第53話:向き合う2
三学期からは料理部に復活することにした。
「夏樹先輩、しばらく料理部に来ていませんでしたが、どうしたんですか?」
「宮沢さんの勉強のサポートをしていたんだよ」
「そういえば、二学期の期末テストで二年生では宮沢さんが1位になったと噂で聞きましたけど」
「1位を目指して勉強会をやっていたんだ」
「もういいんですか?」
「あぁ、もう後は宮沢さん自身でやっていけるだろうから」
「そうなんですね。これからはまた一緒に料理ができますね!」
佐伯さんは嬉しそうにしている。こんな笑顔を見ると、守ってあげたいと思ってしまうが、それは自分にはできないと思い直す。
「佐伯さんも4月からは後輩ができるわけだし、先輩として教えられるようにならないとね」
「私はずっと夏樹先輩と一緒に料理がしたいんですけど」
「一年生のときにはそれでも良かったけど、いつまでも同じというわけにはいかないから」
「でも」
「料理部で一年間やってきたんだから、もう後輩に教えることができるはずだよ。先輩としての佐伯さんを見せてほしいな」
しばらく悩んでいた佐伯さんだったが、最終的には納得してくれた。
「わかりました」
「これからは佐伯さんにレシピを決めてもらうことにしよう。料理も佐伯メインでやってもらって、俺は佐伯さんの指示で手伝うようにするからね」
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これまでは俺が夕食を作るのを、佐伯さんが手伝うという形で部活動をしていたが、三学期からは佐伯さんにレシピを決めてもらい、料理も佐伯さんがやるのを俺が手伝うようにした。
「先輩、今日のレシピはこれでいいですか?」
「佐伯さんの作りたいもので大丈夫だよ」
「自分で決めるというのに慣れていなくて」
「別に正解があるわけじゃないから、そこまで気にしなくても大丈夫。あと、何を手伝ったらいいかな?」
「そうですね。それでは、野菜を切ってもらえますか?」
「了解」
佐伯さんは自分で決めることについては苦手のようだったが、料理をメインでやってもらうようにしながら、徐々に慣れてもらった。
□▲□
三学期も後半になるころには、佐伯さんもすっかり自分で料理ができるようになっていた。
「このぐらいできるようになれば、4月からは後輩を教えてあげられそうかな?」
しかし佐伯さんは嬉しそうにはしていなかった。
「夏樹先輩は、もう一緒に料理してくれないんですか?」
これまで見たこともないような、とても悲しそうな顔をしている。こんな可愛い子に、こんな表情をさせてしまうなんて。でもここではっきりさせないと、さらに悲しい思いをさせてしまうはず。
「これからは佐伯さんは先輩として、新しく入る後輩と一緒に料理をしないとね」
「そうですか」
「一年生には、立派な先輩として教えてあげてね」
佐伯さんは少し考え込んだあと、俺の方を見て聞いてきた。
「何が足りなかったんでしょう?」
佐伯さんに足りないものなんてはなかった。話好きで可愛い後輩。買い物に付き合ったときも、プールに一緒に行ったときも常に笑顔で話が絶えなかった。でも、もう以前のようにいっぱい話をすることはできないのだ。
「佐伯さんに足りないものなんてないよ。佐伯さんは最高にかわいい後輩だよ。」
「いつもどおりの先輩の褒め方ですね。」
「これしか言えないんだよ。でも本当にそう思っているから。ただ俺には苦しくなったときに思い浮かべる女の子が別にいるんだ」
「私は先輩が苦しいときに頼られる人にはなれなかったんですね」
「でも、いろいろと話ができて楽しかったから」
「そうですか。でもわかりました。4月からは夏樹先輩に代わって、後輩の面倒を見ます」
「うん、よろしく頼むよ」
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