23 愛され少女は超無敵
愛情とは。
一方通行だと、虚しい。
一般的に、片想いは楽しくもあり苦しくもある。好きになって貰う為の努力は時に楽しく、時に苦しい。それが空回ったり、周囲への嫉妬に繋がったりすれば途端に痛みを伴うし、なんなら想いが通じてもすれ違えば傷つけ合う。
愛情とは、たとえ通じ合えていても、相手が何も返してくれないと虚しくなる。
無償の愛など存在しない。
愛したからには愛して欲しい。
誰にだって、そんな願望が隠れている。
そう、勿論、グリンレインにだってあった。
大好きな婚約者に、好きって言って欲しいなぁ~という乙女心が。
ところがどっこいメンタルからのお言葉。大好きを通り超して愛しているときた。
普段から愛を囁かない男がここぞと言うときに愛を叫んだら、受け取った側はどうなる?
「きゃぁああ~~っ」
光る。
「……とはならないよね!? どういうこと!?」
「なんですかこの光はぁー!!」
まさかの味方からの攻撃(?)に、吹き飛ばされないよう伏せた騎士達が叫ぶ。身体が軽くて誰よりも吹き飛んだ悪徳妖精は、ピンク色の光が彗星のように天へと昇っていくのを呆然と見上げていた。
『嘘だろなんでこんな大魔法……! 命を懸けてもできない規模の魔法が発動しているんでェ……!?』
とっても重大な事を言っていたが、残念ながらとっても吹っ飛ばされていたので誰の耳にも届かなかった。なんなら姿すら映っていない。
「鼓動が高鳴る……身体が熱い……何も考えられないくらい幸せで、頭の中がお花畑ですわぁ~~!」
頬に手を当て、きゃーっと黄色い声を上げるラブシャワー。
自分ではっきり頭の中がお花畑というあたり、自分の恋愛脳をしっかり自覚していた。
いつか打ち返してくれたら嬉しいなーなんて気分で剛速球を投げ続けていたグリンレイン。受け取って貰えたらではない。受け取ってくれているのはわかっていたので。いつかメンタルの言葉で、想いを伝えてくれたら嬉しいなと呑気に思っていた。
それがまさかの。
愛。
愛だ。
「愛情チャージ!!」
愛である!!
「フルパワーチャージ!!」
そんなの喜びで、愛しさが大爆発するって物だ!!
「迸れわたくしの愛! メンタル様への愛!!!! メンタル様がお返しして下さったのに、出し惜しみする暇がどこに!?」
どっかんとぶち上がるピンクの光。
良い感じに裂けていた衣装は元通り。どころかキュラキュラと衣装がヴァージョンアップされていく。
ラブシャワーの胸元で咲いていた紫の花から星が生まれて、星屑となってラブシャワーの身体を包んでいく。
左右の丈が違っていたショートブーツが爪先の丸いヒールブーツに。パニエたっぷりの白いスカートの上に紫色のレースが広がる。可愛らしく露出していたおへそが白いリボンできゅっと隠されて、リボン結びのリボンが白い羽になる。
胸元の花は星となり、広がっていた白い布が星屑の散らばる紫のレースに。金髪のツインテールを結んでいたリボンが解けて、ほどけた髪とリボンが絡み合って編み込みの三つ編みになった。
「愛の奔流が止まらない!」
白から紫に変わった手袋を翻し、両手でハートを作って、吹っ飛んでしまったメンタルに向かってバチコーンッとウインク。
「わたくしのラブ、あなたにだけの流星群! ラブシャワースペシャル!」
ビシッとポーズを決めた魔法少女、ラブシャワースペシャルは、満点の笑顔で両手を広げた。
「あなたからの愛! 誰にも渡せませんわ!!」
そう言って、マサカリを担いで飛び上がった。
今まで以上に高く。それこそ星になる勢いで。
「わたくしの愛は流れ星……いいえ流星群! 流れ落ちても止まらない、愛の奔流!」
ピンクの光を纏ったラブシャワーが、高く飛び上がった天から一直線に落ちてくる。
「何度でも何度でも! 終わってもまた来ますわよこの時期が!! 常に巡り続けます!! 愛に終わりはっ」
卵めがけて落下する。距離が近付くほど加速していくラブシャワー。加速する度に、その輝きは強くなる。
「ありませんわぁ――――っ!!」
その星は、暗い夜を切り裂いた。
魔法少女、力が溢れるとパワーアップしがち。




