感情だろう。


だが場違いが1人いる。ハジメだ。


「うっひょー!取り放題じゃん。」

喜々として魔物の群れへ近づいていくハジメ。


俺たちの目的はこの魔物だった。

でかいだけで攻撃してくることもなければ足も遅い。

金策にするにはもってこいの魔物だったのだ。


ハジメは群れに近づくなり、いきなり捌き始めた。

俺たちの求める{もの}がその体内にあるからだ。


「あった。あった。早速げっちゅー。」

ハジメがふざける。


その手には淡い光沢を発し、小さいながらも、いびつな形をした石があった。


魔石だ。


俺たちはこの魔石を売って小遣いを稼いでいた。

もちろん違法である。


本来、魔石などはギルドが主体になって厳重に売買されるものである。

しかしその希少性によって裏取引にも使われていた。


なんでも、このご時世ではレアアースというものは、ほとんど取りつくしてしまったらしい。

代替品を探していたときに、この魔石が選ばれたわけである。

そりゃあ、世界各国が飛びつく訳だ。

量子コンピューターや半導体。最先端のテクノロジーに魔石は欠かせない素材となっていた。


ギルドで売った方が値も高いし、安心できる。

しかしギルド登録しなければならないうえに、責任も重くなるのが現実だった。


そんな俺たちが手を出したのが闇取引だった。


こういう手の者はどこにでもいる。

先輩の伝手やら、商店街の怪しげな店やら、意識を向けるとすぐに見つかるものなのだ。


俺とハジメは手分けしてナメクジの解体に入った。

数をこなしているとはいえ、あまり慣れたいものではない。

ネバネバしてるし、ほんのり臭い。


そんな時


「あれ何!」

青白く吐きそうな顔をしながらマナブが指をさす。


そこには目を赤くしたバッタがいた。


すかさずハジメが動く。


「吸血バッタだ!距離をとれ。」

俺もすかさずマナブに指示を出した。


あれは厄介だ。動きが速いうえに嚙まれると血を吸ってくる。


「ミイラになっても骨は拾ってやるさ。」

ハジメが冗談まじりにマナブをからかう。


魔物の動きは素早かったが

槍を持つ2人は巧に距離を縮めながらバッタに槍を突き刺す。


「ボーナス確定!」

どこで覚えたのか知らないがハジメのその一言でその場の緊張が解けた。

やはりこういうイレギュラーでもハジメは頼りになる。


すかさず吸血バッタを解体し、魔石を探し出す。

その魔石はナメクジの物より、少し大きかった。


2人は引き続きナメクジの処理に戻る。


「俺も手伝う。」

そんな2人を見てマナブが言った。


3人は協力して魔石をかき集める。


ひと段落して集めた魔石を3人で見てほくそ笑んだ。

たぶん相当悪い顔をしていたのだろう。

マナブの顔が若干引き攣っていた。


「目標は達成した。そろそろ引き揚げよう。」

俺は2人にそう言った。


魔石の量としては全然足りないが無理をせず、欲も出さない。

あくまで安全に。それが俺たちの暗黙の了解だった。


ハジメも頷く。


第2階層の転移陣に向かおうとした時、マナブがぽつりと言った。

「拝殿は確認しなくていいのか?」と


俺とハジメは思わず顔を見合わせる。


意識したこともなかった。

崩れかけた拝殿に何かあるかなど。


表の世界ではそういったものに手を出さないのがルールだ。

親にもよく言われていた。「触らぬ神に祟りなし」だと。


だがここは神域回廊だ。表の世界とはリンクせず、何かある可能性が高い。

危険かもしれないと思ったがこの欲には勝てなかった。


ハジメの行動は速かった。


小走りで拝殿に近づくと周囲を確認しながら俺たちを待つ。


俺たちが拝殿に着くや否や扉に手をかける。

崩れかけている為、ハジメはやや強引に扉を引っ張る。

「御開帳~」

ふざけた声をだしながらハジメが扉を開けた。


そこまで大きな拝殿ではなかった。

大人数人がようやく入れるような大きさだった。


だが俺たちの目線は途中で止まった。

拝殿の中央に何かがあったからだ。


「もしかして、これ・・・」

そう言いかけたマナブと俺たちは興奮交じりにうなずいた。


恐る恐る俺たち3人はその「何か」に近づいていく。















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