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オーバーフロー 〜レベル0と表示された俺は、実はカンスト超えレベル65536だった〜  作者: 月影光貴


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第11話 ダンジョンの中ボス

試練。

 ガリッガリガリっと音を立ててそれは(うごめ)き出てくる。


 それは髑髏(どくろ)の頭をした巨大蜘蛛だった。それも眼球の穴から触手の様な赤い目が何本も生えている。


「ぎょえー! マジキモッ、パイセンたちごめんっ」


「宝箱を開きたくなるのはわかるから気にするな!」


 すごい悍ましさだ、なんか臭うしまるで妖怪だな。

 大体、体長は3メートルか?


 そう考えているとスマホが鳴りホログラムが出た。


——

【WARNING】


種族:スカルスパイダー

推奨レベル:55

推奨人数3〜5人

危険度:微高

——


「55……15私が上ね」


 さてゲームならまだ安心しきれないレベル差ね。

 もっとも、私は小さい頃ポコモンくらいしかやってないけど。


 そう考えていると初音がまた叫ぶ。


「動き始めたッ! 凛回避!」


「っ!」


 凛はモンスターの刺突攻撃をバク転で避けた。


「呑気に考えていたわ、ありがとう」


「逃げ道もねぇしよぉ、倒すしかないなっ!」


 虫は好きだが、こいつは……なんか違うな……

 それにレベル0だが人を守り、もっと強いやつは学校で倒してんだ、萎えるな俺!


 前衛の2人は両サイド囲む様に移動し、注意を分散する作戦を取る。


 だが、奴は本能的に初音が1番弱い事に勘づき、2人を無視して砲弾の如く飛び掛かった。


「初音ッ」


「初音ェ!」


「きゃー!! 魔弾魔弾魔弾魔弾!!!!!」


 死ぬ死ぬ死ぬっ! 怖い怖い怖いっ!!

 でも彼氏もいないのに死んでまるか〜!!!!


 指を銃のポーズにして両手から魔弾を連射、すると何故か身体を壁にぶつけてでも回避した魔物。


「……?」


 こいつ、もしかして魔弾が弱点?

 ならアナライズして判明させてやる。


解析眼(アナライズアイ)!……!? こいつ頭部の髑髏が魔力攻撃に弱いよ! それに関節は物理攻撃が弱い!」


「焦ったが結果オーライだな、ナイスだ!」


 そう零が言うと踏み込み切りかかった。だが魔物はカウンターで糸を射出する。

 それに零は横に転がり回避、壁が激しく砕け威力を思い知った。


「ヒョ……危な」


 そうしているうちに凛は力を貯めて、魔物に急接近し関節に正拳突きを放つ。


「私の方を怠るなんて馬鹿ね、ハッ!!」


 バキャッという音共に姿勢を崩す魔物。その瞬間を待っていた初音は魔弾をチャージしていた。


「もらったよっ!」


 放つ、眉間に当たるとヒビが入り激しく暴れ始めた。その余波で凛は吹き飛ばされ壁に激突し頭から流血、零も刀で受け止めたが砕けて転がり床と壁に叩きつけられ軽い脳震盪を起こす。


「そ、そんな私が中途半端に攻撃したから……ヒッ!!?」


 失敗だ、一撃で仕留められなければ怒りを助長するだけだった。

 私は良い、せめて2人は……


 恨めしそうにゆっくりと初音の目の前に魔物が迫った。初音は恐怖に腰を抜かし、残り2人もよろめきながら立ち始めたところだ。


「クソっ、初音ー!」


 刀を思い切り振りかぶって投げると蜘蛛の腹部に刺さるも初音に集中していた。憎いのだ、自分の頭に致命傷になり得る傷を与えた少女が。


「2人は逃げ——」


 血生臭い……ああ、死ぬんだ。

 私が宝箱を開けたから2人にも迷惑を……


 ヌチャァと開いた髑髏の隙間に吸い込まれる様に丸呑みで捕食された初音。

 悲鳴もあげず、2人に罪悪感を与えない様に静かに食われたのだ。


「嘘だ」


 この俺が居て食われた……?

 やはり所詮はレベル0なのか、俺には守る力すら無いのか……

 刀を再生成し、地面に突き立てて立ち上がろうとする姿勢で絶句する零。


「初音ぇええええ!!!!!」


 吐き気を覚えた。

 喉が渇き、視界が歪む。


 普段は物静かにクールな凛は絶叫し狂乱、初音との短いが大切だった思い出がフラッシュバック。


『じゃあ女子会にしましょ〜!!』

『暁先輩って普通に笑うですね!』

『そうだ! なんとこの方々がホブゴブリンを倒したのだ〜!!!』


 自分の血に濡れた彼女は、怒りに目を見開き獣の様に叫ぶ。


「返しなさいよッ、私の大切な後輩を!!」


 目はギラつき血走っていた。

 

 私ってこんなに他人を大切に思えたんだ。

 絶対に殺してやるッ。


 その瞬間走り出す。


「戦闘演算オーバーロード! 制限時間17.6秒っ! 私自身の本気の力をお見舞いするッ」


 もう私の身体はどうなってもいい、17.6秒を超えた先に代償があっても関係ない。ここで即座に仕留めるッ!

 

 凛の姿がその瞬間掻き消える。

 その次に気づいた時には拳は腹部を裂く程の打撃を与えていた。それに脚を砕く高速ラッシュ。


「ぐぼぉあ!!」


 苦しむ魔物に追撃に足を持ち上げると引きちぎって、奴自身の爪を突き立てて腹を刺す。それでも魔物は反撃をして凛の腹部に爪を立てた。


「ぐっ! でもあの子はもっと怖い思いしたのよ!」


 腹部から血が噴き出す。それでも凛は一歩も退かなかった。そして零が投げて刺した刀を掴むと横にスライドして身体を切り開いた。


「り、凛……」


 蚊帳の外の零。こんなに怒り悲しんだ彼女を見たことが当然無く呆気に取られた。


「死に晒せよ、この害虫がァァ!!!!」


 普段なら言わない暴言を吐き、目を濡らしながらも髑髏のヒビに向けて鉄拳を向けた。

 見事砕き切るとそれは動かなくなった。

 

 スマホが何度も震え鳴る。

【LEVEL UP】

ERROR

ERROR

誰も画面を見る者はいない。


「はぁはぁ……零っ、早く切り裂きなさいよッ。まだ間に合う!」


 傷口を押さえながら必死に零の方を向き言う。


「あ、ああ!」


 切り開くと粘液塗れで動かない初音を引っ張り出す。


 ベチャッと音を立てて地面に落ちる。動かない。


「心音は……ある! 起きなさい! お願いだから早く……」


 初音の肩を揺らし必死に言葉をかけた。

 目がカッといきなり開いた。


「げほっ……げほっ……ここ……どこ? あの世? ……あれ、凛?」


 幸いな事に息を吹き返した初音、大きな怪我も見られない。体液塗れの彼女を抱きしめる凛。


「良かった……歳上なのにごめんね」


 震えが止まらない、大切なモノを失うところだった……

 

 心の底から安堵し胸を撫で下ろすと、共に力んだ力が抜けてしまう凛と零。


「俺というものがすまない……」


 守れなかった……凛がいなければ完全に終わっていた。俺の存在意義が……


「いや、私が調子乗った結果だから気にしないで! それより道空いているよ! さっさと最深部まで行って終わらせよ!」


 初音の心臓が早鐘を打つ。やっぱり怖いものは怖かったのだ。

 それでも2人を気遣い立ち上がると出口の方に空元気で進んでいく。


「早く行こう!」


 パタパタと走っていく。


「優しい奴だな」


「そうね、守らないとね」


 2人もやっと落ち着き後を追ったのであった。

ここで殺すか欠損させるかか迷いました。早すぎるのでやめました。

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