第39話:後輩の次の手
二学期になってからも朝の通学については、電車に乗って改札をでるところまでは美桜と一緒で、改札をでたところで美桜の友達の伊藤さんが合流してくるので、そこで俺は先に行って別々に登校するようにしていた。
「美桜、おはよう」
「藍花、おはよう」
「それじゃ、井上さん先に行くね」
通学路の先に女の子が誰かを待っているのが見えた。
「最上先輩、おはようございます」
「おはよう、佐伯さん。誰かを待っているの?」
「はい、先輩を待っていました。一緒に学校に行きましょう」
「どうしたの?朝から何か用事が?」
「はい。先輩と一緒に学校に行くという大切な用事があるんです」
よくわからなかったが、一緒に学校に行くということなので、一緒に歩こうとしたのだが、裾を引っ張って止める人がいた。
「ねぇ、夏樹。その女の子は誰?」
「井上さん、なんで引っ張っているの?」
「いいから教えて」
「料理部の後輩だよ。なぜかわからないけど待っていてくれたみたいで」
「ふーん」
美桜の表情がとても冷たい。前にもこんなことがあったような。
「先輩、早く行きましょう。というかそちらの女の人はどなたでしょうか?」
「夏樹の幼馴染の井上よ。ごめんなさいね、夏樹は私たちと一緒に学校に行っているから」
「えっ、いつもここからは別...」
とまで言ったところで、脇腹をつねられる。
「そうですか。私が見た限りでは先輩は別に登校していたと思いますが」
「それは見間違いよ。いつも一緒に学校に行っているわよね、夏樹」
朝のさわやかな雰囲気が一転して、凍りつくような感じに変わってしまった。おかしいな二人とも初対面のはずなのだが、いきなり喧嘩腰になっている。なぜこのようになっているのかは分からないが、このままにしておくのは非常にまずいと思った俺はとにかく2人を遠ざけることにした。
「井上さん、後輩がなにか用事があるみたいだから、今日のところは別でお願い。後で埋め合わせするから。佐伯さん行くよ!」
「ちょっと、夏樹!」
とりあえず佐伯さんの手を取って先を急ぐことにした。
「それで佐伯さん、何か用事というのは?」
「言ったじゃないですか、一緒に学校に行くって」
よくわからなかったが、とりあえず一緒に学校に行けばいいのか。とりあえず2人を遠ざけることができたから大丈夫かなと思っていると。
「ところで先輩、あの女の人は先輩を下の名前で呼んでいましたけど、なぜなんですか?」
「いや特に理由は。幼馴染で小学校ぐらいのときには下の名前で呼び合っていたんだよ」
「なるほど。それでは、これからは私も夏樹先輩と呼びますね」
「えっ?」
「今日のレシピは何かなー」
佐伯さんみたいに可愛い子から下の名前で呼ばれたら、それはそれでいろいろと憶測を呼ぶのでは?と思ったが、すでに違う話題に変わっていたため、言い出せないまま学校に行くのであった。埋め合わせをどうしようと思いながら。
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