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神域回廊  作者: 亜空間モドキ
第2章 新たなる1歩
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第22話 魅惑の横穴

 ハジメと猪は激しい押し合いになった。

ハジメの当たり方も絶妙に上手く、少しでも重心が高いと簡単に飛ばされてしまうだろう。

猪も前足の付け根を怪我しているので、十分な力を発揮できない様子だった。


「ぐっ!このぉ~っ!」

ハジメが声を上げながら踏ん張っている。


ミサキの方へ視線を移したがまだぐったりとしている。


俺は手に持っているライフルを構えた。

使い方なんてほとんど知らないがミサキが扱っているのをよく見ていた。


「正面は駄目。横から脇を狙って!。」

ハルカが的確なアドバイスをくれた。


俺は小走りで猪の横に移動する。


幸いにも猪はハジメとの押し合いに夢中になっているようだった。


狙う場所は胸の辺り。


狙いを定めて引き金に指をかけた。


バコン!。と大きな音をたててプラズマ弾が発射される。


すると猪の動きは止まり、ゆっくりと崩れ落ちた。

ドシンと振動を響かせながらその巨体を地面に横たえる。


「ぶふぇ~。際どかった。」

ハジメが尻もちをつきながら言った。


ハルカもミサキに駈け寄って声をかけている。


俺は今の出来事がどこか信じられない感覚になった。

だが俺の手にはライフルがある。倒れた猪もいる。


倒したんだ。こんなでかい魔物を。


「タケシも手伝って。」

ハルカにそう呼ばれて俺は我に帰った。


ミサキの元へと駈け寄る。


幸いにも大きな傷はなさそうだった。

しかし頭を打ったのか、意識は朦朧としていた。


「大丈夫かなぁ。死ぬなんてことはねえよな。」

ハジメが心配そうに話した。


俺達はここで判断を迫られた。


無理にクエストを続行する必要はない。

後方にいる運搬隊に引き継いでもらった上で、表まで戻るのか。

休める場所を探してミサキの回復を待つかだ。


「私は大丈夫。少し休めば動けるわ。」

ミサキは弱々しくもそう言った。


「そうか。なら回復できる場所を探さないとな。」

「ここではまずい。」

俺は辺りを見回して言った。


先ほどの猪との戦闘音によって魔物が集まってきていた。

強くはないにせよ数が増えればそれだけ不利になる。


「さっき左手の方に小高い丘があった。そこなら視界も開けているだろう。」

「そこにミサキを連れて行って回復させよう。」

俺は2人に提案した。


2人とも頷く。


「俺がミサキを担ぐ。」

ハジメがいつになく積極的だった。

さっきまでの愚痴はどこへやら。


「私は2人と後ろを守るわ。」

ハルカはそう言った。


「よし、すぐに行動しよう。ここはもう危ない。」

手のひらサイズの蟻がわらわらと集まって来ていた。


俺は来た道を少し戻り、チラっとだけ見えた丘へと歩を進めた。


本隊と離れるのは危険なのだが、そこまで深く離れるつもりはない。


100メートル程離れたところにその丘はあった。

全体的に見ればそこらの木より高いぐらいの丘だ

見張りを上に立てれば警戒はしやすいだろう。


俺達はミサキを丘のふもとに座らせて、彼女の様子を観察した。

目立った外傷はほとんどない。骨折もなさそうだ。


「よかったわ。」

ほっとした顔でハルカは言った。


それを聞いて俺も安心した。

持っていたミサキのライフルをハルカに預けた。


「俺は少しこの周りを偵察してくる。」

「声の届く範囲を見てくるから何かあったら知らせてくれ。」

俺はそう言って丘の麓を伝って1週してみることにした。


この丘自体もそれほど大きくはない、前後左右で50メートル範囲くらいだろうか。

調査段階でさえ見逃されている可能性があった。

マップを見てみても丘の表記はない。


どちらにせよ警戒は怠れない。


俺はハジメたちがいる丁度、真反対あたりまで偵察を終えていた。


こちら側は木や藪が多い。頂上付近に見張りを立てるのがいいだろう。

そう思って丘の頂を見た時に不自然な穴があることに気が付いた。


中腹辺りだろうか、ぽっかりと1人通れるくらいの大きさだ。

俺はなるべく音を立てないようにその横穴へと近づいて行く。


熊の住処でした。なんてのは洒落にならない。


慎重に近づいたのだが魔物の気配はない。


やや長方形の形をした横穴が石畳によって補強されている。

明らかに人工物だ。

入り口を調べてみたのだが、人が形跡は出入りした形跡はない。

落ち葉や蜘蛛の巣でカモフラージュされていて遠目では分からなかっただろう。

我ながらよく気が付いたものだ。


俺は強烈な冒険心に駆られた。


するとポケットが熱を帯びているのに気が付いた。


神鏡を取り出してみると、薄暗くて分かりにくいがボロ布に包まれた棒みたいなものが写っている。

なんだ?。これ?。


俺はさらに目を凝らしながら神鏡を見る。


鏡に映るボロ布に巻かれた棒は無造作にも石壁に立てかけられている。


どう見てもこの横穴の中にある雰囲気だ。


俺は迷った。


彼女達の元へ戻ってから調べるか、今ここで調べてしまうか。

様々な憶測が出てきたが、俺は調べることにした。


慎重に足元に気を付けながら入り口に立つ。

ゴーグルをナイトモードへと切り替えると、横穴の奥まではっきりと見えた。

すごいなこれ。暗視ってやつか。


大きめの蜘蛛がうろうろしているくらいで他の魔物はいないように見える。


俺はゆっくりと横穴に足を踏み入れた。


俺を察知した蜘蛛は攻撃を仕掛けてくるがもはや俺の敵ではない。

槍で軽く払うだけで退散していった。


入り口から20メートルほど進んだだろうか。

少し広い空間に出る。


ここなら万が一のシェルターにもなりえるな。

俺はそう思いながらも周りを観察した。


小型の虫が這いずり回っているだけで他に魔物はいないようだ。

肩の力が抜けるのを感じた。


どうやらこの先に通路は無いようだし、ここが終着地か。

戻ろうと思って振り返った時に「それ」が目に入った。


ボロ布に包まれた1メートル弱の長さの棒。

無造作にも石壁に立てかけてある。


神鏡で見た景色と全く同じだった。


俺は興奮した。

あの時、鏡は熱を帯びていた。つまりは俺が求めている物が「これ」なのだ。と。


俺はその棒を手に取った。


見た目に反して結構重い。


ボロ布は明らかに何かを包んでいる。


俺はひと思いにボロ布を振りほどいてみた。


1本の日本刀が姿を現す。


おおぉ。


俺はまじまじと刀を見つめる。

とりあえず抜いてみるか。


俺は鞘と柄を握って力強く引き抜こうとした。


だが抜けない。

なぜだ。錆びてるのか?。


鍔をかちゃかちゃと弄っていたらカチッという音と共にスッと刀が抜けた。


良くは見えないが綺麗だ。

思っていたよりも重かったがずっしりとしたその佇まいには強さを感じた。


俺は刀を鞘に納め、横穴を後にする。

後でハジメに自慢してやろう。


新しく見つけた武器を手にした俺は自信が芽生えてくるのが分かった。

不足していた攻撃力もこれでマシになるかもしれない。


俺はスキップしたくなる衝動を抑えて彼女達の元へと戻った。















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