第48話:シーソー
中間テストが終わった週末に、宮沢さんに料理を食べてもらうために家に招くことになった。今日はその宮沢さんが来てくれる日だ。美桜には、夕食と勉強会はスキップという連絡はしてある。
「夏樹君、おじゃまします」
「どうぞ上がってください、宮沢さん」
あまり遅い時間になっても良くないので、夕方ぐらいに家に来てもらって料理を食べてもらうことにした。
「あれ?ご両親は?」
「出張中で今日はいないんだよね。あっ、二人きりだからといって変なことはしないから」
「ふふ、変なことって何かな?」
やばい。両親がいないから不安に思うかも?と思って言ったのに、まさかそんな返し方をするなんて。
「いや、なんでもない。リビングに案内するよ。どこでもいいから座ってね。とりあえず飲み物は麦茶でいいかな?」
「うん」
宮沢さんが俺の家に来て椅子に座っている。なんでこんな可愛い子が俺の家に?ひょっとして俺のことを?という期待をしそうになるが、いやこんな可愛い子が俺なんかをという心の声がその気持ちを打ち消す。とにかく今は余計なことは考えないようにして、料理を食べてもらうことに集中しよう。
一から料理を作ろうとすると凄く時間がかかって待たせてしまうので、料理についてはあらかじめほとんど作っておいてある。あとは少し温めてテーブルに出すだけだ。
「メニューは何にしたの?」
「ロールキャベツとカボチャのスープだよ」
ハンバーグあたりが定番だとは思うのだが、それだとありきたりすぎるので今回はロールキャベツにしておいた。トマトソースを市販のものではなくて、実際のトマトを煮込んで作ってあるのがポイントだ。
「それではいただきます」
「味はどうかな?」
「うん。美味しい。キャベツがトロトロになっていて、トマトソースも凄い濃厚だね」
「そういってもらえると嬉しいよ」
ピンポン!
俺も食べようとしたところで家のチャイムが鳴った。誰だろう?宅配?親の出張が中止になったのかな?玄関に行ってドアを開けると、そこには美桜がいた。
「今日、夕食がスキップになったと思うんだけど、家にはいるみたいだからどうしたのかなと思って。なんか美味しそうな匂いがするね。おじゃまするわよ」
まさか美桜がくるとは思っていなかった俺はドアを開けた状態で固まってしまった。その隙に美桜は玄関の中に入ってそのまま家の中に上がってしまった。
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「それでなんで宮沢さんがここに居るのかしら?」
「それを言ったら、井上さんがここに居るのもおかしいでしょ?」
「私は隣に住んでいる幼馴染だから」
「それなら私も夏樹君とは同じクラスメイトですから」
さすがの俺でもこの状態を修羅場と呼ぶのは知っている。ただどうやったらこの場を収められるのかは知らない。異世界では討伐パーティのメンバーだったが、俺はモブ的な存在で複数の女性から言い寄られるようなことはなかった。リーダーの王子はそういうこともあったが、一夫多妻の世界だったので揉めることはなかったのだ。
「せっかく作ったんだし、美桜さんも食べていってよ」
とにかく空腹だとイライラしやすくなると聞いたことがある。食べてもらえば、少しは落ち着くかも?と思い美桜にも食べてもらうことにした。ただ、今度は宮沢さんからの視線が痛い。
「宮沢さん、このロールキャベツのソースはね。トマトを煮込んで作ったんだよ」
宮沢さんに手間をかけて作ったことをアピールしてみる。
「だからこんなに美味しいんだね!」
宮沢さんの機嫌が治った!と思ったのだが、今度は美桜の機嫌が良くない。
「美桜さん、味はどう?カボチャスープも素材から作ってみたよ」
「そうなんだ。スープも濃厚で美味しいね」
まるでシーソーのように機嫌が切り替わる。一方に話しかけるともう一方の機嫌がとたんに悪くなってしまう。なんで平行に釣り合ってくれないんだ!と心のなかで叫びながらも、とにかく俺には交互に話しかけることしかできなかった。
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