第46話:カラオケ
クラスメイトとの週末は、午後からでは遊園地などに行くには遅いだろうということで、事前にカラオケに行くことに決めてあった。せっかくなので皆で一緒に歌おうということでステージ付きの一部屋を使うことになった。10人だとガチで歌うには順番があまり回ってこないが、歌があまり得意でない自分には丁度いい。異世界に行っても歌は全くうまくならないからね。
「宮沢さんは、普段はどんな曲を歌っているの?」
「特にこれというのはなくていろいろと歌っているよ」
宮沢さんの隣には水野さんと池上が座っている。池上はこのカラオケにかなり気合を入れているようで、積極的に宮沢さんに話しかけていた。水野さんが宮沢さんの隣に座っているところを見ると、座る席については水野さんが池上に協力しているのかもしれない。ちなみにドン引きされた俺は一番隅の席に座っていた。
「最上君、さっきから歌ってないんじゃない?」
俺の隣に座っていた森岡さんから指摘が入った。あまり得意ではないので、皆が歌っているところに合いの手をいれて誤魔化していたのだが、さすがにバレたようだ。
「それじゃぁ、一曲入れてみようかな」
それにしても、皆歌がうまいな。特に池上はかなり歌がうまい。イケメンでこんなに歌がうまかったら、カラオケでみんな惚れてしまうのではないだろうか?さすが主人公キャラだ。しばらくして自分が入れた曲が流れてきたので、ステージまで行って歌うことにする。それにしても何も考えずにステージ付きの部屋に合意してしまったが、ステージで歌うってメッチャはずかしくないか?これ?
ただクラスメイトを見てみると、ステージを見ているのは宮沢さんぐらいで、次の曲を選んだり隣と話をしていたりで、さほど注目は浴びていないようだ。ほどなく、俺の曲は終わってステージから戻ることができた。
席に戻ると、次は森岡さんの曲だったようで、森岡さんは立ち上がってステージに向かって歩いていった。
「夏樹君、さっき歌ったのは誰の曲なの?」
森岡さんが歌いにいって空いた隣の席に宮沢さんが移動してきて話しかけてきた。
「あぁ、ボカロね。とても速い曲を作るのが得意な人がいるんだよ」
とにかく速く歌えば誤魔化せるので、この曲にしてみた。といってもあまりにも速くてまともに歌えないのだが、音程がずれるよりはましなはず。
「普段もボカロを聞いているの?」
「そうね、宮沢さんは?」
「私はいろいろかな?風船とか夜あそびとか」
「あー。元々はボカロ出身だったような気がする」
「そうなの?」
「後でボカロ時代の曲を教えるよ」
「ありがとう。そうだ、デュエット歌おうよ!」
えっ、それはまたハードルが高すぎやしませんかね。
「いやー。俺は歌は下手だから」
「大丈夫。定番の曲にしたから」
というか、もう予約したのか!仕方がないので覚悟を決めてステージに一緒に行って歌うことにする。定番のデュエット曲だったのでなんとか歌えたが、宮沢さんが近い!ほとんどくっつくぐらいのところに立って歌っている。池上の方を見ると、すごいこちらを睨んでいる。集中しないと歌えないのに、宮沢さんが近くにいて全然集中できない。それでいて池上には睨まれてと、凄く疲れるカラオケとなってしまうのであった。
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カラオケが終わって外に出てみると、女の子が一人待っていた。
「あっ、夏樹!」
「あれ?美桜じゃないか。どうしたの?」
「一緒に帰ろ!」
カラオケに決まったときに場所と時間は伝えてあったけど、まさか待っているとは思っていなかった。
「夏樹君、二次会に行こうよ」
「夏樹、晩御飯できているよ。早く帰ろう」
宮沢さんと美桜が睨み合っている。えっ?なんでこんなことに。
「おい最上、どうするんだよ」
「ちょっと、村瀬。そんなこと言われても」
村瀬から責められてしまうが、どうなっているのかさっぱり分からない。この間のランチのときにも2人はすごい対抗心を燃やしていたが、今回もどっちも一歩も引かない雰囲気を感じる。
「はっきりしない最上君が悪いんじゃないの」
水野さんからも責められるが、はっきりしないと言われても、幼馴染とは元通りに仲良くなれれば、それで十分だと思っていたし、宮沢さんは学年でもトップクラスの人気の女の子で、クラスで少し話せればそれで十分だと思っていたのだ。それ以上にはっきりさせることなんてあるのだろうか?
しかしここで俺が二次会に行ってしまうと、美桜が一人になってしまう。さすがに幼馴染をそんな目には合わせられなかった。
「それじゃ皆、俺はここまでで帰るから。ほら美桜さん、帰るよ」
「うん。早く帰ろ」
結局、美桜とともに帰ることにしたが、来週の月曜日に宮沢さんにどうやって説明すればいいのか途方にくれる俺であった。
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