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愛は流星群~受け取ってください愛しい人!~  作者: こう


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17 気の緩みは油断の元


 その後の厳選なる部隊配置により、編成された討伐隊は十人。

 隊長に古参の騎士が配置され、その補助にメンタル。隊員として相性の良いコックと実力ある数名が配置された。

 そこには当然のように魔法少女ラブシャワーと(自称)魔法少女アイラブミーの名前もあった。


 アイラブミーはセラミックとして名前を書かれていたのだが、本人がわざわざ書き直した。戦闘中は魔法少女()なので、アイラブミーと記載するのが正解らしい。

 乙女の拘りにメンタルが反論しようとして、コックに止められていた。年頃の乙女の拘りを否定すれば倍返しされるとわかっていたので。


 森の奥にいる魔物についてはグリンレインも目視していたので、存在は知っていた。もしかしたら置いていかれるかも知れないと警戒していたが、ちゃんと連れて行って貰えると知り、歓喜に飛び跳ねた。ここぞとばかりに後方支援に回されたらどうしようかと思っていた。

 本拠地である砦を守るのが一番なので、魔法少女に砦を任せて騎士達で魔物狩りに出掛けられたらどうしようかと思っていたのだ。


 実際その案もあったが、メンタルの事になるとブレーキのないグリンレイン。劣勢を感じ取れば砦を飛び出す危険性があった為、護りに徹する策はなかった事になった。

 絶対飛び出す。間違いない。

 そんな危険人物を残してはいけなかった。


「お役目とわかっていますが、メンタル様とご一緒できて嬉しいです」

「……遊びではないから、気を引き締めて進むぞ」

「はいっ」


 いつ魔物が飛び出してくるかわからない森を進むので、グリンレインは早速変身していた。巨大なマサカリを軽々と持って、素っ気ないメンタルにメロメロしている。

 そんなグリンレインに、こいつぶれないな……と、悪徳妖精は一行の最後尾に続きながら呆れていた。


「それにしても、今回の見送りはおかしかったですね。いつも仏頂面の面々がにやけていたというかスケベ親父の顔になっていたというか……」

「アイラブミーさん。その喩えはやめて差し上げようね」


 同じく魔法少女の衣装に身を包むアイラブミーが首を傾げる。衣を着せない言葉選びに、視線を逸らしたコックが軽く諫めた。

 彼は身分の高い年下の女の子があられもない格好で隣を歩いているのに未だ慣れていなかった。戦闘ではそれどころではなくなるが、そうでないときに隣に並ばれるとぎょっとする。


 露出に興奮するとかそう言う意味でなく、昔から知っている友人の妹が平民ですらしない格好をしていて見てしまうと言うより居たたまれない。太ももの絶対領域が絶対見ては行けない領域だ。

 ちなみに古参の騎士達もコックと同じ症状になる者が多い。見張り台の騎士達は程よく距離があるからこそ盛り上がれるのだ。


「今更私の格好でニヤニヤするわけもないですし……そこそこ緊迫した出陣のはずですのに、何故あんな顔を……」


 グリンレインはメンタルしか見ていなかったが、セラミックは全体を見ていたので異変に気付いていた。

 理由まではわからないが、一部が浮き足立っているような……。


「気の緩みは油断の元。どんな敵が待っているかわからないのだから、もっと緊張感を持つべきです!」

セラミック様(アイラブミー)に言われたくないなぁー!!)


 士気を高めると同時に緩ませているのが魔法少女である。

 今回はちょっと違うが、大多数の男達のネジを外している自覚を持って欲しい。


 若者達の会話に笑いそうになりながら、間違った事は言っていないので気を引き締めようと吹き出さないよう必死な古参達。

 一方メンタルは別の意味で必死だった。

 隣を歩くグリンレインことラブシャワーを直視できなかった。


(この戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズこの戦いが終わったらプロポーズ)


 こいつが一番集中できていなかった。


 ちなみに隣のラブシャワーは隙あらば手を繋げないだろうかとソワソワしている。流石に戦闘の邪魔になるので自重する心と好きな人に触れたい浮ついた心が戦っていた。拮抗した戦いが脳内で繰り広げられている。


 ある意味似たもの同士だった。


(プロポーズ……その為にも俺にもグリンレインにも周囲にも大きな怪我がない事が理想だ。誰か重傷にでもなれば優しいグリンレインは気にしてしまう……そんな中でプロポーズされても素直に喜べないかも知れない)


 そんな事はない。

 グリンレインはメンタルしか見ていないので、いつでもどこでも愛を伝えられたら有頂天だ。


(いや、そもそもプロポーズに喜んでくれるのか……? グリンレインは俺に好意を伝えてくれているが、俺の態度はそんな愛も冷めるほど悪かったのでは……? 周りに悉く怒られていたんだ。グリンレインだって傷ついている……プロポーズより先に謝罪した方がいいのでは……)


 展開によっては愛想を尽かされているのではと青ざめる。

 一般的にはあり得るが、よく見ろ。

 隣で手を繋ぎたいとソワソワしている女が愛想尽きているはずがない。


(というか、一言の謝罪で許される態度だったか? 長い事グリンレインを傷つけてしまったのだから、誠心誠意、謝礼の品を用意して頭を下げるべきでは……いや、謝罪しようにも俺はグリンレインが戦いにでるのは反対だから、それを変えないと謝罪しても意味は……妥協できるのか俺は……プロポーズの話で有耶無耶になったが、今回の戦いだって……)


 反省のない謝罪は次の喧嘩の元だ。

 態度が悪かったと謝罪はできても、そこに繋がるグリンレインを戦いに近付けたくないという意識は残ったまま。

 改めてその部分について話さない限り、メンタルの望む話はできないのでは……。


 ここで、メンタルしか見ていなかったラブシャワーが気付いた。

 メンタルの足元。土がボコッと隆起した。


「メンタル様! 危ない!!」

「!?」


 メンタルにタックルするように抱きつき、その場から飛び退くラブシャワー。二人が木の上に避難したのと、土の中から爆発するように巨大な花が咲くのは同時だった。


 すかさずコックが踏み込む。

 伸縮する蔓の合間を縫って、花の中央に槍を突き刺した。断末魔が響き、全ての蔓がコックに集中する。それを、コックの槍に降り立ったアイラブミーの短剣が切り裂いた。

 そんな連携を、メンタルは呆然と見下ろした。


「お怪我はありませんかメンタル様……!」


 ラブシャワーに横抱きされながら。

 横抱き。

 つまりお姫様抱っこ。


 ラブシャワー……グリンレインの身長は、メンタルの胸元。変身しても身長差は変わらない。その細腕も変わりない。巨大なマサカリを振り回すが、グリンレインは小柄なままだ。


 その小柄なグリンレイン、ラブシャワーがメンタルの巨体を横抱き。

 お姫様抱っこ。


 メンタルは口を開けて放心した。


「まさか足元から来るとは驚きました。ですがご安心ください!」


 放心しているメンタルに気付かず、ラブシャワーは純真な顔で笑う。


「わたくしがメンタル様を何者からもお守りいたしますので!!」


 眩しい、太陽のような笑顔だった。

 地面に降ろされたメンタルは、そのまま四つん這いに頽れた。

 関係性とか謝罪とかプロポーズの前に、自分が情けなさ過ぎて。


「あれ? メンタル様!? メンタル様ー!?」


 頽れているメンタルを、木の上から悪徳妖精が憐れみを込めて見下ろしていた。

 まずは余所事に囚われず、目の前の事に集中する事からである。



古参(若いな……)


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