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神域回廊  作者: 亜空間モドキ
第2章 新たなる1歩
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第11話 下っ端ギルダー

 夏が終わり、秋が訪れる。道行く街道には色を変えたイチョウの葉がひらりと落ちていく。

そんな街道を4人の男女が歩いている。


俺が進路を決めたあの日から数週間が経っていた。

高校2年の生活もあと1学期分を残すのみとなっていた。

進路が決まったなら、卒業までに早々と動くのがセオリーとなっている。


俺たちはあの後、彼女達に頼み込んでギルドの登録手続きとそのイロハを教えてくれと頼み込んだ。

ハジメがハルカに頼み込んだのだが、ハルカが来るとなれば必然的にミサキも来る。

そうすると、どうしても予定を合わすのに時間がかかる。


彼女達も暇ではないのだ。


「今日はつき合わせちゃって悪いね。先輩となるギルダーを紹介してほしくてさ。」

俺は手を合わせながら彼女達に言う。


そんな建前を並べていたのだが、俺たちは内心ガッツポーズをしていた。


なんといっても今日は休日。

いつもの制服姿やギルドの装備も無いので、彼女達の私服を拝めることが出来る。


ボディラインを強調しつつもおしゃれに着こなしているハルカ。

いつもはクールビズっぽい服装をしていたミサキだが、今日はミニスカートがよく似合う格好だ。

それはそれは新鮮だった。

俺たちが目のやり場に困るほどのオーラを2人は纏っていた。


今向かっているのは俺たちの町にあるギルドの分屯所だ。

そこで初回登録を済ませて、俺たちもギルドの一員になれるのである。


ギルドは誰しもが簡単に入れる組織ではなかった。

ギルダー専用の学校を卒業するか、地道にボランティアのような活動をして功績を認めてもらうかだ。

俺たちは宮澤に推薦状をもらっていたので、特例なのだそう。

意外なところから滑り込めたのだから、俺たちはラッキーだ。


そうこうしている内に分屯所に着く。

支部ほどの大きさではないが、ここも立派な建物だった。

都会ではないのに意外と人がいるもんだ。


検査ゲートを通りカウンターへと歩みを進める。

俺たちだけだったら、完全にあたふたしてたところだ。


カウンター横にある機械に必要な情報を入力していく。

彼女達は親身になって、説明してくれた。 ミサキはだるそうな顔をしていたが。


一通り操作が終わると、一枚のカードが出てくる。

ギルダーとしての身分証だ。

ランクは俺もハジメも「プライベート」となっていた。

まあ、いわゆる新人というか下っ端というか。最初の1歩だな。


「おめでとう、これであなたたちもギルドの一員ね。」

ハルカが嬉しそうに祝福してくれる。


「いやあ。初日だってのに舞い上がっちゃうよ。」

ハジメも嬉しそうに言う。


俺もまんざらでもなかったのだが、ハジメほど素直に喜ぶことが出来なかった。

なぜだろう。何か違和感があるような。


そうしていると案内ロボットがやってきて俺たちを装備所に連れて行ってくれることになった。

カウンター横にある渡り廊下を通り、別の建物まで移動する。


そこで俺たちは目を見開いた。


一言でいえば壮観だった。


様々な防具を置いているショップや用途に応じた武器を売っているブースもある。

見たことも無い最新装備に俺たちは目を輝かせる。

俺たちは子供のようにはしゃいでしまった。


「私には分からないわ、その感情。」

ふとミサキが言葉を溢す。


その言葉に俺たちは沈黙した。


なぜこの気持ちを分かってくれないのか。逆に俺たちも理解に苦しんだ。

そう思いながらもミサキを見る。


「何よ。」

少し不貞腐れた態度でミサキは言う。


可愛い。くそ。ダメだ。

負の感情が一気に吹っ飛ぶ。


まるで感情を読まれているような。手のひらで踊らされているのではないだろうか。

俺は何があってもミサキには勝てる気がしなくなった。



案内ロボットの催促をする音声で俺は我に帰る。



ショップコーナーを抜けた先にロッカールームがある。

その手前には装備を管理する、カウンターが並んでいた。

そこには、いかつい顔をしたおっさんが腕を組んで待っている。


「おう。お前らが今日入ってきたっていう新人か。」

俺たちを見るなりおっさんは豪快な声でそう言った。


「ミサキの装備もいいのが入ってるぜ。」

続けざまにおっさんが言う。


そう言いながら俺たちには支給品の装備一式を

ミサキには少し豪華になっている装備をそれぞれ手渡してくれる。


おっさんは豪快ながらも装備の説明をしてくれた。


基本的なプロテクター付きの制服。特殊ゴーグルと腕に着けるデジタル機器。

護身用のサバイバルナイフと装着具。

武器は剣か飛び道具を選べるようだった。


「すっげー。なんでもありかよ。」

そう言ってハジメは両手で扱う剣を選ぶ。

その立ち姿だけでも強そうに見えてしまう。


俺は使い慣れていた槍を貰うことにした。

俺たちが持っていた貧相な槍とは違い、ずっしりとした重みがあり、切っ先は鋭い。


「今日の目玉はこれだな。」

そう言って、おっさんがやや小ぶりのライフルを取り出した。


「A85プラズマライフル。 ちょっとやそっとではお目にかかれない代物だ。」

「親父さんに感謝するんだな。」

おっさんが興奮気味に話した。


平然とそれを受け取るミサキ。


その様子に満足したのか、大きく頷きながらライフルの説明をした。

「こいつの威力だったら熊でも相手に出来る。試しに射撃場で撃ってこい。」


ミサキは念入りにライフルの取り回しを確認する。


「あんた、凄いわね。」

ハルカもそんなミサキの様子に驚いているようだ。


「行きましょ。」

ミサキは短くそう言うと、俺たちを射撃場に案内した。というか、ついていった。


それにしてもミサキの父親ってどんな人なんだろう。

武器の開発者だったりするのだろうか。

俺はそんな悠長なことを考えていた。ミサキのライフルの威力を見るまでは。


射撃場には他のギルダー達が武器の確認や訓練を行っていた。


この手の飛び道具は扱いがはっきりしている。

個人で持つのは違法になるのだがギルドや関係各所、国の一部機関では所持使用を認められている。


小火器は獣系の魔物には一部を除いて、特に有効であると証明されていた。

なので使い方次第では神域回廊(パンドラ)でも活躍することが出来るのだ。


しかし普通の小銃では魔物に対抗できない。

甲殻系の虫には弾かれるし、大きな獣系にはそもそもダメージが通らない。

あくまで対人用の武器なのだ。

そんな理由でギルダーでも小火器を使用している人は稀だった。


ミサキは準備を終えるとすぐに的に向かってライフルを構えた。

バコン!!と大きな音が鳴り響く。


驚愕だった。


射撃の反動はほとんど無いように見えるのだが、的には拳大の穴がぽっかりと開いている。


「いい威力だろう。レールガンの技術を応用している。」

おっさんがいつの間にか隣に来ていた。


「ええ、気に入ったわ。」

ミサキもクールに答えている。


なんというシュールな光景だろう。

俺はますます彼女に惚れてしまいそうだった。


周りにいたギルダー達も、もの見たさでワラワラと集まってくる。

それだけ珍しいライフルなのだろうか。


「見せ物じゃないし、戻るわよ。」

ハルカがそう言って装備所へと踵を返す。


どうやらギルドの支給品や武器といったものは

それぞれの場所で保管しなければならないらしい。

当然っちゃ当然か。


ギルドから発せられる任務やクエストと呼ばれる仕事に従事する時のみ

使用を許可されるという仕組みなのだ。


俺たちはその仕事の違いが分からなかったのでハルカに詳しく聞いた。


基本的にギルダーはその管轄にあるギルドの指示によって仕事をする。

「任務」と呼ばれる仕事は主に保守、警備、運搬などのいわゆる雑用だ。

一方、「クエスト」と呼ばれる仕事はパンドラの探索、採集、攻略といった、危険を伴うものだった。


それぞれのランクに応じて与えられる仕事が変わる。

適材適所をギルドは大事にしているそうだ。


しかし中にはフリーとしてギルドに所属しながらも各地を転々とする猛者もいるらしい。

だが大抵は移動命令を受けない限り、生まれ育った街でギルダーとして働くというのが大筋とのことだった。


俺たちはハルカの説明を聞いて安心した。

つまり俺たちは好きなようにギルドで働ける。

街を出ようと思えば出られるし、この街で腰を落ち着かせる事も出来る。


その後一通りの施設を案内してもらった。


そうして俺たちのギルダーとしての初日は終わった。

後はどういうギルダーを目指すのか。


俺もハジメも真剣に考えなくてはなるまい。

























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