第8話:後輩の入部
翌日の放課後に調理室に行ってみると、すでに女の人がいた。三年生の佐藤栞奈先輩だ。髪は長めでスラッとした体型をしている。家庭的な雰囲気を持っていて、後輩の面倒をよく見てくれる先輩の鏡ともいえる女性だ。俺も一年生のときには、いろいろと料理を教えてもらっている。
「こんにちは佐藤先輩。もう調理室に来ているなんて早いですね。」
「一学期の最初の一週間ぐらいは、入部希望者が来るかもしれないから。」
「そういえば、昨日も一人見学に来ていましたよ」
「初日から来ていたの?昨日はちょっと用事があったんだよね。どう?入部してくれそうかな?」
「どうでしょう?一通り説明はしておきましたけど」
「入部してくれるといいんだけどなぁ」
調理部には10名ほどが在籍しているが、そこまで人数が多いというわけではないので、やはり新入生が入ってくれるかどうかは、かなり重要だった。
「ところで最上君、なんか一年生のときと雰囲気がかなり変わっているような気がするんだけど...」
「そうですか?春休みに特訓をしたので、それが理由かもしれませんね」
「でも春休みに特訓したぐらいで、そこまで変わるものなの?」
ガラッ
先輩が疑問を抱いているところで調理室の扉が開いて、女の子が一人入ってきた。
「すいません、一年生の佐伯陽菜です。料理部に入部したいのですが、よろしいでしょうか?」
昨日の女の子だ。早速、入部する気になったらしい。昨日は俺が説明していたので、これで嫌になっていたらどうしようと思っていたので、ホッとする。佐伯さんへの説明は、佐藤先輩がやってくれているので、俺はいつもどおりに夕食を作ることにした。
「最上先輩、今日は何を作っているんですか?」
佐藤先輩が説明していたはずなのだが、佐伯さんが話しかけてきた。
「今日は春らしくイカとアスパラガスの炒め物だね」
「丸ごとのイカを使うんですね」
「炒めるのは簡単だから、この料理のメインはイカを捌くところぐらいかな?」
「へー。どうやってやるのか教えてください」
「いいけど、佐藤先輩の説明は終わったの?」
「はい。自由に料理していいということだったので、最上先輩の料理を見学に来ました」
料理の腕なら佐藤先輩の方がずっと上手なので、その方が参考になるとは思ったのだが、そういう言い方をするのも失礼かなと思い、佐伯さんの相手をすることにした。
「男料理でそんなに上手じゃないけど、やり方を教えるね」
こうしてなぜかイカの捌き方を後輩に教えるのであった。
第8話までお読みいただきありがとうございます。よろしければ評価、感想などを頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。




