第50話:交流学生2
翌朝、美桜と一緒に登校していると、途中で人を待っているらしい女の子がいることに気づいた。なんとなく悪い予感がするのだが。
「最上、おはよ。一緒に登校しようよ」
伊原さんだった。頼むから美桜と揉めないでくれ!
「ごめんなさい、夏樹は私たちと登校しているんです」
「じゃあ、皆で登校すればいいよね」
美桜が反論したのだが、伊原さんはそのまま俺の横に歩いてきて、一緒に登校しだした。
「ちょっと、夏樹。誰なの?」
「今週からきた交流学生の伊原さんだよ。夏のバイトで一緒だったんだ」
「なんで、その子が夏樹を待っているのよ」
いや、それは俺も分からないんですが。
「私が待っていた理由?それは夏樹と一緒に登校したいからに決まっているじゃない」
「その理由を知りたいのよ」
「そんなの決まっているじゃない、ねぇ夏樹」
伊原さんが答えだしたのだが、どうみても挑発しているようにしか見えない。しかも、いきなり下の名前で呼ぶようになっているし。
「ごめん美桜さん。今朝は別に登校させてくれ」
「ちょっと、夏樹!」
俺は伊原さんの手を引いて、先に行くことにした。
□▲□
「もう強引だなぁ。夏樹は」
「何か考えがあってのことのようだけど、どうしたの?」
「なんだー。気づいちゃったか。最初はちょっとイタズラしただけなんだけど、森岡さんや向井さんから話を聞いたんだよね」
「話を?」
「夏樹は複数の女の子を弄んでいるって聞いたから」
「いや、弄んでいるわけでは...」
「でも、はっきりとした態度を取っていないんでしょ」
「はい。おっしゃるとおりです」
「まだ好きって言われていないからわからないとか思っていない?」
「はい。ちょっと仲がいいだけという可能性も」
「そんなわけないでしょ。ここまできて逃げていちゃダメだよ。ちゃんと彼女達の気持ちに向き合わないと。」
「はい。おっしゃるとおりです」
しかしモブな俺に、あんな可愛い女の子達が好意を持ってくれるものなんだろうか?
「ひょっとして自分はモブだから、彼女たちが好きになってくれるわけがないと思っていない?」
「よくわかるね?」
「森岡さん達が言っていたよ。夏樹は自分をモブと信じ込んでいるって。でも夏樹は私に言ったよね」
「えーと」
「どうなるかはわからないって。信じてその道に進んだ人だけが可能性を残しているって」
「確かに言ったね」
「夏樹がモブかどうかは置いておいて、信じて好きな気持ちを進めることが大事なんじゃないの?」
「はい」
反論が全くできない。
「誰も傷つけたくないとか思っていない?」
「それは...」
「こうなった以上、もう無理ね。夏樹が選べるのは一人だけ。その他の女の子は傷つくしかないの」
「はい...」
「夏樹ができることはちゃんと気持ちに向き合うことだけ。結果として傷つくとしても、向き合った結果じゃなければ納得できないわ」
「はい」
「でも、安心したよ。夏樹もダメなところがあったんだな」
「ダメなのに安心?」
「私がファッションデザイナーの件で相談したときには、すでにそういう壁を乗り越えてきたかのような凄い人に見えたから、そんな凄い人じゃなきゃ壁は越えられないのかなと思っていたんだ。でも、実際には恋愛にはダメダメな普通の高校生だったんだな。なんとなく私にも壁が越えられそうに思えてきたよ」
「なんか複雑な心境なんだけど、でもありがとう。伊原さんのおかげで覚悟を決めて前へ進めそうだよ」
「どういたしまして!」
その後、伊原さんが俺に絡んでくることはなくなり、交流学生としての期間も終わった。
第50話までお読みいただきありがとうございます。よろしければ評価、感想などを頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。




