第20話 初めてのパーティー
休載情報を後書きに載せております。
ギルドからの帰り道、ハルカは何か言いたげな雰囲気を醸し出していた。
さっきの俺の言葉に従ってくれているのか、口だけは開かなかった。
「ミサキの父親がエンだって知ってたの?。」
俺は沈黙に耐えかねて口を開いた。
「ええ。知ってたわ。ミサキも父の前ではあまり態度に出さないし。」
「気まずいんじゃないかしら。」
ハルカは少し考えるように言った。
「気まずい?。良く分からないな。」
「だって父親がギルドマスターなんて公に騒いでいたら、どんな目で見られることやら分からないでしょう?」
「今の彼女の身辺は知る人ぞ知るって感じなの。」
ハルカは顎に指をあてながら答えた。
そうか、父親が権威のある人だとそういう風に見られたりもするのか。
「これは伝えても大丈夫だと思うけど、ミサキの護衛は無くなるかもしれない。」
「一応は内々にしておいて欲しい。」
俺は少し声量を落として言った。
途端にハルカの顔色が明るくなる。
「認められたってことなのね。私達。」
ハルカは俺に抱き着きながら言った。
「いや、それはまだ分からないよ。俺がミサキの代わりを務めろってことだと思うけど。」
俺は謙遜しながらも答える。
「おじさまとその話をしたのでしょう?。それなら認められたも同然だわ。」
「あの人、必要なこと以外は話さない人ですもの。」
ハルカの言葉は軽快だった。
確かに身の上話でも面倒くさそうな顔してたもんな。
あの鋭い眼光も今思えばミサキに似てるし。
元々口数は少ない方なのかもしれない。
「そうなのかなぁ。」
俺は分からなかった。
「そうに決まってるわ。それならそうと、なにかお祝いしなくちゃね。」
ハルカはそう言いながら、うふふと笑っている。
こういう時はお嬢様というか優等生なんだよな。
お祝いか。
家ではめったに出来ない事ではあった。
「でも、ミサキとは小さい頃からの仲だし私を理解してくれる数少ない親友なのよね。」
「今更離れるなんて考えられないわ。」
ハルカも素直に喜びきれない訳があるようだ。
俺達はそのまま帰路についた。
ハルカを送ってから家に帰ろうと思ったのだが、
いつの間のにか迎えが来ていた。
やっぱお嬢様なんだよな。と頭をぽりぽりと掻いた。
それから2週間あまりが経過した。
俺たちが神域回廊で受けた傷は癒えていた。
ハジメは骨折こそ治るのに時間はかかったが、それ以外の傷は綺麗に治っていた。
俺も裂傷を負ってはいたが医療のおかげで治りは早かった。
いよいよ待ちに待った大規模クエストを受ける時が来た。
わざわざ隣街のギルド支部まで来た甲斐があるというものだ。
メンツはハルカ、ミサキ、タケシ、俺の4人である。
このクエストではパーティー単位での参加しか認められていない。
投入される人数も桁違いに大きくなるからだ。最小単位がパーティーなのだから
相当な人数が招集されているのだろう。
俺もハジメも期待感があふれ出ていた。
なんせ今まで任務しかこなしていないのである。
ギルドでは初となるクエストに期待に胸を膨らましていた。
「すげえぞタケシ、見たことないギルダーや装備まで集まってるぞ。」
ハジメが興奮気味に話してくる。
「あんまりはしゃぎすぎると、バカだと思われるわよ。」
ミサキが冷ややかな目でそう言った。
こういうとこはいつも通りだな。
クエストへの登録を済ませると管理者がやってきて直接指示を出してくれた。
このクエストでの目的は最近発見された神域回廊の攻略である。
調査は既に終えられていたのだが、如何せん聖域の範囲が広すぎて攻略までは出来なかったらしい。
俺達に与えられた役割は調査だった。
参加するパーティーごとに与えられる役割は変わるようで、
力量やランクによって振り分けているのだそう。
俺達は全体でいう中の上辺りの位置づけなのだとか。
魔物を直接討伐していくのは上位陣のパーティーの仕事だと釘を刺された。
俺達は倒された魔物や生息している魔物の記録を取って、運搬班に伝達することが役割だった。
ぶっちゃけて言えば後方要員なのだ。
俺たちも復帰戦のつもりだったので丁度よかった。
クエストの時間まで時間があったので、久々に食事を兼ねてミーティングをすることになった。
フードコートまで移動して席に座る。
食事をする前に簡単に役割を決める。
ミサキはセミプロとしてこのパーティーのリーダーを務めなければならない。
「じゃあパーティーリーダーはミサキ一択だな。」
ハジメが調子付いて言う。
途端にめんどくさそうな顔をするミサキ。
あの時のエンの顔と重なる。
俺は吹き出しそうになった。俯いて笑いを堪える。
よくよく見れば似てるなぁ。
ハルカに足を踏まれて俺は我に帰った。
どうやらミサキに親父ネタは厳禁らしい。
前衛は俺、その後ろにハルカとミサキ、後衛はハジメになった。
ハジメは文句を言っていたが、まだ本調子ではないので後ろなのだ。
「けっ。タケシばっかり良いとこどりじゃねえか。」
ハジメがブツブツ文句を言っている。
「あんたが倒れたら回収しなきゃならない私達の身にもなってよね。」
ハルカの正論にハジメは沈黙した。
確かにそれはそうだ。
魔物はプロのパーティーが蹴散らしてくれても、俺たちが遭遇する可能性もあるのだ。
万が一を考えて行動するのは理にかなっている。
「でも今回はどれだけでかい神域回廊かってとこだよな。」
俺は気になった事を口にする。
「聞いた話から推測になるけど、街一つ丸々が神域回廊になっているそうよ。」
「それだけでもこのクエストの重要性が分かるわね。」
ハルカがそう説明した。
すごいな。帰り道を記録しておかないと迷子になりそうだ。
「すっげーな。それ。」
「魔石取り放題じゃん。」
ハジメが身を乗り出した。
そんな会話をしている時、どこからともなく腹の鳴る音が聞こえた。
3人がほぼ同時に音の正体を突き止める。
ミサキが恥ずかしそうに下を向いていた。
「ごめん。」
どうやら食事が待ち遠しいようだ。
「腹が減っては戦はできぬ。ってな。」
俺はすかさずフォローを入れた。
「いつの時代だよそれ。聞いたことねーぞ。」
ハジメが突っ込んでくれたおかげで笑いに変えることが出来た。
照れながらも笑うミサキ。
やっぱり笑顔のミサキはいいな。俺は顔が緩むのを抑えられなかった。
途端に足に激痛が走る。
痛さに悶えながら横をチラ見すると、ハルカが般若のような顔でこちらを見ていた。
鬼じゃ。ここに鬼がおる。
「仲のよろしいこと。」
ハルカがうふふと笑みを浮かべながら言ってくる。
余計に怖かった。
俺はこのことを紛らわせる為に料理を注文した。
俺とタケシは肉料理を、彼女達は軽いサラダなどを注文する。
やっぱり女の子なんだなと改めて認識した。
運ばれてきた料理に舌鼓しながら食事を楽しんだ。
なぜだか途中でニンニクやらニラやらの食べ物が俺の皿に投入される。
「苦手なのよ。頑張って食べて。」
ハルカがそう言いながら俺の皿に食べ物を入れてくる。
なんか多くないか?
苦手にしても多すぎる。わざとやってるのだろうか?。
ハルカは笑みを崩さずに食事をしている。
その真意は俺には理解できなかった。
食事を終えて時間になったので、集合場所へと足を向ける。
ロビーには100名ほどのギルダーが集まっていた。
凄い数だ。
これだけで軍隊と名乗れるんじゃないかと俺は思った。
指揮を執るプロのギルダーが壇上に立ち訓示を述べる。
一通りの説明が終わって俺たちはギルドを出た。
なぜかすごくわくわくする。
新たなる1歩を踏み出す感覚を俺は噛みしめていた。
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