第5話:クラスメイト
高校は丘の上にあって少し坂を登る必要がある。この上り坂の両側には桜が咲いていて、この時期はとてもキレイなのだ。そういえば前回のときは、いつかは彼女とこの坂を一緒に歩きたいと思っていたのに、結局実現できなかったことを思い出す。
坂を上がったところに校舎があるが入口は左側にある。二年生になってクラス替えがあるため、まずはクラス分けの掲示板を確認する。といってもどのクラスになるのかは前回で知っているので、念のため確認しただけだ。結局のところは前回と同じクラスでどうやら同じ世界にちゃんと戻れているようだ。下駄箱で上履きに履き替えて、なつかしい校舎の廊下を歩きクラスに移動する。クラスに入って席指定を確認してみたが、指定された席も前回と一緒だった。
「よう、俺は村瀬。よろしくな」
席につくと、前の席に座っていた奴が振り返って挨拶してきた。前の席に座っているのは、前回と同じで村瀬律という名前の男で、背は平均的な高さだが体格はかなりいい。お世辞にもイケメンとは言えないが、そこまで顔は悪くはない。
「俺は最上。よろしく」
「お前、体格がすごくいいみたいだが、どの部に入っているんだ?」
「料理部だな」
「まじか?どの運動部でもやっていけそうなんだが?」
「趣味と実益を兼ねてかな?そういう村瀬はどの部なんだ?」
「テニス部だよ」
「確か一年生の間は球拾いばかりなんだっけ?」
「ああ、一年生だとなかなかコートに入れないな。でも二年生からはフルでコートが使えるんだ。やっとだよ」
村瀬はしばらく俺と雑談をした後は、隣の席のクラスメイトと雑談しだした。クラスを見渡してみると、二年生でクラス替えがあったことから、みんな新しいクラスメイトに積極的に話しかけているみたいだ。前回の俺はモブだったこともあって、あまり自分から皆に話しかけるようなことはしていなかったが、今回も席の周囲のクラスメイトに話しかけるぐらいにしておくことにした。異世界に行っても陽キャにはなるわけではないからな。モブはモブのままなのだ。
そういえば俺は異世界でもモブだったことを思い出した。討伐パーティでは交渉人という職業ということもあって、華々しい戦果などはなく目立つ存在ではなかったのだ。
「おはよう、森岡さん」
「おはよう、えーと名前を教えてもらえる?」
「最上ね。よろしく」
隣の席に女の子が座ったので挨拶しておく。隣の席は森岡沙蘭という名前で、背が低めでおとなしい雰囲気の女の子だ。髪は長めでメガネをかけている。
「森岡さんは部活はどこなの?」
「英会話部よ」
「へー。英語が喋れるなんて凄いね」
「いやいや、英会話部だからといって喋れるわけじゃないから」
異世界から戻るときにスキルがすべて失われてしまったが、異世界転移の定番である言語理解スキルだけは残しておいてほしかった。あれがあったら英語については満点連発だったのに。
「最上君は何部なの?」
「料理部だよ」
「そうなの?なんか、運動得意そうに見えるけど」
「趣味と実益を兼ねてといったところかな」
ここまで話をしたところでホームルームが始まった。
□▲□
一日の授業も終わり、放課後になった。
「やっと授業が終わったー」
「村瀬は初日から部活か?」
「あぁ、やっとコートが使えるからな。一日も無駄にはできないぜ。」
「そうか、がんばれよ」
村瀬はしばらくクラスメイト達と雑談をした後に教室から出ていった。他のクラスメイトも初日ということもあってか交流を深めようといろいろと話をしているようだ。俺はというと調理室に向かっていた。料理部は決まった活動日がなく放課後に自由に調理室を使って良いことになっていた。部員のほとんどは気が向いたら放課後に調理室にきて、ちょっと料理をして帰るという感じだった。
俺が料理部に入ったのは元々運動が得意ではなかったことと、親が忙しく夕食を自分で作る必要があり、家で作るよりは学校の部活動で作ったほうがいろいろと教えてもらえて良いのでは?と考えたからだった。二年生から部活を変えることもできたのだが、ここまで続けてきて料理が面白くなってきたということもあり、そのまま続けることにしたのだった。
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