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愛は流星群~受け取ってください愛しい人!~  作者: こう


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12 わかっているけどすれ違う


 分家の令嬢達の勢いはすごかった。

 とくにメンタルと同世代の、彼の婚約者候補だった令嬢達の勢いはすごかった。


 彼女たちは小さなグリンレインがメンタルに向かってしゅきしゅきだいしゅきとラブコールしている様子も、無碍にできないどころかまんざらでもないメンタルの様子も見ていたので、お前らもう付き合っちゃえよ!! と思いながら日々過ごしていたのだ。

 うっかり拳と言葉が漏れて、同じ気持ちであると団結して、巻き込まれる前にこいつらを纏めてしまえ!! となったのはある意味必然だった。


 当たり前だ。そうしないと自分達が巻き込まれる。

 悲劇になるのが見えていて、何もせずにいられるわけがない。

 自分の運命だぞ。回避できる悲劇は回避しろ!!


 ちなみにグリンレインはメンタルにアタックしながら解決策はないかと調査中だったので、彼女たちが動かなくてもいずれ動いた。クラッシャ家本家の前例などなかなか調べられなかったので、婚約適齢期まで調査が終わっていなければ悲劇は起こっていたかも知れない。

 しかし令嬢達の活躍により、そんな悲劇の芽も潰えた。

 周囲の後押しもあり、グリンレインの押しかけ婚約は成功したのだった。


 グリンレインは大喜び。飛び跳ねて喜んだ。大人達は仰天したが、幼い頃からラブコールをしていたグリンレインを知っているので、前例があるなら……と一部を残して引き下がった。


 が、ここで予想外の事態。

 メンタルが、グリンレインを避けるようになった。

 見るからにグリンレインへ好意を寄せているのに、である。


 ――メンタルにとって、グリンレインは日常の象徴だった。


 日常といえばグリンレイン。平和と言えば彼女の笑顔。

 それくらい、戦いとは無縁な場所にいる令嬢だった。

 そのグリンレインがメンタルの婚約者になって、クラッシャ家へ嫁入り……つまり、血と穢れの満ちた戦場の近くへ来る。


 メンタルの胃はひっくり返った。


 戦いから遠いところにいるから安心していたのに、周囲を味方に付けて壁を突破して飛び込んできた。まさしく出会ったあの日、空を飛んで家の庭に現れたように。


 メンタルは狼狽えた。


 過ったのは、戦場から父が帰還する度に安堵と恐怖で泣いていた母の顔。どんどん憔悴して、儚くなってしまった母の姿。

 その姿が、グリンレインと重なる。

 メンタルは自分こそが愛する人の疫病神に思えた。


 つまり。

 日和った。


「お前お前お前お名前の通りメンタルクラッシュしている場合ですがここは奮起して君の為に必ず帰るとフラグをおっ立てるところでしょう!!」

「フラグはフラグでもそれは死亡フラグですわ許可できません! ですがメンタル様のメンタルマジ脆弱ですわ!! 本気で愛しい人が妻になるのですから根性出しやがれですわぁー!!」

「アイツあの野郎なんとも思っていない女を血筋の為だけに妻にしてなんの柵みもなく戦う方が楽だとか思っていやがりますのん? まさかそのつもりでしたのん? 本妻と愛人抱え込む気でいやがりましたのん? ふざけていやがりますのん!?」

「言葉が乱れていますわはしたなくてよぅうおおおおお!!!!」


 以上、グリンレインを避けるようになったメンタルを見た、協力的な分家のお姉様方怒りのお言葉である。

 火力が高い。


 分家のご令嬢達は味方だったが、当のメンタルから避けられるようになったグリンレインは手紙を手に涙目になった。

 送っても送っても返ってこない手紙。

 会っても合わない視線。

 その癖、グリンレインが泣きそうになるとオロオロと気にし出す、絶対こっち見ているだろうと突っ込みたくなる様子。

 苛烈なお姉様方と、メンタルの戦友であるコック・リマインドなる男の助言もあり、メンタルが色々考えているのはわかっていた。一人で考えて、一人で決めてしまった事も。

 グリンレインに、平和な場所にいて欲しいから。


 ――幼いながらに、グリンレインとメンタルの間にある壁の高さを知っていた。大人達が何度も諦めさせようと語ったから、クラッシャ家の大事な役割もわかっている。


 グリンレインは妻として、そんなメンタルを支える気でいた。得意ではないが、愛する人を守る為ながら頑張れると思っていた。

 でも。


「わたくしは、お邪魔ですか……?」


 グリンレインを遠ざけるメンタル。

 このままでは、後方支援も後方支援。遠いところまで追いやられてしまいそうだ。

 脳筋のグリンレインだって、愛する人の為なら騎士の妻の極意を学び、メンタルの為になればと思っていたのに。

 しかしメンタルは、グリンレインを遠ざけようとする。


「わたくしは、メンタル様と一緒に戦いたいのに……」


 後方支援だって充分な戦力だ。

 夫の為に、愛する彼の為に、帰ってきて貰う為に。


 なのに、メンタルはグリンレインに背を向けて、こちらを見てくれない。

 それはとても、悲しい事だ。


(真面目に考えすぎてしまうメンタル様だからこそ陥った事態……そんなあなたも可愛くて大好きですが、そろそろこっちを見て欲しいです!!)


 ずっとこのままでは、それこそメンタルの恐れる、グリンレイン消耗事件に発展しそうだ。


「わたくしに、メンタル様のお隣に並べる力があれば……」

『その力、手に入れられるとしたらどうしやす?』


 手紙が来ないならわたくしが行けば良いと乗り込んだクラッシャ家に用意された婚約者の部屋。その窓際で呟いた言葉は、にゅっと現れたぶちゃいくな猫に拾われた。

 目を丸くして猫を凝視するグリンレインに、ぶちゃいくな猫……悪徳妖精は、にちゃりと笑った。


『あっしと契約して、魔法少女にならねェかィ?』

「詳しく」

『あっれ?』


 勧誘にきたはずなのに、悪徳妖精はグリンレインにがっしり尻尾を掴まれた。


 皆は猫の尻尾、掴んじゃダメだぞ!



メンタルのメンタルは強くないです。

そしていい子は怪しい話を始める相手から即座に逃げようね。

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