第3話 レベル65の女
評価などよろしくお願いします。
2人は遅れながらも体育館に到着する、ゴブリンの咆哮は明らかに近づいていた。
教師も生徒も恐怖、脳がこれは現実的ではないと理解を拒みフリーズしてしまう。その中で零は再度木刀を握り直す。
「北川先生! レベルも高いんだし避難誘導をしてください! 俺が時間を稼ぎますんで!」
俺も死ぬのかなぁ……それは嫌だな……でも見捨てるのはもっと嫌だ。
「ば、バカな事を言うな! 君はレベル0でそもそも生徒だ! 俺たちは君らを保護者からお預かりしてんだぞっ!」
「俺が今行かなきゃ、被害が増えるっ」
「あぁ! ちょっと先輩〜!」
そのまま走り出した瞬間に奥の廊下の角から一体のゴブリンがまた汚らしい笑みをして飛び出す。
女子生徒たちは恐怖と悍ましさで絶叫。
「きゃああ!!!」
ゴブリンが飛びかかる……! マズい、この距離では間に合わないッ!! 木刀を投げなくては……!!
零は距離的に間に合わない事を悟り木刀を投げようとした、その瞬間に飛びかかったゴブリンは鈍い音と共に壁に叩きつけられていた。
そこに立っていたのは黒髪ポニーテールの長身の女子生徒だった。
制服の袖は捲られており戦う準備万端と言ったところか。それを見た零は強く勇気ある者が他にもいた事に歓喜する。
「危なかった……」
だが安心も束の間、ゴブリンは起き上がる。
だが少女は一歩も下がらない。ボクシングのステップの様に動く。
「あと2秒」
謎の発言をする。その時にゴブリンが突撃する。その瞬間に半歩だけ身体をずらし空振りにさせた。
そのまま顎をスカートをヒラリとさせつつ膝で蹴り上げて浮かばせたところを、空中でボディブローを喰らわせる。
壁に叩きつけられバウンドして地面に落ちたゴブリン。
そして、そのまま動かなくなった。
「終わり」
そう彼女の2秒と言う発言は、たったの2秒で片付けるという宣言であった。零は目を丸くして驚く。
「すげぇ……誰だか知らないけどやるじゃん!」
そう発言するとポニーテールをフサァっと揺らし振り返った。
「梶原君?」
「え?」
「去年は同じクラスだった暁凛よ。今年は隣のクラスだけど」
「……ああ! すまん! 接点が少なかったから忘れていたよ!」
嘘で誤魔化せばいいのに馬鹿正直に忘れていたと言う零。それに別に気にしてなさそうな凛。
そして、その凛という人間は運動神経抜群、体育祭では女子MVPだ。因みに男子は無論、零だ。
だが彼が忘れていた通り2人は、あんまり個人的な会話をしていなかった。
凛は零の木刀が真っ赤で微妙に光っている事に違和感を感じた。
「その木刀……何? スキルってやつ?」
「あー、それ俺もわからなくてさ」
「そう」
短い返事。そこにわざわざ着いてきた初音は彼を見るとデータが浮かんで見えた。
えっ!? ナニコレ! 先輩達の見えている情報、私のユニークスキルとやらの名前を考慮すると。……それが今自動で発動しているのかぁ!
つまり、先ほど教室にてスマホで確認した自身のユニークスキル解析眼とは、この事かと初音は瞬時に理解した。
「ちょい待ちー!! 梶原先輩は【装備強化(耐久)Lv1】を持っています! それが原因です!」
2人はちっちゃい初音の方を見ると、彼女の右目の前にはメガネ程のサイズの水色の魔法陣があった。
「えっ、あー……そう言えば獲得した気がするな。てかわかるのか? すごいなぁ」
「スキルねぇ……あなたレベル0なのにね」
零は苦笑いしか出来なかった。
そして、また3人のスマホがけたたましく鳴る。
——
【WARNING】
種族名: ゴブリン
個体数:17
接近中
——
凛は画面を見た。
「17体接近中」
初音は震えながら言う。
「む、無理ですー!」
零は木刀を肩に担ぐと一言言う。
「いや、やるしかないんだ」
そう言うとフリーズしていた教師に言う。
「早く全生徒を体育館内に避難させてください! 俺たちは前に出ます」
教師は迷った。
守る存在に守られることに。教師として身体を張れない自分に、北川は無力さと情けなさを感じた。
しかし、彼の目は迷いなく本気だった。それに同調する凛。
それを見て生徒を誘導し切ると、彼らを信じて体育館の重い鉄の扉を閉めた。
2人の近くにいる黒瀬初音も戦えると勘違いして一緒に……
「私も戦おう、1人より2人」
零は眩しい笑顔で応えた。
「助かる」
初音は2人を見つめ、ユニークスキル解析眼を発動した。
レベル65とレベル0
なのに、どちらも迷わずに前に出ている。初音はその背中が頼もしく見えた。
廊下の奥からゴブリンの足音が一斉に近づいてくる。
初音は自分も締め出されている事に気づき1人で絶句するも、モンスター達を見ると詳細なデータが見れた。
なにこれ!? もしかして私の解析眼ってアレも対象なの!?
面白い! ならサポートくらいは出来るかな……?
そう驚いている間に零は言う。
「よし、ここからが本番だ」
もうゴブリンの表情が読み取れる距離にまで迫る。
零は木刀を握り直す、凛は静かに拳を構えた。
17体のゴブリンが一斉に駆け出す。
「来るぞッ! 気張れ!!」
「えぇ」
「ひょえぇ〜〜!!」




