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神域回廊  作者: 亜空間モドキ
第2章 新たなる1歩
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20/24

第19話 展開

 肌寒い風が通り抜ける校舎の屋上に2人学生が身を寄せ合っている。


「少し寒いわ。」

ハルカはそう言って、体をピタリとくっつけてくる。

肩に頭をのせて、甘えた顔を向ける。


近頃の俺は、そんなハルカのしぐさでも動じることが少なくなってきていた。


自然な手つきで彼女に手を回し抱き寄せる。

その指にはあの時買ったリングがキラリと輝きを帯びている。


あれからというもの俺たちはギルド活動をするでもなくハジメの傷が癒えるまで

こうして学校の授業に参加したりしている。


彼女達もなるべく俺たちに予定を合わせてくれるようになった。


最近はもっぱらこうして放課後に校舎の屋上で身の上話をすることが多かった。

なんだかんだといって俺達は互いを知らない。

話すことはたくさんあった。


ハジメも最近は俺達に気を使ってるのかは分からないが

用事があるとか言って先に帰ってしまうことが多かった。


なんともつまらない日々が続いていた。

学校帰りに神域回廊(パンドラ)に入り浸っていたあの頃が懐かしい。


すると、俺にギルドからの呼び出しが入った。

なんでも緊急性があるとかで急いで支部の方まで来るように言われた。

なんだろう。


俺はハルカと顔を見合わせた。


とりあえず行ってみるしかない。

彼女も付いていくといって、持ち前の車で移動することになった。


2人で車に乗ってギルドまで移動する。

ハルカの護衛の男はいつも通りだった。


「この前のアマチュアへの昇格の件かしら?。」

ハルカは思い出すように言う。


「分からないけど、それだったらハジメも呼び出されてるはずだ。」

「そういった話はあいつからも聞いてないけどな。」

俺はそう推測した。


ギルド支部に到着して中に入る。


心なしか前に来た時よりも人が多く、どこか忙しない様子を感じさせた。

やはり何かあったのだろうか?。


検査ゲートを通り抜けて受付の機械でギルドカードを通す。

すると所長室へ向かうようにと案内が出た。


今日はギルドの装備を着けていなかったので、記憶を頼りに進んだが、迷った。

するとハルカが少し呆れたように案内してくれる。

不甲斐ない俺。


エレベーターに乗って所長室があるフロアまで移動する。


廊下を通り応接室に入る。


「しばらくお待ちください。」

ロボットが出てきてそう言うとお茶だけ出して消えてしまった。


ああ。お茶が美味い。体に染み渡る。


なんてことを考えていると足音が廊下の方から響いて来る。


宮澤が顔を出した。


「今日は急いで来てもらって悪かったね。私も急に言われたものだったんでね。」

「今日はギルドマスターがお見えになられるようで。急いだんだ。」

相変わらずの早口で宮澤は要件を述べた。


足音がもう一つ近づいて来る。


目を移すとエンが既にそこにいた。


やはりこのギルドマスターは貫禄がハンパない。

大柄な体に鋭い眼光。露出した肌には古傷が顔を覗かせている。

どう頑張ってもこの人を超えられる気がしなかった。


「呼び出しておいてすまないが、2人は外してくれるか?。」

エンはそう前置きすると宮澤とハルカに目を移した。


宮澤はすぐに動いた。

こういうのは慣れているのだろう。


ハルカは「私も?。」と少し驚いていたようだが宮澤に従って部屋を出て行った。


サシでこの人と話をするのは気が引ける。

俺はそう思いながらも姿勢を正した。


鋭い眼光を向けながら、エンはゆっくりと俺の正面に座り込んだ。


言葉にしがたいほどの重い沈黙が応接室を支配していた。


ふいにエンは言葉を発した。

「ミサキとはずいぶん仲がいい様だな。」

エンは俺が着けているリングに目を向けながら言う。


え?。その話?。


俺は少し拍子抜けした。


「はい。仲良くさせてもらってます。」

そう思いながらも答える。


「ミサキと添い遂げる覚悟が、お前にはあるのか?。」

エンが低く威圧するように言った。


急に話が重くなった。

首を振ればその場で殺されてしまうんじゃないかと思うほどの重圧だ。


俺は頷く事しか出来なかった。


「そうか、ならいい。」

エンの言葉は少し軽くなる。


これって、ちょっとヤバいんじゃ。


「あの、ミサキとはどういったご関係で。」

俺は気になって聞いてしまった。


少しめんどくさそうな顔をしたエンだったが話をしてくれた。

「ハルカは俺の友である小坂に頼まれて、面倒を見ている。」

「お前がハルカと添い遂げるのであればその必要もなくなるということだ。」

「今は俺の娘が護衛をしているが、もう必要ないだろう。」


俺は言葉を失った。

ミサキがエンの娘だったというのか。


ミサキを嫁に欲しいなんてうぬぼれていたが、そこにはとてつもなく大きな壁があった。

この人を超えるか認められないとミサキとは一緒になれない。


俺はハルカの顔を思い浮かべた。

人は楽な方へと流されてしまう生き物なのである。


俺のミサキに対する恋心に亀裂が走ったように感じた。

脆いものである。


「それで、本題だが。」

エンが続けた。


今のが本題じゃねえのかよ。


「小坂が消息を絶った。」

エンは重い事実を述べる。


俺はまたしても言葉を失った。

何も話せない。


ギルドマスターが行方不明?。


そんな俺の様子を見てエンは補足として昔話をしてくれた。


「俺とあいつは神域回廊(パンドラ)が世に出てきた頃の第1世代だ。」

「未知の魔物、見たことも無い素材。俺達の心を動かすには十分だった。」

「あいつとは友でありライバルでもあった。いろんな神域回廊(パンドラ)に赴いて、攻略することに人生を捧げていた。」

「だがある時、「大天狗」と自称する妖怪に出会った。俺達は必死に戦ったが敗れた。」

「命からがら逃げだしたが、その時にあいつは「大天狗」に呪われてしまった。」

「人間生活に戻れず、神域回廊(パンドラ)でしか眠れない体にされてしまったのだ。」


俺の中でピースが繋がったのが分かった。


俺たちが警備していた神域回廊(パンドラ)に入って行った理由。

助け出した後もまた戻っていった理由も。

家に帰れず、ハルカの面倒を見てもらう必要も。


「今までは定期的に連絡を寄こしていたあいつだが、ここのところぱったりとそれが無くなった。」

「捜索クエストを出して探してはいるが見つからない。」

「それもこれもあいつがお前に出会ってからだ。」

「俺は簡易的な報告しか聞いてない。あの時の事を話してくれ。」

エンはそう言った。


俺はあの日の出来事を出来るだけ細かく説明した。


俺が持っていた神鏡を小坂が触れることが出来たことにエンはとても驚いていた。

途端に一際厳しい顔になるエン。


「まずいことになった。」

思い当たることがあるのか、エンはそう呟いた。


何がまずいのかさっぱり分からなかった。


「今の事、他言無用だ。」

そう言ってエンは部屋を後にした。


少し経ってから宮澤とハルカは応接室に戻ってきた。


「何を話したの?」

優しい声で彼女は聞いてきた。


「すまないハルカ。箝口令で話せない。」


途端に事態の重さを理解したのか、宮澤は慌てた様子で部屋を後にした。


部屋に取り残される俺達。


事態は深刻さを増しながら俺に重くのしかかっていた。






















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