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神域回廊  作者: 亜空間モドキ
第2章 新たなる1歩
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第23話 第二の呪い

 彼女達の元へと戻る途中、何度も刀に目を落とした。


日本刀なんて博物館や美術館でしかお目にかかれない代物だ。

しかも神域回廊(パンドラ)で手に入った代物ともなれば相当な価値があるに違いない。


俺は非常に愉快だった。

羨ましがるハジメの顔が目に浮かぶ。


この丘自体は危険は無さそうだった。強いて言うならさっきの場所が歪なだけだ。

だが俺は浮かれていた。後を追ってくる魔物がいることにも気が付かずに。


俺は問題なく彼女達の元へとたどり着いた。


「ミサキの容体は?。」

短く確認する。


「もうほとんど大丈夫。心配かけたわね。」

そう言うミサキの顔は青白かった。


「そうか、無理は禁物だ。もう少し休んでから移動しよう。」

ミサキを観察しながらそう言った。


「ちょっと待てタケシ。その腰に差してるものはなんだ?。」

早速ハジメが気が付いた。


にやつく顔を隠せない。


俺は勿体ぶるような趣で腰に差していた日本刀をみんなに見せた。


「え?。それってまさか日本刀?。」

ハルカが珍しく興味を見せる。


「ああ。この裏手辺りに横穴があったんで、探ってみたら出てきた。」

俺は来た道を指差しながら説明する。


「マジかよ!。すげーじゃん。持ってみてもいいか?。」

ハジメは捲し立てるように言った。


俺は刀を差しだしてハジメに渡そうとする。


バシィ!。という音と共にハジメの手が弾かれる。


「痛ってぇな!。またかよ。」

腕を抑えたハジメが驚きながらも声を上げた。


え?嘘だろ?。


俺は手に持っている刀に目を落とす。


「タケシ。その刀を抜いてみて。」

ハルカが真剣な眼差しで言ってきた。


俺は小さく頷いて、刀の鍔を押し込む。

鯉口を切るとカチっという音と共にスッと刀身が顕になった。


やっぱり美しい。

横穴では色までは良く見えなかったが状態だけは確認できた。

今見ていてもほれぼれとする出で立ちだ。

波打つ波紋は水を濡らしたかのように際立っている。

その刀身は錆びや汚れ一つ無くキラキラと光に反射していた。


「なんて禍々しい刀なの。」

寝ていたミサキが体を起こしながら言ってきた。


禍々しい?。どう見ても綺麗な刀なんだが。


「それを包んでいた封印具があったはず。」

思い出すかのようにミサキが続けた。


「封印具?。ああ、これかな?。」

俺はそう言って刀を包んでいたボロ布をみんなに見せた。


驚きの表情をするハルカとミサキ。


「こんなボロ切れがなんか意味あんのか?。」

何が起こっているのか、さっぱり分からないハジメに少し救われた。


「それに書かれている文字をよく見て。」

ハルカが静かに言った。


俺はまじまじとボロ布を広げて見てみる。


かすれて読めなくなった字が多かったが「禁忌」と書かれた単語がいくつも見受けられる。

ぞわっとする悪寒が背中を走った。


これはヤバいものだったかもしれない。


「特級呪物じゃねえかよ。タケシ、お前持ってんな!。」

ハジメがさも愉快そうにケタケタと笑っている。


くそ。こんなハズでは、、、。


「あなたはそれを持っていて平気なの?。」

ハルカが訝しんで聞いてきた。


「俺にはまだ何も起きてない。見ていても綺麗な刀身だとしか思えないけど。」

俺は再び刀に目を移して言った。


「この紫色をした刀身が綺麗?。まあ、そう見えなくもないけど。」

ハルカが少し考えながら話す。


紫?。何を言っている。どう見ても綺麗な鋼色だ。


「俺には鋼色にしか見えない。しいて言えば少し重いくらいか?。」

俺は刀を動かしながら答えた。


「何もなければ問題な、、、。」

ミサキがそう言いかけて俺が戻ってきた方へと顔を向けた。


バキバキと大きな音を立てて巨大な猪が姿を現す。

その大きさはさっき倒した猪の倍はある。


俺は小さく舌打ちをした。

こんな大きな魔物に後を追われて、気が付きもしなかった。

俺の失態だ。


さっき倒した個体は{つがい}だったのか。

匂いで後をつけられたのかもしれない。


俺達は狼狽えた。何も準備が出来ていなかったのだ。


猪はそんな俺達に構うことなく、一直線に突進してきた。

間に合わない。あまりにも速い。


俺は3人の前へと咄嗟に出ると、突っ込んでくる猪に持っていた刀を力いっぱい振り切った。

せめてみんなが避ける時間だけでも稼ぐ。


猪は避けることなく俺の剣筋を真正面から受けた。


巨体の猪が真っ二つになる。


勢い余って切られた肉体が左右に逸れた。


ズシンと大きな粉塵と振動を響かせながら、その肉体は地面にめり込んだ。


「嘘だろ?。今死んだと思ったぞ。」

ハジメが驚愕の声を上げた。


「何よ、、、それ。」

ミサキも腰を抜かしていた。


尻もちをついたハルカは驚きのあまり、声も出ない様子だった。


俺も理解出来なかった。

せめて少しでも時間を稼げればと刀を振ったが、まさか切ってしまうとは。


刀に目を落とすと、ギラリと輝く刀身には刃こぼれ一つ無かった。

何という切れ味だ。家にある果物包丁では比較にもならない。


俺は少し恰好つけて刀を鞘に納めた。


「怪我はないか?。」

尻もちをついているハルカに手を差し伸べる。


余裕の表情を作っていたのだが、内心はビビりまくっていた。


「怖かっだぁぁ。」

緊張が解けたのかハルカは泣きじゃくりながら抱き着いてきた。


思わず強く抱きしめてしまった。

まともにハグしたのなんていつぶりだろう。

よからぬ考えが浮かんでくるが、その考えをバッサリと切った。


ハルカを落ち着かせた後、改めて現場を見回した。


バッサリと切り裂かれた猪の亡骸からは拳大の魔石が顔を覗かせていた。


でもどういう理屈だ?。

この刀の約4倍はあろうかという巨体を切ったのだ。

いくら考えても答えは出なかった。


「助かったぜ、タケシ。」

ハジメが礼を述べた。

めずらしいな。


「ありがとう。2度も助けられた。」

ミサキが小さい声ながらもそう言った。


なんだか嬉しかった。

いつもクールで無口なミサキから、お褒めの言葉を貰えるとは思っていなかったのである。


「さっき言いそびれたついでに言っておくわ。」

落ち着いたミサキが照れている俺に言った。


「その日本刀は恐らく妖刀と呼ばれている類のものよ。」

「言い伝えによると、その力は絶大だけど呪いが強すぎて、使う人の命をも奪うと言われているわ。」

「だから、使わずに大切に祀ったり、保管されたりするの。」

「これから何か起こるかもしれないということを頭に入れておいて。」

いつになく饒舌なミサキが説明した。


その言葉に頷いた俺は、握っていた刀に目を落とした。


妖刀か。ただでさえ神鏡の呪いもあるというのに。

ハジメの言う通り、俺が特級呪物なのかもしれない。

だけど使えるものは何でも使う。それが俺のスタンスだった。


俺はこの刀の呪いと付き合う覚悟を決めて、腰に差した。


「なんかかっこいいな。侍みたいじゃないか?。」

ハジメが俺の立ち姿を見て言ってくる。


「ギルダーの武器でも刀というのは選択肢にはあるけど、使っている人を見たことはないわ。」


「え?。なんで?かっこいいじゃん。」

ハジメが疑問を口にする。


「刀というのは剣の類でも超攻撃型の武器なのよ。」

「防御というものをすべて捨てて、一撃の攻撃力に全振りした武器と言えば分かりやすいかしら。」

「対魔物戦においてそのスタイルは諸刃の剣でもあるの。」

「普通のギルダーならそんなスタイルは選ばないわ。」

ハルカが補足しながら説明した。


「俺は普通じゃないってことか。」

俺はポツリと呟いた。


「気を悪くさせたならごめん。タケシは特別よ。」

ハルカが慌てて付け加えた。

1本取られたぜ。


確かにこの刀を片手で扱うには重すぎる。

魔物の攻撃を受けようと思ってもさっきのような大きな魔物だと折れてしまう可能性がある。

故にさっきの俺の行動が最適解だったのかもしれない。


俺は確実に自分に必要なものが備わっていくのを感じていた。






























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