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神域回廊  作者: 亜空間モドキ
第2章 新たなる1歩
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第13話 思いがけない出会い

 秋風が吹く昼下がり、山々の景色は紅葉に移り変わっている。

田んぼが広がる景色の中にポツンと佇む神社の聖域に2人の新人ギルダーがいる。


「あー暇だ。こんな辺境の神域回廊(パンドラ)に警備なんて必要なのか?。」

ふとハジメが退屈そうに声をあげる。


「必要だから俺たちがいるんだろ?。」

「価値のない神域回廊(パンドラ)は閉鎖されてる。」

俺は槍の素振りをしながら答える。


今日は彼女達はいない。

あれからというもの、俺たちは来る日も来る日も任務をこなすことに明け暮れていた。

それにいろいろと分かったこともある。


「保守」と呼ばれる任務は新たに発見された神域回廊(パンドラ)を監視する任務だ。

だがおいそれと神域回廊(パンドラ)が発見されることはない。

俺たちが初めて保守の任務に就いた時だって、俺たちが見つけた神域回廊(パンドラ)に関するものだった。世間は狭いのだ。


「運搬」は言わずもがな、ギルドに集められた魔石の移動や武器装備の搬入の手伝い。

ほとんどがロボット達がやってくれるので、人がやる事といえば記録や監視だけだ。

こう言ってはなんだが、「実入り」は少ない。経験も賃金も。


なので俺たちはもっぱら「警備」の任務に就いていた。


人気の少ない場所を選んでいるのも半分はトレーニングをするためだ。

ただボーと立っているだけではそこらのボランティアと変わらない。

少しでも装備に慣れておいて、クエストの依頼が来た時に備える。

それが今の俺たちに出来る、「やりがい」なのだ。


もう一つ分かった事は大抵のギルダーは同じ場所の神域回廊(パンドラ)を好んで任務を受ける。

確かに、勝手知ったる場所なら安定もしやすいだろう。

後、変なギルダーと遭遇することも少ない。そこには顔見知りが多いのだ。


「巡回がてら用を足してくるわ。」

片手で挨拶しながらハジメは言った。


「ああ。」

俺は短く返事をする。


いつものルーティーンなのだ。反応する気力もなかった。


俺はトレーニングを中断して1人で転移陣の前に居座る。

ポケットから{のっぺらぼう}に貰った手鏡を取り出して弄り廻す。


結局、このアーティファクトは何の効果があるのか、未だに分かっていなかった。

使い方も知らないで、ただ呪われているというのは何とも気持ちが悪い。

光を反射させてみたり自分の顔を写したりしていた。


何も反応しないアーティファクトを見て俺は呟いた。

「なんか刺激になるようなことが起きねぇかな。」


すると、みるみる手鏡に熱がこもる。

何だ?。明らかに熱くなってる。


俺は手鏡をのぞき込んだ。

くすんでいて、良くは見えないが誰かが歩いてくる様子が手鏡に映る。


俺は反射的に振り向いた。

そこには誰もいない。神域回廊(パンドラ)への転移陣が青く光っているだけだ。


おかしい。覗き込んで何か映るとすれば俺のさえない顔だけのはずだが。


手鏡に目を落とすとさっきの人物がより大きくなっていた。

ハジメじゃない。それにだんだんこっちに近づいているようだ。

その姿にも見覚えは無かった。

ここの神社を参拝に来る人は限られる。年配の人しか見たことが無い。


だが手鏡に映るその人物はどう見ても若そうな人だった。

俯いているが男の人だと分かる、しっかりとした顔つきにボロボロのコートを着ている。

ギルダーでもなさそうだ。


こっちに近づいてくる足音が聞こえる。


手鏡から視線を上げると、さっきまで手鏡に映っていた人物がそこにいた。


俺は手鏡をポケットにしまい、槍を握りしめる。

明らかに不審者だ。


背は俺よりも高く、身なりはみすぼらしい。

疲れた顔をしていたが、目だけはこちらをしっかりと捉えていた。


「ここはギルドの管轄です。これ以上の立ち入りはご遠慮下さい。」

俺は毅然とした態度でそう告げた。


男は歩を止めることなく近づいてくる。


「俺はいいんだ。そこの神域回廊(パンドラ)に用がある。」

その男はだるそうな顔をしながら言ってきた。


パンドラという言葉を知っている。それだけでもギルド関係者のように感じた。

だけど、恰好がどう見ても不審者だった。訳アリのホームレスか?


様々な憶測が俺の脳裏をよぎる。


「ギルド関係者であればギルドカードを呈示してください。」

俺はマニュアル通りの対応をする。


その男は物凄くめんどくさそうな顔をしながらも

ギルドカードをコートのポケットから取り出して見せてくれた。


俺はそれを見て目を見開く。


ボロボロだが、そのギルドカードには「マスター」と刻まれていた。

それと同時にギルドカードに記された名前に目がいった。

「小坂 カズキ」


聞いたことのある苗字だった。


「もしかして、ハルカの親戚の方ですか?。」

俺は素直に疑問をぶつけることにした。


「ん?俺の娘を知ってるのか?。」

意に介すように小坂が言った。


衝撃だった。


まさかハルカの父親がギルドマスターだったとは。


そんな時にハジメが巡回から帰ってきた。


最初は

「誰だこのおっさん。」

とか言っていたハジメだが


俺が説明していく内に青ざめた顔に変わっていく。


最後には「ハルカさんのお父様。」

とか言っている始末だった。

なんという手のひら返し。


そんな様子を終始興味なさげに聞いていた小坂だったが、

俺が自己紹介をしたときに態度が少し変わった。


「君が佐藤 タケシ君だったのか、話はエンから聞いてるよ。」

穏やかな声で小坂は話す。


「さっき持ってたのが例のアーティファクトかい?」

「少し見せてくれないか?。」

そう言って俺のポケットを指差す。


俺は頷いてポケットから手鏡を取り出した。


ひょいと手鏡を掴んでじっくりと見る小坂。


「え?なんで触れるんだ?。」

ハジメは驚いた声を出していた。


俺もビックリしていた。呪いがあるはずなのに。


「ああ、呪いのことか。俺は大丈夫なんだよ。」

そう言いながらも小坂はまじまじと手鏡を観察している。


「あの、不躾なのは承知なんですが、それが何か分かりますか?。」

俺は畏まって小坂に聞いた。


「俺の推測でいいのか?。」

そう言いながら手鏡を返してくれる。


「そのアーティファクトの名前自体は神鏡という。聞いたことぐらいはあるだろう。」


神鏡?。 俺は首を傾げる。


フッと笑いながらも小坂は続けた。

「神社の社に祭られていたりするものだ。」

「だがな、それは何かおかしい。普通は呪われてなんかいない代物だ。」

「{のっぺらぼう}と呼ばれる妖怪に渡されたというのも何か引っかかる。」

「もしや・・・いやそれはありえないか。」

何かが思い当たるように小坂は言った。


俺はその話がとても気になった。

「その思い当たる事を聞いても?。」


「ああ。俺が思い当たったのは{八咫鏡(やたのかがみ)}だ。」

「それは三種の神器の一つとして皇族に大切に祀られている。」

「故にこんな辺境で出てくるのはありえないと思ったんだ。」

「それに、言い伝えによると{八咫鏡(やたのかがみ)}は大きい。このような小ささではないはずだ。」

「だがな・・・。」

なぜか最後で小坂は言葉を濁した。


そんなことを言われたら不安になってしまう。

聞いたのが間違いだったのかもしれない。


「まあ、あまり気にするなよ少年。人生は長い。」

小坂はそう締めくくった。


余計に気になるじゃないか。


俺が感謝の言葉を告げると、小坂は小さく頷いて転移陣へと歩みを進めた。


最初はただの不審者だと思っていた。

だが話してみると気さくで気のいい人だと分かったのだ。

顔も悪くなかったし、そういうところは彼女と似ていると思った。

イケオジとはこういう人のことを言うんだろう。


俺たちは小坂が姿を消した転移陣をしばらく見つめているのであった。






























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